研究課題/領域番号 |
22K19184
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
辻 寛之 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 准教授 (40437512)
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研究分担者 |
児嶋 長次郎 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (50333563)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | フロリゲン活性化複合体 / 化合物 / 花成 / イネ / フロリゲン / 論理創薬 |
研究開始時の研究の概要 |
植物に普遍的な花成ホルモンであるフロリゲン(正体はFT/Hd3aタンパク質)が作用を発揮する上ではフロリゲン活性化複合体形成を介した「転写活性化能」の獲得が最も重要なステップであると考えられている。これを制御する化合物を発見できれば、従来不可能であった化合物投与による開花時期制御への道が切り開かれる。本研究ではフロリゲン活性化複合体の転写活性化能に焦点を絞り、フロリゲン活性化複合体の機能制御化合物の探索と化合物を活用したフロリゲンの機能制御技術を開拓する。
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研究実績の概要 |
フロリゲンは目的とする細胞に到達すると、受容体及び転写因子と相互作用して転写複合体「フロリゲン活性化複合体」を形成する。この複合体が下流遺伝子の転写を活性化して花成を誘導する。本研究ではこのフロリゲンの転写活性化能を標的として、化合物を活用したフロリゲンの機能制御技術を開発するための研究を行う。 これまでに、2万化合物を対象とするin vitroの大規模スクリーニングにより、フロリゲン活性化複合体の形成を阻害する化合物を複数見出した。このスクリーニングでは、in vitroで合成したフロリゲン受容体と転写因子OsFD1のC末端ペプチドを対象とした。両タンパク質に蛍光色素を付加し、これらの相互作用の強度がFRETで解析できる実験系を活用した。得られたヒット化合物の中から植物細胞に取り込まれて作用する化合物を見出すために、二次スクリーニングとして細胞内における複合体系性能の調査を行い候補化合物を得た。二次スクリーニングでは、Split luciferaseを改変した方法をイネ培養細胞で実施する実験系を用いた。フロリゲンとOsFD1の両者を含む複合体が形成された場合のみLuciferaseが構成され、その酵素活性を計測することで相互作用の強度を評価できる。得られた化合物は、植物細胞内においても複合体形成を阻害することが示された。相互作用得られた候補化合物について、実際に植物細胞においてフロリゲン活性化複合体の転写活性化が抑制されるかを調査して、これを可能にする化合物を得た。得られた化合物のうち二種類の分子においては、ウキクサやジャガイモの植物体においても機能することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで研究では、2万の化合物を対象にin vitroでの大規模スクリーニングを行い、フロリゲン活性化複合体の形成を妨げる化合物を見つけることができた。このスクリーニングでは、in vitroで合成されたフロリゲン受容体と転写因子OsFD1のC末端ペプチドを対象とした。両タンパク質に蛍光色素を結合し、それらの相互作用の程度をFRETによって分析する実験系を活用した。 スクリーニングから得られた化合物の中から、植物細胞内で作用するものを特定するために、細胞内での複合体形成阻害能力を調査する二次スクリーニングを実施し、候補化合物を抽出した。この二次スクリーニングでは、Split Luciferaseを用いた手法をイネの培養細胞で利用した。フロリゲンとOsFD1が含まれる複合体が形成されたときだけルシフェラーゼが再構成され、その酵素活性を測定することで相互作用の強度を評価した。 結果として得られた化合物は、植物細胞内でも複合体形成を阻害することが確認された。相互作用を示す化合物については、フロリゲン活性化複合体の転写活性が実際の植物細胞内で抑制されるかを調査し、それを可能にする化合物を特定した。その結果、得られた化合物の中から、ウキクサやジャガイモの植物体でも機能するものがあることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度特定した化合物は、イネの培養細胞に対して有効であったが、イネやシロイヌナズナの植物体全体には効果がなかった。この結果から、今後の研究では、植物全体に効果を示すような処理方法の改善を試みる。さらに、阻害剤がどの部位で相互作用するのかをより詳細に理解するために、生化学的および構造生物学的な研究を進める。これにより、阻害剤の効果を最大限に引き出す方法を探る。また、化合物スクリーニングの過程で見出した、フロリゲン活性化複合体の形成を強化する可能性のある化合物についても、細胞内での評価試験を実施する。これらの研究を通じて、植物の成長制御に対する新たなアプローチを開発することを試みる。
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