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気候変動時代の病害防除を見据えた植物病原細菌研究のパラダイムシフトへの挑戦

研究課題

研究課題/領域番号 22K19178
研究種目

挑戦的研究(萌芽)

配分区分基金
審査区分 中区分39:生産環境農学およびその関連分野
研究機関京都大学

研究代表者

峯 彰  京都大学, 農学研究科, 准教授 (80793819)

研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
キーワード高湿度 / 細菌 / 病原性 / 二成分制御系
研究開始時の研究の概要

植物病原細菌の病原性発現に関する研究は、宿主の免疫系を標的とするエフェクターを中心に進められてきた。これに対して、本研究では、ある種の植物病原細菌が高湿度環境においてエフェクターに依存しない病原性を発揮するという独自の発見に立脚し、その分子機構の解明を通じて植物病原細菌研究のパラダイムシフトに挑戦するものである。その成果は、地球規模の気候変動によってもたらされうる降水量の増加を見据えた高湿度対応型細菌病防除法の開発に繋がると期待される。

研究実績の概要

本研究では、植物病原細菌Pseudomonas syringaeが高湿度環境で発揮するエフェクターに依存しない病原性発現機構の解明を目的としている。そのために、(研究項目1)植物体内増殖を病原性の指標として、その程度が高湿度環境下で変化するP. syringae変異体をスクリーニングし、(研究項目2)その原因遺伝子によって制御される生理機能を明らかにすることを目指した。研究項目1については昨年度に完了したため、本年度は研究項目2に取り組んだ。
まず、昨年度に同定した変異体のうち、代謝経路に関わる遺伝子に変異を持つものに着目して研究を進めた。核酸代謝に関わる遺伝子は感染植物および冨栄養培地における増殖に必要である一方で、アミノ酸生合成に関わる遺伝子は感染植物における増殖には極めて重要であるが、冨栄養培地における増殖には必要ではないことを明らかにした。また、昨年度に同定したレスポンスレギュレーターとそれとともに二成分制御系を構成すると考えられるセンサーキナーゼの機能解析を進めた。RNA-seq解析から、このレスポンスレギュレーターとセンサーキナーゼは同一経路で働くことが強く示唆された。また、この二成分制御系は高湿度によって転写レベルで活性化されることを見出した。さらに、感染植物における細菌のRNA-seq解析から、高湿度環境によって活性化されたこの二成分制御系はエフェクター遺伝子の発現を抑制する一方、アミノ酸の生合成や吸収に関わる遺伝子の発現を高めることを突き止めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、スクリーニングで同定した遺伝子の機能解析を進めることを目的としていた。種々の代謝経路に関与する遺伝子の解析から、アミノ酸生合成遺伝子が高湿度における植物感染に重要であることを突き止められた。さらに、スクリーニングで同定したレスポンスレギュレーターの解析を起点に、高湿度によって転写レベルで活性化され、エフェクターによる免疫抑制から栄養獲得へと遺伝子発現を切り替えることで細菌増殖を促進する二成分制御系の発見につながった。これらの研究成果は、高湿度におけるエフェクターに依存しない病原性発現機構の一端を明らかにするものであると考える。以上より、本研究は順調に進んでいると評価する。

今後の研究の推進方策

スクリーニングで同定した遺伝子の更なる機能解析を進める。特に、昨年度は手が回らなかったが、細菌増殖への寄与度が大きいことがわかっている遺伝子に焦点を当てて研究を進める。これらは機能未知遺伝子であることから、関与する生理機能を明らかにするために、RNA-seqを用いた変異体と親株の比較トランスクリプトーム解析を行う。具体的には、種々の培地における培養時や高湿度環境下での植物感染時において発現パターンに違いが見られる遺伝子群のGO解析等により、制御下にある生理機能を推定する。さらに、その推定機能に関する生理・生化学的性状解析を通じて、高湿度環境下における病原性発現の仕組みに迫る。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (15件)

すべて 2024 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] 華中農業大学(中国)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [国際共同研究] マックスプランク植物育種学研究所(ドイツ)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Sugar coordinates plant defense signaling2024

    • 著者名/発表者名
      Yamada Kohji、Mine Akira
    • 雑誌名

      Science Advances

      巻: 10 号: 4

    • DOI

      10.1126/sciadv.adk4131

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Commensal lifestyle regulated by a negative feedback loop between Arabidopsis ROS and the bacterial T2SS2024

    • 著者名/発表者名
      Entila Frederickson、Han Xiaowei、Mine Akira、Schulze-Lefert Paul、Tsuda Kenichi
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 15 号: 1

    • DOI

      10.1038/s41467-024-44724-2

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Image-Based Quantification of <i>Arabidopsis thaliana</i> Stomatal Aperture from Leaf Images2023

    • 著者名/発表者名
      Takagi Momoko、Hirata Rikako、Aihara Yusuke、Hayashi Yuki、Mizutani-Aihara Miya、Ando Eigo、Yoshimura-Kono Megumi、Tomiyama Masakazu、Kinoshita Toshinori、Mine Akira、Toda Yosuke
    • 雑誌名

      Plant and Cell Physiology

      巻: - 号: 11 ページ: 1301-1310

    • DOI

      10.1093/pcp/pcad018

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Chitin-induced systemic disease resistance in rice requires both OsCERK1 and OsCEBiP and is mediated via perturbation of cell-wall biogenesis in leaves2022

    • 著者名/発表者名
      Takagi Momoko、Hotamori Kei、Naito Keigo、Matsukawa Sumire、Egusa Mayumi、Nishizawa Yoko、Kanno Yuri、Seo Mitsunori、Ifuku Shinsuke、Mine Akira、Kaminaka Hironori
    • 雑誌名

      Frontiers in Plant Science

      巻: 13 ページ: 1064628-1064628

    • DOI

      10.3389/fpls.2022.1064628

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The rice <scp>OsERF101</scp> transcription factor regulates the <scp>NLR</scp> Xa1‐mediated immunity induced by perception of <scp>TAL</scp> effectors2022

    • 著者名/発表者名
      Yoshihisa Ayaka、Yoshimura Satomi、Shimizu Motoki、Sato Sayaka、Matsuno Shogo、Mine Akira、Yamaguchi Koji、Kawasaki Tsutomu
    • 雑誌名

      New Phytologist

      巻: 236 号: 4 ページ: 1441-1454

    • DOI

      10.1111/nph.18439

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 二成分制御系CbrABは高湿度環境下においてエフェクター分泌から栄養獲得へと遺伝子発現を転換しトマト斑葉細菌病菌の増殖を促進する2024

    • 著者名/発表者名
      石川真太郎、三瀬和之、高野義孝、峯彰
    • 学会等名
      令和6年度日本植物病理学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 高湿度による植物免疫の抑制におけるTrihelix 転写因子の役割2024

    • 著者名/発表者名
      坂田悠夏、三瀬和之、高野義孝、峯彰
    • 学会等名
      令和6年度日本植物病理学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 高湿度による植物免疫の抑制におけるTrihelix 転写因子の役割2024

    • 著者名/発表者名
      坂田悠夏、三瀬和之、高野義孝、峯彰
    • 学会等名
      第65回日本植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 糖シグナルを介した新規防御因子の同定2024

    • 著者名/発表者名
      山田(山下)美鈴、峯彰、山田晃嗣
    • 学会等名
      第65回日本植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 二成分制御系CbrABは高湿度環境下におけるトマト斑葉細菌病菌の増殖をエフェクターとは独立して促進する2023

    • 著者名/発表者名
      石川真太郎、三瀬和之、高野義孝、峯彰
    • 学会等名
      日本植物病理学会全国大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 比較ゲノミクスによるPseudomonas syringae系統間の病原性差異を生み出すエフェクターの同定2023

    • 著者名/発表者名
      田村孝太郎、竹田篤史、三瀬和之、高野義孝、峯彰
    • 学会等名
      日本植物病理学会全国大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 時系列RNA-seqデータのネットワーク解析から紐解く変動環境下の植物-病原細菌相互作用2022

    • 著者名/発表者名
      峯彰
    • 学会等名
      微生物生態学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [備考] イネが病原菌の感染力の源を検出して免疫を誘導する仕組みを解明―病気に強い植物の開発に期待―

    • URL

      https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2022-09-07-0

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2022-07-05   更新日: 2024-12-25  

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