研究課題/領域番号 |
22K19366
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分46:神経科学およびその関連分野
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
浅川 和秀 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 特命准教授 (30515664)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | 解糖系 / ALS / 運動ニューロン / ミトコンドリア / ピルビン酸 / 乳酸 / ATP / 神経変性 |
研究開始時の研究の概要 |
神経変性疾患の一つである筋萎縮性側索硬化症(ALS)では、脳からの運動指令を筋肉に伝達する神経細胞(運動ニューロン)が変性によって失われる。ほとんど全てのALSでは、RNA/DNA結合タンパク質TDP-43が異常な凝集体を形成することが知られているが、我々は、熱帯魚ゼブラフィッシュの運動ニューロンのTDP-43の機能に異常が起こると、細胞内のATPのレベルが低下することを見出した。本研究では、細胞内ATPの供給路の一つである解糖系を活性化させて細胞内ATPレベルを上昇させることで、TDP-43の細胞毒性を緩和できるかを検証し、新たなALS治療戦略としての解糖系の可能性を探求する。
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研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、脳からの運動指令を筋肉に伝達する神経細胞(運動ニューロン)が変性によって失われ、全身の筋力が致死的に衰退する難病である。我々は、ほとんど全てのALSで運動ニューロンに異常な凝集体を形成するRNA/DNA結合タンパク質TDP-43に着目し、熱帯魚ゼブラフィッシュのTDP-43に様々な様式の摂動を加えると、運動ニューロンの細胞内ATPレベルが著しく低下するという共通点を見出した。本研究はこの結果に基づき、運動ニューロンの細胞内ATPレベルを上昇させる新しい遺伝学的手法を開発し、細胞内ATPの供給によってTDP-43の細胞毒性を抑圧できるか検証することを目的とした。 ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化が神経細胞における主要なATP供給路であることから、ミトコンドリア内のカルシウムイオン濃度をイメージングによって解析するゼブラフィッシュ系統を作製した。この系統を用いて、細胞サイズが大きい運動ニューロンほど、ミトコンドリア内のカルシウム濃度が低いことを見出した。また、運動ニューロンの解糖系の活性を評価する為に、解糖系の最終産物であるピルビン酸と乳酸をそれぞれ蛍光イメージングによって検出する為のゼブラフィッシュ系統を樹立した。さらに、解糖系の代謝産物である1,6-bisphosphateを蛍光イメージングによって評価する為のトランスジェニック系統を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
運動ニューロンにおけるミトコンドリア内のカルシウムイオン濃度を評価し、大きい運動ニューロンほどミトコンドリア内のカルシウムイオン濃度が低いことを見出した。ALSにおいて脆弱性を示す大きい運動ニューロンにおいて、ミトコンドリア機能が低下していることを示唆する結果を得ることができた。大きい運動ニューロンにおけるミトコンドリアの機能低下に対する、解糖系の活性の関係性を探索する為に、解糖系の代謝産物を蛍光によってイメージング可能なトランスジェニック系統を得た。次年度において、運動ニューロンにおける解糖系活性を評価する為の準備が整った。また、運動ニューロンのシングルセルトランスクリプトーム解析のプロトコルの構築に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
運動ニューロンのシングルセルトランスクリプトーム解析から同定される解答系遺伝子の操作によって、運動ニューロン内の細胞内ATPレベルを上昇させることができるか否か、を検討する。また、そのような操作によって、 TDP-43の毒性を緩和することができるかを検証する。
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