研究課題/領域番号 |
22K19345
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分45:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河内 孝之 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (40202056)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 性染色体 / 性染色体遺伝子 / 性染色体進化 / 染色体進化 / 植物発生生物学 / 有性生殖 |
研究開始時の研究の概要 |
我々が同定したゼニゴケ性決定遺伝子には雌性染色体上の雌性化因子である。予期せぬことに性染色体間ホモログであるガメトログが存在し、有性生殖誘導機能を共有していた。半数体の性染色体や性決定システムを真に理解するためには、これまでは単に必須遺伝子と考えられてきたガメトログの役割を研究することが重要であると考えた。そこで、ゼニゴケの性染色体にコードされるガメトログ遺伝子に焦点を当て、突然変異体を作成し表現型を観察する。これまで注目されなかったガメトログを研究対象として取り上げることで、性染色体および性染色体上の遺伝子の進化の理解が深まると期待される。
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研究実績の概要 |
ゼニゴケは単相世代で性分化を行う雌雄異株植物であり、雌にはU染色体、雄にはV染色体と呼ばれる性染色体をもつ。性染色体は常染色体から誕生し、二倍体生物では性決定遺伝子をもつ性染色体と性決定に直接関与しない性染色体に非対称な染色体進化を示すことが知られている。ヘテロ接合性がない半数体生物の性染色体は必須遺伝子を性決定遺伝子をもつ染色体から欠失させることができず二倍体生物の性染色体とは根本的に異なる進化をすることが理論的に予想されていた。我々が同定したゼニゴケの性決定遺伝子BPCUは、性決定遺伝子が性決定性染色体に特異的であるという常識に反し、性染色体間で相同性を示す遺伝子(ガメトログ)であるBPCVをもつ。性決定機能はU染色体上のBPCU遺伝子のみがもつが、V染色体上のBPCV遺伝子と共通して有性生殖誘導に関する機能を保持していた。つまり、半数体生物のガメトログは単に雌雄に共通する機能をもつだけでなく、性に特異的な役割をもつ可能性が示された。昨年度までにデータベースの遺伝子情報を用いて、ゼニゴケの19種類のガメトログ遺伝子の誕生年代を推定した。今年度は、重要な遺伝子と推定されたガメトログ遺伝子を優先してゲノム編集を用いた遺伝子破壊を進めた。また、同じゼニゴケ属で雌雄同株化したアカゼニゴケのゲノム解析が進んだため、アカゼニゴケのゲノム情報を利用して、ガメトログ遺伝子の分布を調べた。ゼニゴケガメトログ遺伝子の相同性を示す多くの遺伝子が単一遺伝子であることから、ガメトログとして維持されていないことが予想された。由来を正確に予想するために分子系統樹を作成し、ガメトログをU染色体由来のものと推定されるU型、V染色体由来のV型と区別した。予想外にU型とV型をもつものは少数の遺伝子で、他の遺伝子はU型、V型、ガメトログ遺伝子をもたないものに分類された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
雌雄における機能の差を調べる宿主として作成した近交系株のゲノム解読を進め、論文化した(Tomizawa et al., 2023)。 また、データベースのゲノム情報を用いた分子系統解析により、ガメトログの出現時期を推定することが重要と考えた。今年度は、当初のゼニゴケの性染色体がもつガメトログ遺伝子を網羅的に破壊して解析する解析を継続するとともに、同じゼニゴケ属で雌雄同株化したアカゼニゴケのゲノム解析が進んだため、アカゼニゴケのゲノム情報を利用して、ゼニゴケのガメトログ遺伝子の分布を調べた。分子系統解析を重視した。当初の計画研究の網羅的にゼニゴケガメトログ遺伝子を網羅的に破壊することは行っていないが、標的を見定めた解析ができており、質として当初の計画の期待以上の比較ゲノム解析の成果を得ている。そのため、総合的に概ねに順調に進展したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
形質転換が可能なゼニゴケを用いて、重要性が明らかにされたガメトログ遺伝子の解析を進める。これに加えて、アカゼニゴケのゲノム情報から得られた知見がガメトログ機能解析にも有用であることがわかった。そこで、アカゼニゴケを利用した遺伝子の機能解析実験を可能にする実験法の開発が必須である。アカゼニゴケ形質転換法を開発し、アカゼニゴケにおける機能解析を計画に加えることで研究を推進する。
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