研究課題
挑戦的研究(萌芽)
本研究は現生ワニの給餌実験を通じて、摂食時に歯に残される微細な傷(マイクロウェア)の三次元情報と食物の物性の関連付けを目指す。このような爬虫類の給餌実験は世界初の試みであり、ワニの取り扱いには大きな危険が伴うが、脊椎動物の骨の破砕によるマイクロウェアへの影響を知るには大型の捕食者を用いた実験は欠かせない。明らかになった餌と三次元マイクロウェアの関係から絶滅種の食性復元を行う。岩手県久慈市の後期白亜紀のワニ歯化石や同時代のスペインの同所的に産出する複数種のワニ、魚食が推定されるガビアル科や海ワニ、現在のワニとは全く生態の異なる絶滅した陸生ワニ等で食性復元の研究を進めたい。
本研究では、ワニの給餌実験により餌による歯に残される微細な傷(マイクロウェア)がどのように異なるのかを調べ、その結果を化石ワニ等に適用する事を目的としている.初年度には、米国クレムソン大学で分担者の飯島博士研究員が実施したワニの給餌実験の結果をまとめ、エサの硬軟がマイクロウェアに与える影響を明らかにし、論文としてまとめて発表した。最終年度となる昨年度は、分担者の早稲田大学の平山廉教授が中心となって進めている岩手県久慈市の後期白亜紀のワニのマイクロウェアをスキャンし、現生肉食爬虫類のマイクロウェアとの比較を行った。また、クレムソン大学での給餌実験で使った現生ワニの歯を用いて突き刺し実験を進めている。これらの研究の実行は分担者である東京大学の久保麦野准教授の修士の学生に中心となって進めてもらった。歯の突き刺し実験では、歯の先端部の方が根本よりも傷がつきやすく、餌の物性を反映すること。給餌実験と同様に餌の硬軟により傷が異なることを確認することができた。また久慈のワニ化石の研究では、魚食のワニに比べると明らかに傷が深いことや、哺乳類等も食べる現生ワニの傷に類似することから、白亜紀の久慈のワニは魚だけでなく陸上脊椎動物等も食べていた事が推測された。平山廉教授が中心となって進める久慈での発掘にも研究費を活用し、久慈層群の絶対年代測定を進め、さらに夏や春には化石発掘により新たな研究資料も得ることが出来た。同時に白亜紀の草食恐竜のマイクロウェアについても研究を進め、おそらく被子植物の放散による時代変化を探り当てる事ができた。今後もワニだけに限らず、中生代爬虫類全般のマイクロウェアについて研究を進め、その生態の進化や変動する環境との関連を明らかにしていきたい。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件) 備考 (3件)
Palaeontology
巻: 66 号: 6
10.1111/pala.12681
Frontiers in Ecology and Evolution
巻: 10 ページ: 957725-957725
10.3389/fevo.2022.957725
巻: 65 号: 6
10.1111/pala.12632
https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/category/press/10643.html
https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/category/press/9921.html
https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/category/press/9830.html