研究課題/領域番号 |
22K19278
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
藤橋 雅宏 大阪医科薬科大学, 医学部, 准教授 (10397581)
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研究分担者 |
林 秀行 大阪医科薬科大学, 医学部, 名誉教授 (00183913)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 結晶構造解析 / 結晶構造 / 量子計算 |
研究開始時の研究の概要 |
生命活動において多数の重要な働きをしているタンパク質の役割を詳細に解析するために、その立体構造を調べることは極めて有用である。この立体構造決定の技術は近年めざましい勢いで発展しているが、タンパク質中の水素原子位置の決定は未だに困難である。本研究では結晶構造解析という実験技術と、量子科学計算という計算技術を癒合させ、水素原子の位置の決定を容易にする技術開発に挑む。
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研究実績の概要 |
本研究では、量子計算と結晶構造の協調による解離性置換基のプロトン化状態可視化手法の開発を目指している。これによりオロチジン一リン酸脱炭酸酵素 (ODCase) で実証されつつある「歪みを通した酵素触媒反応の加速」における「歪み」が反応にどのぐらい貢献するのかをエネルギー的に見積もりたいと考えている。 これまでに多くの酵素の反応触媒機構が明らかにされているが、そのほとんどは「遷移状態の安定化」のみによって説明されている。実際の酵素反応では、遷移状態の基質と基底状態にある基質の化学構造は類似点も多いため、遷移状態を安定化する機構は酵素基質複合体の安定化にも寄与すると考えられる。酵素反応速度は酵素基質複合体と遷移状態のエネルギー差により規定されるため、酵素基質複合体と遷移状態の両方が安定化されると、酵素反応速度はあまり加速されない。この問題を解決するためには、遷移状態を安定化しながら酵素基質複合体を安定化しない機構が必要となる。我々はこの要請を満たす機構として「酵素基質複合体における基質の歪み」を考えており、本研究の遂行を通してこれまで見過ごされてきた「歪み」の作用を明らかにしたいと考えている。また本研究で開発する解離性置換基のプロトン化状態可視化手法は、様々な生体分子の機能解析に大きく貢献すると期待される。 2023年度はMODCaseの高分解能データのさらなる取得を目指したが、十分な成果は得られなかった。並行して過去に非常に大きな基質歪みを検出した結晶構造についての解析を行った。この回折データを高分解能で再度取得するため、トロント大学の共同研究先と協力してこのときに用いた基質の合成に取り組んだ。量子計算としては、ODCaseの他にプレニル基環化酵素などにも解析の対象を広げ、解離性置換基のプロトン化状態の解析並びに、酵素反応機構の解明に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験構造として用いる計画であったMethanothermobacter thermoautotrophicus由来ODCase (Mt-ODCase) について、高分解能データの取得が難航している。今後については,現在手持ちのデータを中心に解析を進めたいと考えている。 量子計算については、Mt-ODCase関連の計算はあまり進んでいないが、並行して進めている他生物種由来のODCaseの結晶構造 (他グループが最近決定) や、歪みに関連した他の酵素の解析については十分な成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度については「歪みを通した酵素触媒反応の加速」における「歪み」が反応にどのぐらい貢献するのかの解析を中心に進める。過去に取得したデータを詳細に分析し、酵素反応における歪みの貢献の可視化に適したデータを見いだす。必要に応じて更なるデータの取得を行う。 量子計算については引き続き、Mt-ODCaseを題材としたプロトン化状態の可視化計算を行うと共に、他生物種由来のODCaseの結晶構造 (他グループが最近決定) や、歪みに関連した他の酵素の解析を並行して進める。
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