研究課題
挑戦的研究(萌芽)
植物においてもAHXの生成にはアルギニン依存性NOS様酵素が関与しているという仮説を立て、これを実証する。そのために、新規キノコNOS様酵素の発見につながったAHXをCitより高感度なNO検出ツールとして利用し、分子遺伝学的な解析が可能なシロイヌナズナを研究材料として、NOS様酵素の発見を目指す。これにより、世界で初めて植物でのNOの生成機構と生理機能の全容解明を目指す
生物中で唯一高等植物では一酸化窒素合成酵素(NOS)の存在が明らかとなっていない。 植物における細胞内・細胞間情報伝達系因子であるNOは極めて重要なシグナル分子であり、形態形成、成熟過程、気孔の閉鎖、休眠の抑制や傷害などのストレスに対する応答といった様々な生理現象に深く関わっているが、NO生成機構を含めて、NOに関する詳細な分子機構は不明な点が多い。未解明の部分が多い植物のNO生成やその生理機構について、AHXとの関連性というAHXの発見者である独自の視点から、本研究を展開したいと考えている。フェアリーリング形成に関わるフェアリー化合物(FCs)の生合成にコムラサキシメジの一酸化窒素合成酵素(NOS)が関与しているため、コムラサキシメジとシバの相互作用における窒素代謝に関わる遺伝子の発現解析を行った。コムラサキシメジとシバ(ベントグラス)との共存培養において、シバで発現が変動する遺伝子をRNA-seqによって解析し、窒素代謝に関わる発現変動遺伝子を検出した。その結果、コムラサキシメジと共存することにより、Nitrate reductase 1およびNitrate reductase 2の遺伝子発現が上昇していることが明らかになった。NOSによるNO生成にはArgとCitが関与していることから、ArgとCitをLC-MS/MSで検出条件を決定した。今後その条件で、NOS活性を測定する。
3: やや遅れている
コロナの影響による実験の制限があったためやや遅れている。令和5年度から少し遅れているタンパク質精製を中心に実験を行う予定である。
通常、AICAとAHXは低濃度でシロイヌナズナの生育に影響を示さないが、ストレス環境下では低濃度AHXのみに生育回復効果があることをNelson 博士との共同研究で明らかにした。これは、AICA非感受性変異株は、活性体であるAHXの生合成あるいはシグナル因子に欠損がある可能性を示唆している。そこで、エチルメタンスルホン酸(EMS)処理で変異を導入して得られたM2 種子の中から、根の伸長抑制活性を指標にAICA非感受性変異体を得る。コムラサキシメジとシバの共存培養条件下において、シバだけでなく、コムラサキシメジで発現変動する遺伝子も同定し、特に窒素代謝に注目してより詳細な解析を行う。特にNO産生に関わるNitrate reductaseがコムラサキシメジとシバの相互作用においてどのような機能を果たしているか解明することを目指す。
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