研究課題/領域番号 |
22K19268
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
荒磯 裕平 金沢大学, 保健学系, 准教授 (20753726)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | タンパク質複合体 / クライオ電子顕微鏡 / 高速原子間力顕微鏡 / GFP |
研究開始時の研究の概要 |
近年の電子顕微鏡解析技術の発展やAIによる高精度の立体構造予測の台頭により、タンパク質複合体の構造情報が豊富になってきた。次に必要となる生命情報はタンパク質複合体の動きを捉えた動的構造であり、初心者でも容易に解釈可能な解析手法を開発することが求められている。本研究では、タンパク質複合体のダイナミクスを容易に解析するツールとして「GFPトラッキング法」を確立し、細胞内で働く様々なタンパク質複合体の機能研究に応用する。
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研究実績の概要 |
本年度は、クライオ電子顕微鏡解析で得られた精密構造情報に基づいて、高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)解析で得られるタンパク質複合体の動的構造情報を容易に解析できる「GFPトラッキング法」の確立に、前年度より引き続き取り組んだ。まずは、ミトコンドリア外膜に局在し、サイトゾルからの蛋白質輸送を制御するヘテロ膜タンパク質複合体TOM複合体に着目して研究を進めた。TOM複合体のクライオ電顕構造は既に決定されているが、受容体サブユニットTom20は他サブユニットとの相互作用が弱く自由度が高いため、その位置情報には不明瞭な点が多い。本年度は、Tom20サブユニットのサイトゾル側領域に緑色蛍光蛋白質mNeonGreen(mNG)タグを導入し、Tom20サブユニットがmNGで標識されたTOM複合体(mNG-TOM複合体)の精製を試みた。mNG-Tom20を含む全てのサブユニットの上流にGal1プロモーターを導入した酵母細胞株を構築し、ガラクトース添加によってmNG-TOM複合体を過剰発現することに成功した。抗Tom20抗体を用いたウエスタンブロットでは、mNG導入分だけ分子量のシフトしたバンドを確認した。本細胞株を大量培養し、単離したミトコンドリアからmNG-TOM複合体を精製することに成功した。HS-AFM解析を試みたところ、均一なTOM複合体粒子をイメージングすることに成功し、mNGタグと考えられる予備的なシグナルを計測することができたが、mNGタグを持たないTOM複合体が混入し、全体としてシグナルが弱くなってしまう問題も生じた。 並行して、TOM複合体に限らず様々なタンパク質複合体で本手法の有用性を実証するため、ミトコンドリア分裂やタンパク質分解に関わるタンパク質複合体の精製を進め、HS-AFMを用いてイメージングを行った。今後、本手法を適用し、タンパク質のダイナミクス研究を拡大する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
mNGタグを導入する位置によっては、TOM複合体自体の発現量の減少や、mNGを持つサブユニットがTOM複合体に組み込まれないことが認められた。したがって、mNGタグを導入する位置決定に想定以上の時間を要した。現在は適切なmNGタグの導入位置(Tom20サブユニットのサイトゾル側)を決定し、順調に研究が進んでいる。また、現段階で精製に成功しているmNG-TOM複合体でも、mNGタグの導入効率は100%ではなく、HS-AFM観察ではmNGを含まない、もしくはシグナルの弱い粒子が存在した。今後はmNGの導入効率を改善することで、本研究計画を大きく進展させたい。
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今後の研究の推進方策 |
TOM複合体粒子には1粒子あたり3つのTom20サブユニットが含まれると考えられている。現段階で精製に成功したmNG-TOM複合体には、mNG-Tom20とmNGを持たないTom20が混在して含まれることが予測される。mNGを持たないTom20の混在を避けるため、現在は酵母細胞に内在するTom20遺伝子の発現を抑制した細胞株の樹立に取り組んでいる。本細胞株を用いてmNG-TOM複合体を調製することができれば、mNG-TOM複合体を構成する全てのTom20サブユニットにmNGが導入されることが考えられる。したがって、mNGタグの位置からTOM複合体中のTom20の立体配置を決定することが可能となり、本研究で提案する「GFPトラッキング法」の有用性を実証することができる。今後はTOM複合体に限らず、ミトコンドリア分裂やタンパク質分解等、様々な種類のタンパク質複合体に本手法を適用し、ダイナミクス解析を進めていきたい。
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