研究課題/領域番号 |
22K19281
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構直轄研究施設) |
研究代表者 |
椎名 伸之 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構直轄研究施設), 生命創成探究センター, 准教授 (30332175)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
|
キーワード | RNA顆粒 / 天然変性領域 / IDR / eIF3a / 流動性 / 局所翻訳 / 神経活動 / 極性アミノ酸 / ダイナミクス / 局所的翻訳 / ポリアンフォライト |
研究開始時の研究の概要 |
ポリアンフォライトは陽・陰イオンから成るポリマーであり、その相互作用が生み出すゲルの物性は工業から生命科学の広い分野で注目されている。タンパク質のポリアンフォライトは液-液相分離を起こして凝縮体を形成する。本研究では、翻訳開始因子eIF3aのポリアンフォライト領域の改変が、神経活動依存的なeIF3a凝縮体の流動化、翻訳活性、ひいてはシナプス・記憶形成に与える影響をマウス脳神経で解析する。これにより、ポリアンフォライトのデザインルール・神経活動依存的スイッチング機構と生物機能を繋ぐ仕組みを明らかにする。この成果は、新たなスイッチ機能分子の開発等に応用できる可能性がある。
|
研究実績の概要 |
真核生物翻訳開始因子eIF3aは、生物の複雑化に伴いC末端に長い天然変性領域(IDR)を獲得した。脊椎動物では、酵母と比較して、このIDRが約400アミノ酸も伸長し(脊椎動物IDR, vIDR)、その約6割が荷電アミノ酸で構成されている。eIF3aは神経細胞においてRNA顆粒に局在し、静止状態では低い流動性を示すが、神経活動に応じて流動性が高くなる。この流動性の増加は、顆粒における局所翻訳の増加と密接に関連している。vIDRは、静止状態でeIF3aの流動性を低く維持し、局所翻訳を抑制するために必要である。vIDRの前半部分(vIDR1)は、10アミノ酸が20回程度繰り返したリピート配列であり、後半部分(vDR2)はvDR1とアミノ酸組成と長さが似ているが、配列はランダムである。今年度は、このようにアミノ酸組成と長さが類似しながら配列が異なる2つの領域の共通性と相違性に焦点を当て、研究を進めた。 vIDR1あるいはvIDR2欠損させたeIF3aを神経細胞に発現させ、RNA顆粒における流動性を解析した。その結果、静止状態においてeIF3aの流動性を低く維持するためには、vIDR1とvIDR2の両者が必要であり、相加的であることが示された。そこで、一定のアミノ酸組成から成るIDRの一定の長さが重要であるという仮説を立てた。その検証のために、vIDR2をvIDR1に置換してリピート配列のみを2倍にしたeIF3a-(vIDR1)x2を作成し、神経細胞に発現させた。その結果、eIF3a-(vIDR1)x2は野生型eIF3aとは逆の神経活動応答性を示した。つまり、静止状態でもeIF3a-(vIDR1)x2の流動性が高く、神経活動により流動性と局所翻訳が低下した。この結果は、リピート配列のみではむしろ野生型vIDRとは逆効果をもたらし、vIDR1とvIDR2の配列の違いの重要性を示唆した。
|