研究課題/領域番号 |
22K19301
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
笠原 浩二 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基盤技術支援センター, 研究員 (60250213)
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研究分担者 |
小松谷 啓介 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 研究員 (30795620)
菊池 紀仁 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 研究員 (30883714)
平林 哲也 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 主席研究員 (90345025)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 新型コロナウイルス / 脂質ラフト / 侵入機構 / ガングリオシド |
研究開始時の研究の概要 |
SARS-CoV-2スパイクタンパク質がガングリオシドGM1と直接結合することを表面プラズモン共鳴法により示し、GM1を欠損させるとSARS-CoV-2感染が抑制されることを見出した。本研究で、その欠損細胞にGM1を添加し、感染がレスキューされることを調べ、GM1が共受容体であることを証明する。 GM1が関わる感染機構を明らかにするために、感染モデル細胞にスパイクタンパク質S1を添加するとACE2が脂質ラフトに移行し細胞内に取り込まれることを見出した。ACE2以外に脂質ラフトに移行するタンパク質群があり質量分析で同定に成功した。本研究では、その中で感染に関わっている分子を突き止め、創薬標的分子の提案をする。
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研究実績の概要 |
SARS-CoV-2 Sタンパク質には宿主受容体であるACE2と結合する領域RBD(319-537)が存在することが知られているが、Biacoreを用いた表面プラズモン共鳴解析により、N末端側領域であるNTD(13-303)がガングリオシドGM1と強く結合することを見出した。多くのウイルスはスフィンゴ脂質とコレステロールに富んだ脂質ラフトを介して細胞内に侵入することが知られている。このことから、スフィンゴ脂質の一種であるガングリオシドGM1と結合することで脂質ラフトを介するエンドサイトーシス経路によって細胞に侵入する可能性が考えられた。 そこで脂質ラフトがSARS-CoV-2の感染に必要不可欠であるかを、ACE2発現HEK293T細胞とSARS-CoV-2 Sタンパク質発現疑似ウイルスを用いて確認実験を行った。その結果、メチルβシクロデキストリンによる脂質ラフト破壊により、疑似ウイルスの感染を抑制することが確認された。さらに、ガングリオシドGM1に強く結合するコレラトキシンB subunit (CTxB)を用いて、あらかじめガングリオシドGM1をブロックしてGM1との結合を阻害すると、疑似ウイルスの感染が抑制された。 さらに、CRISPR-Cas9法によりガングリオシド生合成系の初発酵素GlcCer合成酵素(UGCG)を欠損させ、ガングリオシドGM1欠損細胞による感染抑制効果を検討した結果、UGCG欠損株で疑似ウイルスの感染が抑制され、UGCC欠損株に外からガングリオシドGM1を添加すると、疑似ウイルスの感染がレスキューされた。これらの結果により、ガングリオシドGM1が共受容体として機能していることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SARS-CoV-2の宿主受容体であるACE2を安定発現させたACE2発現HEK293T細胞に対してSARS-CoV-2 Sタンパク質発現疑似ウイルスを感染させる実験系を用いることにより、安定した実験データーを出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにSARS-CoV-2 Sタンパク質発現疑似ウイルスの感染系を用いて、充分な感染には宿主細胞のACE2だけではなくガングリオシドGM1も必要であることを示すことができた。よって今後は、SARS-CoV-2各種株(武漢株、デルタ株、オミクロン株)の宿主細胞(VeroE6、VeroE6/TMPRSS2、ACE2発現HEK293T)への感染にもガングリオシドGM1が必要であるかどうか否かを調査する。 具体的には、コレラトキシンB subunit (CTxB)前処理によるGM1ブロックの感染阻害効果とUGCG欠損株への感染効率を、武漢株、デルタ株とオミクロン株を用いて各種宿主細胞で比較することにより、ガングリオシドGM1がエンドサイトーシス経路による細胞内侵入に関わっている可能性を検証する。
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