研究課題/領域番号 |
22K19283
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 耕三 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (00304452)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 老化 / 細胞 / 染色体 / 細胞・組織 / 染色体不安定性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、老化にともなう酸化ストレスの増加の原因、およびこれによる染色体不安定性の発生機構を明らかにすることを目的とする。応募者らは、老齢マウス (24ヶ月齢)から単離した皮膚線維芽細胞で、染色体不安定性 (染色体分配異常が高頻度で見られる状態)が見られること、またこれに酸化ストレスが関与していることを見出している。そこで老化にともなってなぜ酸化ストレスが増加するのか、酸化ストレスによってどのように染色体不安定性が発生するのかについて研究を行う。老化と染色体不安定性の関係の詳細は不明であり、本研究は老化にともなって起こる機能低下やがんの発生の理解およびその対処法につながることが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、老化にともなう染色体不安定性に対する酸化ストレスの影響を明らかにすることを目的とする。我々は、老齢マウスの皮膚線維芽細胞が、微小核やlagging chromosomeの増加など染色体不安定性の特徴を示すことを見出した。老齢マウスの細胞では活性酸素種(ROS)が増加しており、抗酸化剤により微小核の出現頻度が減少したことから、酸化ストレスの増加が染色体不安定性に関与していることが示唆された。そこで本研究では、この酸化ストレスの増加の原因、およびこれによる染色体不安定性の発生機構を明らかにすることを目的とする。2022年度は以下のような成果が得られた。 1. 老化にともなう酸化ストレスの増加の原因の解明 若齢マウスと老齢マウスより単離した皮膚線維芽細胞のミトコンドリア機能について、ミトコンドリアの膜電位の蛍光プローブであるJC-10により検討したところ、老齢マウス由来の細胞ではミトコンドリアの膜電位が低下しており、ミトコンドリア機能の低下がROSの増加を引き起こしている可能性が示唆された。 2. 酸化ストレスによる染色体不安定性の発生機構の解析 老齢マウスより単離した細胞では、複製ストレスの指標である間期核における53BP1 nuclear bodyや、染色体分配時のultra fine bridgeが認められたことから、複製ストレスが生じている可能性が示唆された。そこで、酸化ストレスと複製ストレスの関連を調べるために、抗酸化剤であるNACを加えたところ、老齢マウスより単離した細胞において53BP1 nuclear bogyとultra fine bridgeを有する細胞が減少することがわかった。このことより、老齢マウスより単離した細胞では、酸化ストレスにより複製ストレスが引き起こされている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度には、研究計画書に記載した研究項目のうち、1. 老化にともなう酸化ストレスの増加の原因の解明および、2. 酸化ストレスによる染色体不安定性の発生機構の解明について、それぞれ順調な進捗が見られた。1. については、老齢マウスより単離した線維芽細胞においては、ミトコンドリアの機能低下が起こっており、これが酸化ストレスの原因となっていることが示唆された。加齢にともなってミトコンドリア機能が低下することは以前より知られており、本研究の成果はこれを支持するものと考えられた。一方2.については、老齢マウスより単離した線維芽細胞においては、複製ストレスが起こっており、これが酸化ストレスに起因することが示唆された。このことは、酸化ストレスが複製ストレスを介して染色体不安定性を引き起こしている可能性を示しており、本研究の展開に重要な所見であると考えられた。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の成果をふまえ、2023年度は以下のような研究を行う。 1. 複製ストレスと染色体不安定性の関連の解明 老齢マウスより単離した線維芽細胞において、複製ストレスの軽減が染色体不安定性の改善につながるかを調べる。この目的のために細胞にnucleosideを加え、53BP1 nuclear bodyの頻度や微小核の頻度を検討する。また複製ストレスがどのように染色体不安定性を引き起こすかについて、染色体不安定性の原因として知られている紡錘体チェックポイントの異常や微小管の過度の安定化などが見られるかどうかを検討する。 2. 染色体不安定性による異数性の発生の検討 老齢マウスより単離した線維芽細胞において、染色体不安定性が異数性(染色体数の異常)を引き起こすかどうかをchromosome spreadを行なって染色体数を数えることによって検討する。またchromosome breakなどの染色体の構造の異常が見られるかについても明らかにする。 3. シングルセルRNA解析による加齢にともなう線維芽細胞集団の遺伝子発現変化の解析 若齢マウスと老齢マウスより単離した線維芽細胞を用いて、シングルセルRNA解析を行い、遺伝子発現の差異によってそれぞれに含まれる細胞集団を解析し、加齢にともなう線維芽細胞集団の変化を検討する。
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