研究課題/領域番号 |
22K19325
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分44:細胞レベルから個体レベルの生物学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
深澤 太郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (10565774)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
|
キーワード | アフリカツメガエル / 再生 |
研究開始時の研究の概要 |
ツメガエル幼生尾は切断した際に機能的な尾を再形成する高い再生能を示す。申請者らは、ツメガエル幼生尾再生において再生組織中にて発現するインターロイキン11に筋肉・脊索・脊髄の前駆細胞を誘導する機能があることを見出した。再生時における複数組織の前駆細胞の誘導がたった一つの因子に因ることを示す結果であり、これより「各組織の組織幹細胞には組織の別を問わない普遍的な活性化機構がある」という仮説を立てている。本研究ではインターロイキン11の下流因子である新規遺伝子を発現する特定の細胞分画がこの仮想機構の細胞実体であると想定し、この分画が複数組織の幹細胞活性化に関与することを検証する。
|
研究実績の概要 |
申請者らは、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)を用い器官再生時の細胞挙動、特に組織幹細胞の挙動について解析を行っている。当研究室の先行研究で、尾再生時に発現するインターロイキン11(il11)に尾を構成する各組織の未分化細胞を誘導する機能があることを見出しており、これより「各組織の幹細胞にはil11により駆動される共通の活性化様式がある」と仮説をおき、この実証を目的に研究を行っている。本申請の研究では、幼生尾再生時の組織幹細胞の活性化に関与する細胞種の同定を、後述する3つのアプローチから試みている。今年度は、(1)組織幹細胞の濃縮法として知られるSide population法がツメガエル幼生尾再生芽中の組織幹細胞の濃縮にも有効であることを報告した(加藤ら、2022)。(2)これまでにil11ノックダウン時に発現低下する遺伝子のスクリーニングにより、ツメガエルの特定の白血球分画に発現し幼生尾再生に必須である遺伝子regeneration factors expressed in myeloid (rfem)を同定していたが、rfemを発現するこの白血球分画が尾再生に必要であること、この白血球分画のもつ尾再生促進能にrfem発現が必要であることを見出した(出口ら、リバイス中)。(3)ツメガエル幼生尾再生不応期に尾再生を阻害する免疫応答について、この現象に関与する細胞種とケモカイン受容体の一部を同定した(深澤、2022発生生物学会)。なお(1)(2)の実験の一部は課題番号20K21517と共同で実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)いくつかの生物種・組織でその組織幹細胞が高い薬剤排出能をもつことが報告されており、これを利用して核酸染色試薬Hoechst 33342での染色時に低染色性となる分画(Side population; SP)として幹細胞濃縮分画を得る方法がSP法である。SPは薬剤排出を担うABCトランスポーターの阻害剤であるVerapamil投与時と非投与時に差のある分画として定義される。今回、ツメガエルの幼生尾再生芽においてVerapamil投与時と非投与時とでHoechst 33342染色パターンを比較したところ、SPを検出した。さらに、再生芽SPをセルソーターで単離しsingle cell RNA-seqを行ったところ、既知の筋幹細胞である筋衛星細胞マーカーpax7を発現する細胞がSPに濃縮されていることを見出した(加藤ら、2022)。(2)これまでにrfemのノックダウンにより尾再生が阻害されること、rfemは特定の白血球分画に限局して発現することを見出していた。今回、rfemを発現する白血球分画をこの分画の分化に必要な因子のノックダウンにより減弱させると尾再生が阻害されること、rfemノックダウン個体においてこの白血球で特異的に機能するプロモーターを用いてcell type specificにrfemをレスキューすると尾再生能が回復することを見出した。(3)これまで再生不応期型免疫応答に必要なケモカインを同定していた。今回、このケモカインとの結合能がある受容体を同定した。さらに、この受容体をノックダウンした際に再生不応期の再生能が回復することを見出した。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)ツメガエル幼生再生芽SPには筋衛星細胞以外の組織幹細胞が濃縮されていることが期待される。SPのsingle cell RNA-seqデータより細胞の疑似分化系列を推定することで、未同定である他の組織の幹細胞マーカーとなる遺伝子の探索を行う。(2)本内容は原著論文として投稿し現在リバイス中である。リバイスのために必要な実験を行う。(3)今回同定したケモカイン受容体を発現する細胞種がどのように不応期型免疫応答に関与するかの解析を進める。
|