研究課題/領域番号 |
22K19182
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
上中 弘典 鳥取大学, 農学部, 准教授 (40397849)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | キチンオリゴ糖 / 有益糸状菌 / 生育促進 / シロイヌナズナ / リシンモチーフ(LysM)型受容体 / トランスクリプトーム解析 / 病害抵抗性誘導 / キチン / 糸状菌 |
研究開始時の研究の概要 |
糸状菌の細胞壁はキチンにより構成されている。植物は細胞外に分泌したキチナーゼにより生じたキチンオリゴ糖を受容体タンパク質で認識することで、細胞外に侵入してきた糸状菌を認識している。本研究では、植物における糸状菌の識別機構の解明を最終目的に、植物による短鎖キチンオリゴ糖の認識とそれによる生育促進と有益な糸状菌の識別がどのようにして起こるのかを、モデル植物であるシロイヌナズナを用いて分子レベルで明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
植物の細胞外には病原菌だけでなく、単なる内生菌や利益をもたらす共生菌など多種多様な糸状菌が常に存在する。そのため、糸状菌の識別は植物の適切な応答を規定するために非常に重要なプロセスである。糸状菌の細胞壁はキチンにより構成されており、植物は細胞外に分泌したキチナーゼにより生じたキチンオリゴ糖(CO)をリシンモチーフ(LysM)型受容体タンパク質で認識することで、細胞外に侵入してきた糸状菌を認識できる。イネでは短鎖COと長鎖COにより有益糸状菌との共生もしくは免疫が誘導される。また我々の研究により、短鎖COの認識がイネ同様シロイヌナズナでも有益糸状菌の認識と生育促進と関連していると示唆された。本研究では、植物における糸状菌の識別機構の解明を最終目的に、短鎖COの認識とそれによる生育促進と有益な糸状菌の識別がどのようにして起こるのかを、シロイヌナズナを用いて分子レベルで明らかにすることを目的して研究を行った。 “短鎖COを認識するLysM型受容体タンパク質の同定”については、COとの結合解析に用いる8つのLysM型受容体の組換えタンパク質の発現を確認し、精製を行った。“様々な糸状菌を接種した植物の表現型解析”については、有益糸状菌処理によるシロイヌナズナの全身的な病害抵抗性の誘導を確認した。また土壌病原菌接種の代わりにおよびピペコリン酸を用いても、全身的な病害抵抗性が誘導可能であることを確認した。本実験系を用い、表現型や植物ホルモン関連の遺伝子発現については有益糸状菌処理の結果と比較を行った。“トランスクリプトーム解析”については、至適濃度を決定した短鎖CO処理および有益糸状菌を接種した野生型植物およびLysM型受容体の変異体について、RNA-seqによるトランスクリプトーム解析を行うための植物サンプルを調製した。また、前年度得られたデータについては論文を執筆し、国際誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COとLysM型受容体タンパク質との結合解析に用いる予定の実験系では、大腸菌で発現させた組換えタンパク質と非修飾のCOを用いて結合解析ができるDSF(Differential Scanning Fluorimetry)法を用いて実施する予定であったが、実験手法の確立に時間がかかった。手法の確立がほぼできたので、最終年度に予定された実験を全て完了予定である。また、追加で実施予定であったトランスクリプトーム解析については、変異体を用いた植物サンプルの調製に時間がかかったため、本年度未実施である。RNA-seq後の解析は短期間で実施可能であるため、次年度中に問題無く完了予定である。
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今後の研究の推進方策 |
様々な糸状菌を接種した植物の表現型解析については、土壌病原菌を用いると植物にダメージが生じる問題が生じた。病原菌感染による全身誘導抵抗性(SAR)の誘導因子であるピペコリン酸処理により、SARが誘導されることが確認されたため、本処理により土壌病原菌処理を代替し、比較解析を行うことができた。しかしながら最終的的に土壌植物病原菌を用いた比較を行う必要があると考えるため、病原性が弱い病原菌を用いた実験系を平行して構築中である。トランスクリプトーム解析については、先回実施した土壌処理では処理効果のばらつきが大きかったため、発現変動遺伝子の数が限られていたと考えられた。そこで、無菌培養の系を用いた実験系も用いたが、効果が安定して認められないため、再度土壌を用いた実験系で試験を継続実施し、予定の研究を次年度完了する予定である。
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