研究課題/領域番号 |
22K19363
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分46:神経科学およびその関連分野
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
小林 和人 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (90211903)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 化学遺伝学 / 神経活動促進 / イオン透過型受容体ファミリー / 線条体 / 運動制御 |
研究開始時の研究の概要 |
昆虫の興奮性イオン透過型受容体 (ionotropic receptors/IRs) を利用して目的の神経細胞種の活動を選択的に促進させる化学遺伝学技術 (IR-mediated neuronal activation/IRNA) では、フェニル酢酸に高親和性を持つIR84a受容体とその共役受容体であるIR8a受容体からなる複合体を利用する。本研究では、プロピオン酸に反応するIR75aとIR8a複合体を利用し、線条体ニューロンをモデルとして新規のリガンドによるイオン透過型化学遺伝学の技術を開発するとともに、異なるリガンドを用いて複数の神経細胞種の機能を時間・空間的により精密に制御するIRNA技術を確立する。
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研究実績の概要 |
我々の研究グループは、これまでに昆虫の興奮性イオン透過型受容体 (ionotropic receptors/IRs) を利用して目的の神経細胞種の活動を選択的に促進させる新規の化学遺伝学技術 (IR-mediated neuronal activation/IRNA) を開発し、フェニル酢酸に高親和性を持つIR84a受容体とその共役受容体であるIR8a受容体からなる複合体を利用した。本研究では、新規のリガンドとしてプロピオン酸に反応するIR75aとIR8a複合体を利用し、線条体ニューロンをモデルに研究を進め、異なるリガンドを用いて複数の神経細胞種の機能を時間・空間的により精密に制御するIRNA技術を確立することを目的とした。2022年度に、培養細胞系におけるIR75a/IR8a複合体の反応性の検証するために、IR75aのシグナルペプチド推定領域をヒトカルシニューリンのシグナルペプチドに置換し、EGFPとIR75a成熟タンパク質を融合し、2Aペプチドを介してHAタグを付加したIR8aに連結したベクターの培養細胞での発現を免疫組織化学により確認した。2023年度は受容体の発現量をさらに向上させるために、内在のシグナルペプチドを持つIR75a(V5タグをC末端に連結)と2Aペプチドを介してHA-IR8aを連結したベクターを作製し、培養細胞での発現を試みた。さらに、リガンド結合と細胞応答を簡便に検出するために膜電位測定キットを用いたELISAシステムを確立し、プロピオン酸に対する反応性の解析を開始した。また、2024年度に作成する予定であった、間接路にFlpを発現する遺伝子改変ラットA2AR-Flp系統を先立って樹立し、このラットの線条体にFlp-FRT系に依存してIR84a/IR8aを発現するベクターを注入することにより間接路細胞特異的に受容体の発現することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞系におけるIR75aとIR8aを共発現する実験系の構築を目指し、IR75aについてはシグナル配列の推定領域を複数種類選び、ヒトカルシニューリンのシグナルペプチドを置換することによって、培養細胞に導入し、両者の受容体の発現を検出した。しかし、この発現量はIR84aに比較して弱いため、さらに発現量をあげることが望ましいと考え、IR75aの内在のシグナルぺプチドを利用し、これとIR8a受容体を共発現するベクターを作製し、培養細胞への導入を進めている。さらに、リガンド結合および細胞応答を簡便に測定するためのELISAシステムを確立し、PrAcによる反応性の解析を進めている。一方、線条体間接路にFlp-FRT系に依存してIR84a/IR8aを発現する実験系は計画よりも進んでおり、Flpを発現する遺伝子改変ラットA2AR-Flp系統の樹立に成功し、このラットの線条体にFlp-FRT組み換えを介して間接路細胞特異的にIR84a/IR8aを発現することを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、新しく作成した発現量を高めたベクターを利用して、IR75aとIR8aの共発現を誘導し、プロピオン酸(PrAc) に対する反応性を確認した後、Cre-loxP系に依存して、IR75a/IR8a複合体を発現するベクターを構築し、線条体直接路細胞にCre組換え酵素を発現する遺伝子改変ラット系統 (既に作成済み:Tac1-Cre)の線条体に注入し、受容体の共発現を確認する。ラット脳のスライスを作製し、PrAc 反応性(発火頻度と膜電位の変化)を解析する。また、ベクターを注入したラットの線条体に PrAc を注入し、神経終末領域(黒質)でのγ-アミノ酪酸 (GABA)の分泌をマイクロダイアリシスにより解析する。さらに、2種類の組み換え反応系を持つ遺伝子改変ラットを作製し、同一個体において、PhAcおよびPrAcを用いて異なる細胞を活性化する技術への発展を試みる。
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