研究課題/領域番号 |
22K19388
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 城西国際大学 |
研究代表者 |
杉山 雄一 城西国際大学, イノベーションベース, 特別栄誉教授 (80090471)
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研究分担者 |
千葉 康司 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (30458864)
土谷 聡耀 城西国際大学, イノベーションベース, 客員特定研究員 (00975401)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 生理学的薬物速度論(PBPK)モデル / 非線形薬物動態 / 標的介在性薬物動態(TMDD) / 薬物動態学 / 医療薬剤学 / 薬理学 / コンピューター科学 / レギュラトリーサイエンス |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らの数理モデルを用いた予備解析によると、臨床データを基に分子標的への飽和性結合の寄与を評価できる低分子化合物の存在を見出した。 この高い予測性は特に第I相臨床試験の用量漸増過程の初回投与量にマイクロドースを用いることにより、分子標的占有率の時間推移をより確率高く予測でき、臨床で治療の期待できる投与量を予測できる可能性を示した。 TMDDを示す多くの低分子薬物について検証を追加することにより、単なる薬物動態試験、用量容認試験としてとらえられてきた臨床第一相試験の意味を抜本的に変え、医薬品開発に大きな変革を与えることが期待できる。
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研究実績の概要 |
生理学的薬物速度論(PBPK)モデルに薬理標的への結合過程を追加することで、低分子医薬品の薬物動態と薬効を正確に予測する新たな手法の確立を目指す。以下のように研究を進めている。 Target Mediated Drug Disposition(TMDD)を示す低分子薬としてボセンタン(BOS)、テルミサルタン(TLM)、ワルファリン(WAR)、複数のアンジオテンシンII酵素阻害剤(ACEIs)について解析している。BOS, TLM, ACEIsはほぼ全臓器の血管内皮細胞に、WARは肝臓実質細胞内のみに薬理標的蛋白が存在する。これら化合物のPBPKモデルは、文献から入手可能な in silico、in vitro、および臨床PKデータに基づいて構築した。青木康憲博士(現、アストラゼネカ社(スエーデン))と共同で開発したCluster Gauss Newton Method (CGNM)は、in vivo 臨床データを基にtop-downあるいはmiddle-out 解析を行い薬物動態パラメータや薬理標的結合パラメータを算出可能な方法である。CGNMを使用して、広い投与量範囲にわたって非線形PKプロファイルを示す論文データにあてはめ計算を行うことによりパラメータを最適化した。BOS, WARについては、血中薬物動態プロファイルのみに基づいて最適化されたパラメータセットのみで、in vivo 薬理標的占有率の時間推移を記述できた。低用量からの薬物動態データを含めると、薬理標的結合関連パラメータの推測性が上昇することもわかった。TLMについても、同様に解析を進め、薬物動態の非線形性が、肝臓取り込みトランスポータ OATP1B3 の飽和のみならず、受容体であるアンジオテンシンII受容体結合の飽和も少なくとも一部、非線形薬物動態に関わることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TMDDは高親和性の薬理標的と相互作用することが多い生物製剤 (抗体医薬品など) ではよく知られているが、低分子薬物の薬物動態パラメータに薬理標的結合が影響を与える必要条件や、どのような臨床試験デザインが標的結合の影響を評価するのに適切かといったことが不明であった。このギャップを埋めることができれば、新薬候補化合物の薬物動態、薬効を正確に予測するための重要な情報を提供でき、意思決定プロセスを支援することで、医薬品開発における失敗率を低減できると考えられる。 この方針のもとに、BOS, WARについて解析を加えたところ、薬理的標的の発現量が十分に大きいこと、また非特異的結合の少ないことが必要条件であることが示された。また、臨床試験デザインとして、標的結合が飽和するフリー濃度(Kd)より充分低い濃度を示す投与量が最低2つあることが望ましいことが示された。TLMについても、CGNMを用いることによりTMDDの関与を実証することができた。これらのことを考慮すると、“おおむね順調に進展している” と結論することができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後さらに ACE およびsteroid 5α reductase (5αR)が標的蛋白となる薬物を用いて以下の解析を加える予定である。 (1)ACE阻害剤(ACEIs): 血漿中濃度推移から標的蛋白ACEの占有率を予測することの可能性が予備的な検討により cilazapril において示された。さらに、trandolaprilでは、活性代謝物 trandolaprilat のACEへの結合の飽和による非線形薬物動態が本化合物の非線形動態の原因になりえることが示唆された。ACE には膜結合型と溶解型が存在するため、これらの比率を考慮した解析をCGNMで行うことにより最終的な結論を導きたいと考えている。 (2)5α-R 阻害剤: Finasteride (FIN)((5aR2選択的阻害), dutasteride (DUT)(5aR1/2の両酵素を阻害)の両化合物において非線形薬物動態が示されている。これら阻害剤の特徴として、標的蛋白質と結合した後に蛋白質の分解に導くことがあげられる。従って、標的蛋白質の生合成と分解を組み入れたモデル解析が必要になる。この酵素は、内因性のステロイド(Dihydrotestosterone(DHT))の生合成を阻害するために、DHT は本酵素活性の良いバイオマーカーになることが知られている。非線形PK及び酵素阻害からの遅い回復過程を定量的に説明するPBPK-PDモデルを構築することを試みている。未知パラメータの数が大量になるために、CGNMを用いても解析が容易でなく、種々の試行錯誤を繰り返している。
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