研究課題/領域番号 |
22K19339
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分45:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
久保 泰 沖縄科学技術大学院大学, 海洋大進化ユニット, スタッフサイエンティスト (40719473)
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研究分担者 |
平山 廉 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (00238396)
久保 麦野 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (10582760)
飯島 正也 名古屋大学, 博物館, 学振特別研究員(CPD) (40867892)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | マイクロウェア / 歯 / 餌 / 古生態復元 / ワニ / 獣脚類 / 給餌実験 / 久慈層群 / 食性復元 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は現生ワニの給餌実験を通じて、摂食時に歯に残される微細な傷(マイクロウェア)の三次元情報と食物の物性の関連付けを目指す。このような爬虫類の給餌実験は世界初の試みであり、ワニの取り扱いには大きな危険が伴うが、脊椎動物の骨の破砕によるマイクロウェアへの影響を知るには大型の捕食者を用いた実験は欠かせない。 明らかになった餌と三次元マイクロウェアの関係から絶滅種の食性復元を行う。岩手県久慈市の後期白亜紀のワニ歯化石や同時代のスペインの同所的に産出する複数種のワニ、魚食が推定されるガビアル科や海ワニ、現在のワニとは全く生態の異なる絶滅した陸生ワニ等で食性復元の研究を進めたい。
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研究実績の概要 |
本研究では、ワニの給餌実験により餌による歯に残される微細な傷(マイクロウェア)がどのように異なるのかを調べ、その結果を化石ワニ等に適用する事を目的としている。本年度が初年度であるが、ワニ給餌実験は既に米国クレムソン大学で分担者の飯島博士研究員が開始していた。ペレット、イワシ、ウズラ、ラットをアメリカンアリゲーターに与え、飼育水槽中の脱落歯を日本に郵送してもらった。本年度で郵送された脱落歯の解析を進め、その結果としてエサがマイクロウェアに与える影響を明らかにし、論文としてまとめて発表する事ができた。 また、比較対象の絶滅ワニとしては岩手県久慈市の後期白亜紀のワニ、スペインの後期白亜紀のワニであるロウエコスクスの歯型を採取した。その他にもカナダとタイの博物館で化石ワニの歯型の採取をすすめた。現在久慈のワニ化石とスペインのワニ化石については、解析および現生ワニとの比較を進めている。化石ワニの表面は概して、給餌実験の使ったワニより粗く、これが実際の餌を反映しているのか、あるいは化石化過程の風化等を反映しているのかを、現生ワニの歯を用いた突き刺し実験により進めている。 さらにワニと似通った歯や食性を持っていたと推定される肉食恐竜のマイクロウェアについても解析を進め、現生ワニのマイクロウェアと比較する事で、肉食恐竜が成長段階によって異なる餌を食べており、幼体は成体よりも硬い餌を食べていたらしいことも明らかにする事ができた。この成果も論文として国際誌に出版する事ができた。 分担者の平山教授が主催する久慈での後期白亜紀の脊椎動物化石発掘も夏と春に無事の行う事ができ、さらなる追加のワニ化石を発見する事ができた。ワニの分類も含めて、今後研究を進めて行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに、ワニの給餌実験の結果をまとめて国際誌に投稿することができた。その結果、食べ物の硬さが歯の表面のマイクロウェアの粗さに影響を与える事を明らかにできた。本研究は、哺乳類以外において初めての給餌実験によるマイクロウェアと餌の関係を調べた研究である。ただ、今回の解析は全て脱落歯に基づいており、頭骨についた歯から直接計測する事はできていない。実験に用いた4頭のアリゲーターのうち、二頭は給餌実験後に安楽死させており、その頭部の日本への郵送を計画しているが、国際貨物輸送がとどこおっている現状もあり、未だにCITESの担当部署からの許可が降りていない。 幸いにコロナの状況も好転し、海外での博物館調査が可能な状況になった。そのおかげでスペインの後期白亜紀のワニ化石の歯型やカナダの後期白亜紀のワニ化石、タイの前期白亜紀のワニ化石等の歯型の収集を行うことができた。マイクロウェアの解析についてもスペインのものについては進めている。 久慈市の後期白亜紀の脊椎動物化石発掘では発掘地域を広げる事で、さらなる追加の化石が得られた。これまでに久慈で得られたワニの歯化石についても既に解析を進めている。 ワニと似通った生態であったと予想される獣脚類についてもワニとのマイクロウェアの比較を行った論文を出版することができた。これは獣脚類恐竜のマイクロウェアを三次元的に分析した世界初の研究であり、恐竜のマイクロウェアの三次元分析としても昨年に我々の研究グループが久慈市産の竜脚類の歯化石を解析して出版した論文に続いて2本目の論文である。ワニや恐竜を含めた大型爬虫類のマイクロウェア研究では、今後も世界の先頭にたって食性史研究の新たな局面を切り開いていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ワニやトカゲ等の咬耗面(歯が磨れて平らになった面)が発達しない動物でのマイクロウェア研究は、まだ端緒についたばかりである。特に彼らのマイクロウェアを三次元的に分析する研究は2019年に最初の論文が出版されて始まったばかりである。そのため、現生種あるいは我々が行った給餌実験などにより、マイクロウェアと餌の関係が明らかになりつつあるとは言え、まだまだ手法の精度の向上のために検討すべき課題は多い。 特に咬耗面でないところにつくマイクロウェアの解析では、もともとの面の形状が三次元表面性状の結果に影響を与えてしまう可能性がある。現在は表面性状解析ソフトウェアのフィルタリング機能を利用して面全体の大きな形状を除去することで対応している。しかし、これだけで形状が完全にとれているとは言い切れない。今後は、様々な方法を試す事で傷の影響だけを拾い出す事ができるような手法の確立を目指す。 また、化石化の過程の歯の運搬中についた傷がマイクロウェアの解析に影響を及ぼすのかどうか、あるいは頭骨中の歯の位置によりマイクロウェアに違いがでるのかどうかなども、現生ワニの歯を堆積物粒子とともに攪拌する実験や、給餌実験に用いたワニの歯がついた頭骨の解析を通じて明らかにしていきたい。 また現在分析を進めている岩手県久慈市やスペインの後期白亜紀のワニのマイクロウェアについては、現生ワニのマイクロウェアとの比較を通じて食性復元を行ない、論文にまとめたい。さらに、上述のカナダやタイなどの異なる中世代のワニ化石のマイクロウェアとの比較も行う事で、中生代のワニの食性の地域や時代による変化を明らかにしたいと考えている。
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