研究課題/領域番号 |
22K19389
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
古川 良明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (40415287)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | スーパーオキシドディスムターゼ / 分子認識 / タンパク質ミスフォールディング |
研究開始時の研究の概要 |
神経変性疾患患者の検体に含まれる極微量の異常タンパク質を具体的なターゲットとして設定し、それらをファージで高感度に検出することを試みる。多くの神経変性疾患では、症状が顕在化する前に、血液・脳脊髄液に含まれるタンパク質の種類、濃度、あるいは、その立体構造に変化(オリゴマー化・凝集)が生じる。よって、病因タンパク質の量的・質的変化をファージ増幅法によって高感度検出することで、将来的には神経変性疾患の早期診断法開発につなげたい。
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研究実績の概要 |
変異型の銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼ(SOD1)は、遺伝性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症原因として考えられており、運動ニューロン内に変異型SOD1が凝集して封入体を形成していることが知られている。アミノ酸置換による変異型SOD1の凝集メカニズムとして、ホモ二量体として存在するSOD1の単量体化が引き金となって凝集し、運動ニューロンに毒性を発揮しているのではないかという提案がある。しかし、SOD1ホモ二量体の解離定数は非常に小さく、単量体化するのはごく一部であることから、その検出が極めて困難であった。そこで、京都府立大学の田中俊一准教授と協力し、単量体SOD1に特異的に結合する人工タンパク質(モノボディー)を開発した。本課題で開発したモノボディーMb(S4)は、正常なSOD1ホモ二量体とは結合せず、単量体化したSOD1のみと結合する高い選択性を持っている点が大きな特徴である。一方で、開発したモノボディーと単量体型SOD1との親和性は低く、プルダウン法などの手法によって単量体型SOD1の検出を行うことはできなかったものの、クロスリンク試薬を活用することで、モノボディー・単量体型SOD1の複合体を検出することができた。実際、変異型SOD1を発現させた培養細胞や出芽酵母・大腸菌から、単量体SOD1を検出することにも成功した。以上より、親和性に課題が残っているものの、単量体型SOD1のみを特異的に認識することができる分子の開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、神経変性疾患の早期診断を指向した構造異常型タンパク質の極微量検出を目的としている。本年度までに、単量体化したSOD1という構造異常型タンパク質を特異的に認識する分子(モノボディー)を開発に成功した。しかし、単量体型SOD1とモノボディーとの親和性が低く、モノボディーによる単量体型SOD1の検出にはクロスリンクといった手法を用いる必要があった。また、生体試料に含まれる単量体型SOD1の極微量検出には至っておらず、今後の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までにモノボディーに着目することで単量体型SOD1を特異的に認識する分子の開発を進めてきたが、認識特異性には優れていたものの、親和性の低さが問題であった。そこで、ランダム変異などを利用して、単量体型SOD1の極微量検出を目指して親和性の向上を図る。また、モノボディー以外にも他のタンパク質骨格に着目し、異常な構造を有したSOD1を特異的かつ強力に認識できる分子の開発を進める。
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