研究課題/領域番号 |
22K19297
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
塩田 倫史 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (00374950)
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研究分担者 |
西原 秀典 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (10450727)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | グアニン四重鎖 / 脳機能 / ヘテロクロマチン / 神経疾患 / レトロトランスポゾン / 進化 / 病態 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで「ヒトがヒトであるための本質的なゲノムの特徴」は捉えることができていない。トランスポゾンは遺伝子間領域における割合が最も高いことから、脳におけるトランスポゾン機能の解明は「ゲノムと個性」の解明に繋がる可能性がある。また、 グアニン四重鎖(G4)構造を含めた核酸高次構造の研究は、これまで核酸化学分野を中心に研究がなされてきたが、生物における機能的役割は未解明な点が多い。本研究は、未解明である G4 構造の「生理学的意義」にフォーカスすることで異分野融合研究を推進し、新たな研究領域を開拓できる。
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研究実績の概要 |
ヒトゲノムは半分ほどが「トランスポゾン(転移因子)」と呼ばれるゲノム内を動くことができる塩基配列で占められており、ゲノム構造の多様性と生物進化に大きな影響を与えている。中でもレトロトランスポゾン LINE-1 (Long Interspersed Nucleotide Element-1) は、自身の配列にコードされたタンパク質を使用して、自身のコピー配列を合成し、新たなゲノム領域に「転移する(増える)」ことができる唯一の自立型トランスポゾンである。興味深いことに、この「LINE-1 転移」は脳の神経前駆細胞で高頻度に観察されており、「脳の多様性(個性)」と「神経障害」の機能的二面性を生み出している可能性が指摘されている。しかしながら、 LINE-1 の転移メカニズムと神経機能の関連性は未解明である。本研究は、生物進化の原動力のひとつである転移因子「LINE-1」が引き起こす「脳の多様性」と「神経障害」の機能的二面性に着目し、その ON-OFF スイッチを核酸高次構造である「グアニン四重鎖(G4)構造」が担うことを実証する萌芽的研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、LINE-1 RNA の 3’UTR に形成される G4 構造が「逆転写不全」の原因であることを発見した。G4 構造はグアニンが豊富な配列領域で形成される核酸高次構造であり、 LINE-1 ORF2p 逆転写酵素による伸長を物理的に阻害する。従って、完全長である転移活性型 LINE-1 ssDNA の産生が減少し、断片化 LINE-1 ssDNA の産生が増加する。完全長 LINE-1 はさらなる転移による「多様性・生物進化」に繋がる。一方、研究代表者は細胞ストレスによる G4 構造の過形成により「逆転写不全」が亢進することで、断片化 LINE-1 ssDNA が産生増加し「神経障害」を引き起こすことを見出した。つまり、G4 構造が LINE-1 を介した多様性と神経障害の ON-OFF スイッチを担うと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1) LINE-1 転移を評価できるレポーターアッセイを用いて「G4 逆転写スイッチ」を解析する。レポーターアッセイにより「逆転写不全」を評価する。2) いくつかの生物種における LINE-1 の 3’UTR 配列解析を行い、 G4 構造の形成と断片化 LINE-1 の転移頻度の相関に関するバイオインフォマティクス解析を行う。3) 物理化学的解析 (CD スペクトル、 RNase T1 フットプリントアッセイ) により LINE-1 における G4 構造の生物進化と構造形成の相関を検討する。4) in vitro 転写により各種 RNA を合成し RT-qPCR を行い、G4 構造形成と DNA 産生量の相関関係を解析する。
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