研究課題/領域番号 |
22K19264
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
富田 野乃 (竹内野乃) 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (80323450)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 無細胞翻訳系 / 非天然アミノ酸 / 酵母 / 試験管内転写tRNA |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、近年申請者が構築した試験管内転写tRNAを用いた再構成型酵母翻訳系を利用し、高分子タンパク質内部に複数種類の非天然アミノ酸を同時に導入できるシステムを確立する。確立したシステムは、抗体医薬におけるADC (Antibody-Drug Conjugate)の開発などへ応用でき、コンピューター・モデリングや分子進化技術など様々な技術と統合されることにより、次世代高分子医薬品の開発を飛躍的に発展させると期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究では、近年申請者が構築した試験管内転写tRNA(iVT tRNA)を用いた再構成型酵母翻訳系を利用し、高分子タンパク質内部に複数種類の非天然アミノ酸を同時に導入できるシステムを確立する。当該酵母翻訳系は、21種類のiVT tRNAによって構成されており、終止コドンの他、計34種類のセンスコドンがアミノ酸を指定しない空コドンとなる。これら空コドンに非天然アミノ酸を割り当てることにより、異なる種類の非天然アミノ酸をタンパク質の複数箇所に導入できる筈である。当該年度は、モデルタンパク質(nLuc)へ非天然アミノ酸を導入し、導入効率のコドン依存性、非天然アミノ酸の種類依存性、を評価した。 1. 導入効率のコドン依存性の解析 はじめに、UAG終止コドンと3種の空コドン(AGC、AGG、UUG)への非天然アミノ酸(D-Phe)の導入効率を解析した。D-PheはフレキシザイムによりiVT tRNACysにチャージさせた。UAG終止コドンではeRF1非存在下においてのみD-Pheを導入できた。AGG空コドンではeRF1存在下でもD-Pheを導入できた。AGCとUUG空コドンでは何らかの天然アミノ酸も誤導入されることが示された。未修飾iVT tRNAは、AGCやUUGなど特定の空コドンにおいて誤読をおこすことが明らかとなった。 2. 非天然アミノ酸の種類依存性 SPIEDACクリックケミストリーに対応する非天然アミノ酸TCO*Lysの導入効率を評価した。TCO*Lysはメタン生成古細菌由来PylRSを利用して iVT tRNAPylにチャージさせた。TCO*LysはUAG終止コドンおよび、AGGや AGC、UUG空コドンにおいてeRF1存在下で導入された。従来eRF1より強く終止コドンに結合できるtRNAは知られていなかったが、tRNAPyl が極めて強いコドン結合能を有することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
-
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今後の研究の推進方策 |
導入効率のコドン依存性について、残り全ての空コドンにおける導入効率を網羅的に解析し、非天然アミノ酸導入に適した空コドンを決定する予定である。その後、ラクダ科重鎖抗体由来の結合ドメインであるナノボディー(別名VHH, variable domain of heavy chain antibody)をベースとしたAntibody-Drug Conjugate (ADC)開発を指向し、ナノボディーの不可変領域 (FR領域)に非天然アミノ酸の導入を試みる予定である。TCO*LysやProLysなどの複数のクリックケミストリー非天然アミノ酸を導入し、さらにクリック反応により抗ガン剤など様々な化合物をナノボディーのFR領域に結合することを目指す。モデルナノボディーとして、抗ALFAペプチド・ナノボディーを利用する。HiBiTタグを付加した抗ALFAナノボディーをLgBiTおよびALFAペプチド融合Haloタンパク質存在下で合成することにより、nanoBRETシステムを応用してナノボディーの合成量およびVHHのALFAペプチドへの結合を高感度で検出できる。この検出系を利用し、導入効率の位置依存性、さらに複数箇所に導入する場合の導入位置の組み合わせの影響を解析する予定である。また、tRNAPyl の強いリボソーム結合能の分子基盤を明らかにするため、tRNAPyl ・80Sリボソーム複合体のcryoEM構造解析にも取り組む予定である。
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