研究課題/領域番号 |
22K19212
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
一瀬 博文 九州大学, 農学研究院, 准教授 (00432948)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | セスキテルペン合成酵素 / 担子菌 |
研究開始時の研究の概要 |
担子菌(キノコ)に由来するセスキテルペン合成酵素をひとつの実験例として、新奇な酵素機能を生み出す技術戦略を確立し、遺伝子工学を軸とするモノ創りバイオ技術に新概念を与える。「生物は不都合な酵素活性を封印しながら進化した」という作業仮説に基づき、「封印された酵素を遺伝子工学的に逆進化させることでユニークな機能が誕生する」ことを実証する。本挑戦が結実すれば、担子菌のSTSを例として「不活化された酵素が逆進化によってスーパー酵素に変貌する」という新たな研究概念が誕生する。
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研究実績の概要 |
本研究では、「生物は不都合な酵素活性を封印しながら進化した」という独自の仮説に基づき、「封印された酵素が逆進化すればユニークな機能を発現する」ことを実証してモノ創りバイオ技術に新しいコンセプトを提案する。具体的には、木材腐朽担子菌(キノコ)に由来するセスキテルペン合成酵素(STS)をひとつの実験例として、(i) ゲノムから転写されない、(ii) 転写されても正しく翻訳されない、(iii) 翻訳されても酵素活性を示さないSTS群を遺伝子工学的に改変して酵素機能の人為的発現を目指す。 本年度は、担子菌Postia placentaおよびPhanerochaete chrysosporiumに由来する「ゲノムから転写されない休眠遺伝子」を標的とした酵素活性の復元を試みた。これまでに転写が確認されていないSTSのゲノムDNA配列を調製し、イントロン領域を人為的に除去して得たcDNAや、糸状菌Aspergillus nidulansに形質転換して得られたcDNAを用い、これらのSTSを酵母に異種発現させて酵素活性を追跡した。一連の研究から、P. chrysosporiumに由来する1種のSTSにおいてセスキテルペン骨格分子を産生させることに成功し、dauca-4(11),8-dieneの産生を可能とした。同化合物を与えるSTSは知られているものの、dauca-4(11),8-dieneおよびその誘導体の生物活性に関しては不明な点が多く、本研究で獲得した遺伝子およびその産物を利用した有用物質合成に興味がもたれる。一方、P. placenta STSの酵素活性復元には至っておらず、STS異種発現に利用する宿主微生物に変更を加えるなどの改良を施して目標達成を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、①ゲノムから転写されないSTS、②転写されても正しく翻訳されないSTS、③翻訳されても酵素活性を示さないSTSを対象に、それぞれ異なった実験手法で酵素活性の復元を目指している。初年度においては、①ゲノムから転写されないSTSを対象とした検討を進め、P. chrysosporiumに由来する1種のSTSにおいて酵素活性を得ることに成功している。一連の検討の中で、遺伝子組換え実験を迅速に行うためのプラスミドベクターを構築し、酵母Saccharomyces cerevisiaeおよび子嚢菌Aspergillus nidulansを利用した酵素発現システムに改良を施すなど、②転写されても正しく翻訳されないSTS、③翻訳されても酵素活性を示さないSTSを対象とした検討を、次年度以降に速やかに開始することができる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、「転写されても正しく翻訳されないSTS」および「翻訳されても酵素活性を示さないSTS」を対象とした酵素活性の復元を目指す。 先行研究において、P. placentaに由来する転写後に異常なスプライシングを受けて不活性化する3種のSTSを明らかにしている。当該遺伝子群は、エクソン/イントロン境界領域が変異したフレームシフト遺伝子であり、正常なSTSの配列を参考にしてフレームシフトを解消することが可能である。予測されるcDNA配列を得て、酵母や子嚢菌に形質転換して酵素活性の復元を目指す。 また、正しく転写・翻訳されるものの、セスキテルペンを合成できない5種のSTSが存在することも示している。これらは、酵素アミノ酸配列に「僅か」かつ「重大」な変異が導入されて触媒機能を失った遺伝子であると予想され、当該STSは変異箇所の僅かなアミノ酸置換によって酵素機能が復元すると予想される。当該遺伝子群と高い配列相同性を示す活性型STSとのドメインシャッフリングを施し、機能喪失に至った変異箇所を酵素ドメインレベルで決定する。 一連の検討において、新規なセスキテルペン骨格分子が産生されると予想している。得られた化合物は、詳細な構造決定を進めるとともに生物活性評価を加えて休眠するSTSの利用を促進する。
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