研究課題/領域番号 |
22K19295
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片山 雄太 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (70725085)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | CHD8 / 転写伸長 / 自閉症 / マウスモデル |
研究開始時の研究の概要 |
自閉スペクトラム症(自閉症)はコミュニケーション障害や行動の限局性を特徴とする発達障害であり、1%を越える高い有病率から近年特に注目を集める精神疾患の1つである。本研究は自閉症患者で最も変異率の高い原因遺伝子の1つとして注目を集めているCHD8遺伝子に着目し、CHD8遺伝子欠損による転写伸長への影響とCHD8タンパク質複合体の同定によってCHD8と転写伸長の関連を明らかにし、マウスモデルを用いて自閉症の新たな発症メカニズムとして転写伸長の関与を検証することを目的とする。
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研究実績の概要 |
これまでに申請者は自閉症患者で最も変異率の高い原因遺伝子の1つとして注目を集めているCHD8遺伝子をヘテロ欠損したマウスが自閉症を発症することを報告したが、近年このマウスの脳内遺伝子発現量が遺伝子長に逆相関していることを発見した。長鎖遺伝子の発現低下は転写伸長反応が障害されたときに見られる表現型であるため、転写伸長の障害が自閉症の発症に関わると推測されるが、これまでCHD8が転写伸長に関わる報告はない。そこで本研究ではCHD8と転写伸長の関連を明らかにし、自閉症の新たな発症メカニズムとして転写伸長の障害が関与する可能性を検証する。 この目的を達成するため、CDK9阻害剤を用いたRNAポリメラーゼの伸長速度の定量実験や遺伝子上のPol IIの結合領域を1塩基解像度で同定することができるmammalian native elongating transcript sequencing (mNET-seq)法を用いてCHD8と転写伸長の関連を明らかにする。さらにCHD8の結合タンパク質を質量分析計を用いて同定し、CHD8タンパク質複合体の構成因子を明らかにする。 クロマチンリモデリング因子の多くは巨大な複合体を形成して機能していることが知られており、複合体の構成タンパク質を同定することで機能を推測することができると考えられる。最後に、CHD8と転写伸長因子の結合を阻害する遺伝子変異を導入したマウスを作製し、行動解析によって自閉症の発症を評価することでCHD8の転写伸長促進機能と自閉症の関連を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度はCHD8と転写伸長の関連を検証するため、CHD8を欠損させたマウス神経幹細胞を用いたmNET-seq解析をおこなった。しかし想定外に神経幹細胞では転写状態がその他の培養細胞と大きく異なっていたことから、解析に供する十分なデータを取得することができなかった。これはおそらく神経幹細胞のスプライシングが通常の細胞と異なっているためと推測されるが、本研究の目的とは外れるが興味深い発見だった。現在は解析原理の異なるPOINTseq法による解析の使用を検討している。また、質量分析計を用いてCHD8の結合タンパク質の同定を行ったところ、予想通り転写伸長関連タンパク質がCHD8に結合していることが明らかになった。この結果はCHD8が転写伸長複合体の構成因子として働いていることを示唆する。
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今後の研究の推進方策 |
CHD8と転写伸長の関連を検証するために、当初予定していたmNET-seqを実施ししたところ、実験に用いた神経幹細胞の特性のため十分なデータを取得することができなかった。この問題を回避するべく、本年度はスプライシングの影響を受けづらい解析手法であるPOINT-seq法を採用し、CHD8と転写伸長の関連を検証する。また、CHD8の結合タンパク質として転写伸長関連タンパク質が同定できたため、これらのタンパク質とCHD8の結合様式を明らかにすることで、CHD8による転写伸長反応の制御メカニズムの理解を深める。
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