研究課題/領域番号 |
22K19360
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分46:神経科学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川口 真也 京都大学, 理学研究科, 教授 (00378530)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | シナプス / 軸索 / 活動電位 / 受容体 / イメージング / パッチクランプ / 可塑性 / 興奮伝導 / 長期可塑性 / アンケージング / 膜興奮性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、軸索での情報の流れが多方向化する新規可塑性を同定し、その分子機構を解析する。特に、記憶・学習に寄与するシナプス可塑性が顕著に起こる小脳プルキンエ細胞に焦点をあてて、軸索の電気的活動を捉える膜電位蛍光イメージングと直接パッチクランプ記録を駆使し、軸索終末が活動依存的に機能変化して入力を受容する能力を獲得する分子メカニズムと機能的な役割を明らかにする。
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研究実績の概要 |
神経細胞では、樹状突起→細胞体→軸索へと1方向性に情報が流れると考えられてきた。本研究では、それが神経活動依存的に長時間にわたり多方向化する、という斬新な長期可塑性を同定してそのメカニズムを解明することで、神経回路の作動原理の基礎的理解を革新することを目指している。 本年度、情報出力の場である軸索終末が情報を受容する能力を可塑的に獲得することで、細胞での情報の流れがダイナミックに変化する可能性について、独自改良してきた膜電位イメージングプローブ、微細な軸索終末からの直接パッチクランプ記録、405 nmレーザー光の点照射による局所的な化学物質活性化など、独自性の高い技術を統合適用する優位性を駆使した実験を小脳の初代分散培養やスライス標本を用いて行った。そうした実験から、プルキンエ細胞の軸索では、神経修飾物質により細胞内で濃度上昇するcAMPにより活動電位の伝導速度が変化して情報が標的細胞に伝わるタイミングが変動すること、新しいタイプのカナビノイド受容体が伝達物質放出をこれまでに知られていない新しいメカニズムにより抑制するという新規の現象を見出すことに成功した。現在そのメカニズムに関して、詳細を分子レベルで追究して理解が進展しつつある。 また、プルキンエ細胞だけでなく、小脳皮質の抑制性介在ニューロンの軸索終末からの直接パッチクランプ記録にも成功し、そこでのユニークな情報伝達の修飾メカニズムを同定することにも成功している。これら得られた知見について、一部は現在論文公刊へ向けて改訂中で、また複数の学会において発表済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの軸索から直接パッチクランプ記録する実験から、カナビノイドや神経修飾物質などの受容体が軸索に発現し、小脳プルキンエ細胞においては活動電位や伝達物質放出が動的に調節されることを直接示すデータを得ている。また、プルキンエ細胞において樹状突起で長期シナプス可塑性が起こることに伴い、軸索側で伝達物質受容体の発現が変化するとともに、軸索の膜興奮性を支配するイオンチャネルの局在パターンも長期にわたり変化することも明らかになりつつある。それに加えて、プルキンエ細胞に限らず、小脳皮質の抑制性介在ニューロンの軸索終末からの電気生理学的記録にも挑戦し、そこでは樹状突起や細胞体へのシナプス入力が、減衰しつつも出力部位である軸索終末まで到達し、それが終末でのCa2+流入や伝達物質放出を柔軟に変化させる、という直接的な証拠を得ることに成功した。こうした研究の進展は、当初計画通り、あるいはそれを部分的に超えており、研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得た知見から、軸索での活動電位伝導や伝達物質放出を支配するメカニズムに関して、かなり安定であると考えられてきた要素についても、動的に変化し得ることが分かってきた。そこで、電気生理学的な直接記録、分子生物学的な操作、および蛍光イメージング技術を相補的に適用して、軸索における情報処理機構の柔軟性を包括的に解析することを企画している。そして、安定な情報伝達素子としてのこれまでの軸索についての捉え方を改変し、入力ー出力を柔軟に入れ替えながら神経細胞のしなやかな情報処理能力を具現化する重要な要素としての軸索のあり様を実証すべく、精密な実験を積み重ねることにより研究を展開する。
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