研究課題/領域番号 |
22K19267
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
伊東 孝祐 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20502397)
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研究分担者 |
西川 周一 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10252222)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | タンパク質合成系 / タンパク質分解系 / ペプチジルtRNA加水分解酵素 / 酵母 / 分子遺伝学 / X線結晶構造解析 / 神経変性疾患 / 酵素活性測定 / リボソーム / プロテアソーム |
研究開始時の研究の概要 |
細胞内の異常タンパク質の蓄積は様々な疾患を引き起こす。それ故、異常タンパク質の合成と分解の機序解明は重要な研究課題であり、現在まで多くの研究成果が報告されている。だが、タンパク質の合成系と分解系の直接の協調関係についての研究報告は皆無である。その原因として、研究分野の細分化が進む昨今、タンパク質合成系と分解系の研究が別個に行われていることが挙げられる。本研究では、タンパク質合成系とタンパク質分解系の研究の専門家がタッグを組み、タンパク質の合成系と分解系の間に協調機構が存在することを初めて提唱・立証する挑戦的研究である。本研究は、神経変性疾患の治療法開発にも繋がる波及効果の高い研究である。
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研究実績の概要 |
細胞内での異常タンパク質の蓄積は、アルツハイマー病やパーキンソン病など、様々な神経変性疾患を引き起こす。よって、これら疾患の治療法確立のためにも、異常タンパク質の産生と分解の機序解明は重要な研究課題である。この機序解明の一環として、本研究ではタンパク質合成系と分解系の間に直接的協調機構が存在するのかを調査する。 本年度は、タンパク質合成系の因子であるペプチジルtRNA加水分解酵素の存在が、細胞の生育速度や細胞内不要タンパク質の処理能力に与える影響を調べるため、酵母においてペプチジルtRNA加水分解酵素の欠損株を作製した。欠損株の作製は、様々な遺伝子型の親株に対して行った。そして、生育速度を、様々なストレス条件下(温度、栄養飢餓、等)において野生株と比較した。その結果、tRNA加水分解酵素は、ストレス条件下における細胞の生育に影響を与えていることが明らかになった。さらに我々は、ペプチジルtRNA加水分解酵素の各アミノ酸残基の変異についても、細胞の生育速度や細胞内不要タンパク質の処理能力に影響を与えるのか調べるため、各種ペプチジルtRNA加水分解酵素変異体を発現する変異株を作製した。これら変異株についても、複数の遺伝子型の親株に対して行った。そして、上記同様、生育速度を、様々なストレス条件下において野生株と比較する実験を進行している。また、我々は、ペプチジルtRNA加水分解酵素の機能発現の構造基盤をX線結晶構造解析で明らかにするため、基質との複合体の結晶化に取り組んでいる。今年度は、結晶化の材料となるタンパク質を発現および精製することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンパク質合成系と分解系の直接的協調機構を調査する対象として、我々は、タンパク質合成系の因子についてはペプチジルtRNA加水分解酵素に着目している。このペプチジルtRNA加水分解酵素とタンパク質分解系との関わりを調べるため、我々は今年度、酵母において、ペプチジルtRNA加水分解酵素の欠損株を作製した。そして、ペプチジルtRNA加水分解酵素はある種のストレス条件下において、細胞の生育に影響を与えていることを明らかにすることができた。また、ペプチジルtRNA加水分解酵素の各アミノ酸残基の役割を調べるため、各種ペプチジルtRNA加水分解酵素変異体を発現する変異株も作製することができた。そして、現在は生育速度を野生株と比較する実験を行っている。さらに我々は、ペプチジルtRNA加水分解酵素の機能発現の構造基盤をX線結晶構造解析で明らかにするため、基質との複合体の結晶化に取り組んでいる。今年度は、結晶化の材料となるタンパク質を発現および精製することできた。以上の理由から、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、各種ペプチジルtRNA加水分解酵素変異体を発現する変異株について、生育速度や細胞内不要タンパク質の存在量を野生株と比較する実験を行う。この際、タンパク質分解系の因子と相互作用する部位についてのアミノ酸変異体についても実験を行う。さらに、以前より作製している活性測定系を利用して、タンパク質分解系の因子の存在により、ペプチジルtRNA加水分解酵素の活性がどのように変化するかを、in vitroおよびin vivoにおいて調べる。これらの実験により、ペプチジルtRNA加水分解酵素とタンパク質分解系の因子の相互作用の生理的意義を追究する。加えて、ペプチジルtRNA加水分解酵素の機能発現の構造基盤を明らかにするため、引き続きX線結晶構造解析を進行する。
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