研究課題/領域番号 |
22K19175
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大井 崇生 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (60752219)
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研究分担者 |
上口 美弥子 (田中美弥子) 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 教授 (70377795)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
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キーワード | イネ / CTスキャン / 3D形態解析 / 開花 / 閉花 / 植物ホルモン |
研究開始時の研究の概要 |
イネ穎花の開花を司る微小な花器官である鱗被の立体像を、非破壊・迅速・簡便な三次元解析が可能なX線マイクロCT(コンピュータ断層撮影)法を用いて解析し、籾の開閉という動的な現象を捉え、その作用機序を明らかにする。電子顕微鏡観察のノウハウを応用することでX線CT装置の持つ空間分解能を最大限に高めて細胞レベルの情報も取得しながら鱗被の全容を理解する。併せて、生鮮試料をX線装置内で生け花状に保持して穎花を経時スキャンし、鱗被による開閉の動的な作用について時間軸を加えた理解にも挑む。
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研究実績の概要 |
イネ穎花の開花を司る微小な花器官である鱗被の立体像を、非破壊・迅速・簡便な三次元解析が可能なX線マイクロCT(コンピュータ断層撮影)法を用いて解析し、籾の開閉という動的な現象を捉え、その作用機序を明らかにすることを目指す。 本年度では、通常の開閉特性を示す標準品種である‘日本晴’に加え、「開かない」という形質を示す植物ホルモン関連遺伝子変異体も供試し、それらのイネから開花の前後の複数の時点で穎花を採取し、電子顕微鏡観察用の試料作製法に準じて固定・脱水・臨界点乾燥を施し、X線マイクロCTによる鱗被の高解像度3D組織解析用のスキャン撮影を実施した。これにより、鱗被の組織形状および構成する細胞のサイズなどを定量比較することが可能な3Dデータが得られ、現在解析を進めている。 また、試料に前処理を施さず、穂を生け花状に差してX線CT装置内で生きた状態のまま経時スキャンするライブイメージング観察系のための条件検討を行い、最短1分で穎花の3Dデータを得ることに成功した。この方法では分解能としては高くないため細胞レベルの観察は不可能だったが、鱗被の組織形状を捉えることは十分にできており、今後の解析のブレイクスルーとなると期待される。 その他、穎花の一部を切除し、実体顕微鏡を用いて鱗被の形状変化をリアルタイムで撮影する装置系も確立し、穎花の開閉と鱗被の膨張縮小との関連の再確認も行った。 得られたデータの一部は3Dプリンタに出力し、研究者の間でも認知度の低い鱗被について知ってもらうためのアウトリーチ素材として学会発表やオープンキャンパスの場で活用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、困難と予想されていた穎花の開閉のX線CTによるライブイメージングについて、わずか1分のスキャンで組織形状を捉える条件を確立できたことにより、経時スキャン(タイムラプス撮影)する目途が立ち、次年度以降の展開が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られてきた、電子顕微鏡観察用の試料作製法を用いた高分解能のX線CTによる3Dデータと、分解能は劣るものの組織形状の変化を分刻みのタイムラプスで追跡したデータを照らし合わせ、イネ穎花の開閉を司ると考えられている鱗被のうちどの部分が、どのタイミングで形状変化することが重要なのかを解明していく。 また、開花前・中・後でイネ鱗被を採取し、形状変化をもたらす生理機能についても言及すべく、各段階での遺伝子発現について網羅的解析(RNA-Seq)を試みる。 これらの調査は、標準品種である‘日本晴’に加え、「開かない」「閉じない」形質を示す各種植物ホルモン関連遺伝子の変異体も対象に行う。
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