配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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研究実績の概要 |
リゾホスファチジルセリン (LysoPS) は細胞間の情報伝達を担う脂質メディエーターの一種であり, 生体内ではホスファチジルセリンのアシル基の一本が切断されることで産生される。LysoPSは一本のアシル基とリン脂質頭部にセリンを持つ脂質である。LysoPSはGPR34と呼ばれる受容体を活性化することで免疫系のはたらきを調節するため, とくにがんや感染症への対策として研究が進められている。しかし, 真にGPR34のリガンドであるのかについては反論があり, LysoPSが分子レベルでどのようにGPR34を活性化するのかについては不明だった。 そこで私たちはLysoPSがなぜGPR34を活性化できるのか解明すべく, その立体構造を決定した。GPR34のリガンド結合ポケットは, リガンドの頭部を認識する親水性ポケットと, 炭化水素基を収容する疎水性ポケットから構成されていた。親水性ポケットでは, LysoPSのセリン部分は極性アミノ酸残基との水素結合を形成して密に認識されていた。このセリン特異的な相互作用が, GPR34がさまざまな脂質の中でLysoPSのみを受容しシグナルを伝える理由であると考えられる。一方炭化水素基は, 4番目と5番目の膜貫通ヘリックス注)によって形成された溝にある疎水性ポケットに収容されていた。GPR34のリガンド結合ポケットは,この溝を介して細胞膜側(横向き)に開いていた。LysoPSは細胞間接着を介して膜上を移動すると考えられおり,実際に, LysoPS産生酵素(PS-PLA1)を作用することで, GPR34は外からLysoPSを加えなくても活性化する。このことから, 細胞外側からの経路ではなく、細胞膜側からのLysoPSのアクセスがGPR34の機能に重要であることがわかり(図,右下), 受容体研究に大きな一石を投じる成果となった。
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