研究課題/領域番号 |
22K19317
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分44:細胞レベルから個体レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小幡 史明 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (40748539)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 熱耐性 / Cataglyphis bombycina / 代謝 / リシン / ショウジョウバエ / 比較生理 / Cataglyphis / Drosophila / 比較代謝生理 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、C. bombycinaの体内でリシン量が少ないこと、リシン制限培地で飼育したハエの熱耐性が増大することなどの予備的知見を元に、ハエ及びアリのそれぞれについて解析を進める。ショウジョウバエにおけるリシン制限による熱耐性増大機構については、メタボローム・トランスクリプトーム解析と遺伝学を組み合わせ、原因経路を特定する。砂漠アリについては、リシン代謝などについてメタボロームや生化学的解析を行う。リシン研究の進捗・結果次第で、メチオニン代謝物の機能的寄与についても解析を進める。
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研究実績の概要 |
多くの動物にとって厳しい高温環境中での生存は困難である。特に昆虫は変温動物であることから、高温環境において外気温と同じ温度まで体内温度が変化するため、その適応は極めて難しい。これまで調べられている中で、最も高温に耐性をもつ昆虫の一つが、Cataglyphis bombycinaなどの砂漠に住むアリである。本研究の目的は、高い熱耐性を持つことが知られる砂漠アリが、どのように高温下でも活動しているかを比較生理学的に解明することである。これまでにC. bombycinaには熱耐性能を高める何らかの代謝物があるとの仮説を立てて、熱耐性の低いアリやショウジョウバエと比較代謝解析を行なってきた。熱耐性の低い種においては45度10分の熱処理によって、メタボロームが一様にシフトする。一方、驚くべきことに、C. bombycinaのメタボロームは熱処理によってほとんど変動しないことが分かった。特にアミノ酸でありリシンが少ないことが明らかとなった。そこで、ショウジョウバエにリシン制限餌を食べさせたところ、熱耐性が増大した。リシン制限餌は、オスについてもメスについてもその熱耐性を増大させたが、いずれも熱応答タンパク質の発現には影響しなかった。そこでRNAseq解析を行い、リシン制限下で変動するいくつかの遺伝子を同定した。また、リシン制限によりオートファジーが亢進することが考えられたが、オートファジーの変異体においてもリシン制限による熱耐性の増大が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ショウジョウバエを使った解析については大きく進展しており、リシン制限による効果の詳細な記述が完了した。トランスクリプトーム解析から認められた発現に差異のある遺伝子群については、機能解析を行いたい。一方、C. bombycinaを使った解析はコロナの影響が引き続き残っており、材料であるアリの取得が難しいため、解析が進んでいない。代わりに日本に住む一般的なクロオオアリにリシン制限をかけ、ショウジョウバエ同様に熱耐性に影響するかを引き続き解析していく。
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今後の研究の推進方策 |
C. bombycinaの取得については、共同研究者であるベルギーのSerge Aron博士と協調し、今年度の砂漠あり取得について検討することとしている。サンプルが取れ次第、解析を進めたい。一方、それが難しい場合に備え、日本に生息するクロオオアリのリシン制限餌を準備し、C. bombycinaと同等の熱耐性を獲得しうるかについて検討を重ねる。また、熱耐性の高い他の昆虫についても探索し、リシン量を初め、砂漠のアリと類似した代謝物パターンがないかを調べることも検討している。
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