研究課題/領域番号 |
22K19269
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
増田 章男 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (10343203)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | RNA-タンパク相互作用 / CLIP / tRIP / RNA結合タンパク / クロマチン分画 / RNA代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
転写・翻訳の根幹を成すRNA代謝の中でも、特に重要視されているRNA結合蛋白-RNAの相互作用に対し、画期的な高感度・高効率解析技術の開発を目指す。申請者は、すでに現在の標準解析技術CLIPの100倍以上の感度でRNA-タンパク相互作用/RNA修飾を検出するtRIP-seqを開発したが、まだ不十分であった。本研究課題では、tRIP法をさらに改変することで、超高感度RNA-タンパク相互作用検出法を開発し、次世代のRNA分子動態研究に向けた飛躍を狙う。
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研究実績の概要 |
研究代表者が開発した効率的RNA-タンパク相互作用検出法 (tRIP法) の、さらなる効率化を進めるため、細胞から効率的にクロマチン分画を回収する方法の開発と検証を行った。 ゲノムDNAを読み取ってRNAを合成する転写の場であるクロマチン分画は、高密度にDNAや核内タンパクが集積しているため、そこから効率的に目的タンパクを回収することは、困難である。様々な方法が開発されてきたものの、いずれも効率と難易度に課題を抱えている。本研究で、我々は、細胞抽出液の塩濃度を急激に変化させることで、DNA-RNA-蛋白が一体となった状態でクロマチン分画を析出させ、沈殿した複合体から効率的にRNAを回収する、簡便かつ確実な新規クロマチン分画回収法を構築した。 この方法の実効性を確認するため、培養細胞からクロマチンRNAを回収し、Nanopore PromethION による long read direct RNA-seq を行った。核可溶性分画とクロマチン分画の比較では、イントロン領域を含んだリードがクロマチン分画で著明に増加しており、期待通りクロマチン分画RNAが回収されていることが確認された。さらに、スプライシング促進因子SRSF3のノックダウン細胞とコントロール細胞の比較を行ったところ、SRSF3ノックダウンで複数のエクソンにまたがるイントロン領域のリテンションが生じ、核可溶性分画で、このリテンション領域がスプライシングされると同時に、領域内エクソンのスキッピングが生じていることが判明した。リテンション領域は、我々のtRIP解析でSRSF3が顕著に結合している領域であることが明らかであった。今回の研究で、SRSF3がスプライシングを促進させるために、イントロンリテンションの制御が重要な役割を果たす、という新たな知見を発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
クロマチン分画回収法の開発に成功し、RNA-seq解析を行ったところ、SRSF3によるスプライシング促進機構にイントロンリテンション制御が関わる、という新たな知見を得た。tRIP法の効率化検証のためにも、当初予定に無かった、このSRSF3機構のさらなる解析が必要となった。エクソンに比べイントロン領域は極めて長いため、通常のshort read RNA-seqに加え、long read RNA-seq の実験系を新規に立ち上げることとなった。このため、研究計画全体の進捗に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で開発した新規クロマチン分画回収法をもとに、時間や温度、バッファー条件など、様々な使用条件の検討を行うことでRNA-タンパク解析法の高感度化を進めていく。 また、RNA-seqとtRIP-seq進捗の統合解析を進め、SRSF3を含んだ複数種RNA結合タンパクの機能解析を進める。 得られた結果をまとめ、適宜、成果の論文発表を行っていく。
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