研究課題/領域番号 |
22K19351
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分45:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
|
研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
陰山 大輔 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (60401212)
|
研究分担者 |
林 正幸 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物防疫研究部門, 主任研究員 (80837609)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
|
キーワード | オス殺し / サプレッサー / 雄殺し / スピロプラズマ / 進化的軍拡競争 |
研究開始時の研究の概要 |
有性生殖する多くの生物種では性比が1:1であり、それは適応的である。ところが節足動物では、細胞質に寄生する細菌が宿主の性比をメスに偏らせる場合がある。我々は、カオマダラクサカゲロウ(宿主)において、共生細菌スピロプラズマによる雄殺しのせいで雌に偏った集団性比が、数年後には、宿主側の雄殺し抵抗性遺伝子が集団内に固定し、集団性比が正常化していることを発見した。更にその後、宿主の持つ雄殺し抵抗性の影響を受けずに雄殺しを引き起こす新規スピロプラズマ株を発見した。この新規株に着目し、比較ゲノム、集団解析、機能解析等を通じて宿主とスピロプラズマで見られる性比を巡るダイナミックな進化的攻防をとらえる。
|
研究実績の概要 |
2023年度は、7月と8月に広島県福山市および沖縄県石垣島での採集を行い。野外個体の感染率とそれらが生む子どもの性比を調査した。その結果、石垣島では、前年同様スピロプラズマの感染率が低かった。福山では、2019年以降初めてオス殺しが生じているスピロプラズマ感染系統が発見された。本系統に抵抗性遺伝子を三世代にわたり導入したところ、オス殺しが生じ続けたことから、遺伝的抵抗性を打破するスピロプラズマ(ハイパー株)であることが示唆された。また、2022年度まではオス殺し抵抗性に感受性を持つスピロプラズマ(従来株)が、年を追うごとに着々と頻度を減少させていたが、頻度減少に歯止めがかかったような結果となった。この意味を吟味するには翌年度の調査が必要となる。今後のさらなる調査により、従来株が消滅し、ハイパー株が上昇していくのかどうかが明らかとなってくると期待している。さらに、今年度の成果としては、スピロプラズマのハイパー株のゲノム解析がある程度完了した点である。従来株とハイパー株とのゲノム比較の結果、それらは系統的に分岐したものではないことが明らかとなった。ゲノム上の違いを区別できるマーカーが作成できるかどうかについて検証中である。また、沖縄本島と石垣島では、本州や他島とは異なり、共生細菌ボルバキアに100%の個体が感染しており、ミトコンドリアDNAも大きく異なることが分かったが、核DNAの多様性についてGRAS-Di解析を行ったところ、石垣島の個体は、他の集団とは大きく遺伝的組成が異なり、沖縄本島の個体は本州や石垣島以外の集団と大きく異ならない結果となった。このことは、過去にボルバキアによる細胞質の選択的スイープが起きたことを示している。また交配実験により、石垣島の個体が持つボルバキアは細胞質不和合を引き起こすことが明らかとなり、選択的スイープが起きたことの強い状況証拠となった。
|