研究課題/領域番号 |
22K19390
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
石垣 靖人 金沢医科大学, 総合医学研究所, 教授 (20232275)
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研究分担者 |
中村 有香 金沢医科大学, 総合医学研究所, 助手 (00565632)
小屋 照継 金沢医科大学, 医学部, 助教 (70807164)
安本 和生 金沢医科大学, 医学部, 教授 (90262592)
堀江 哲寛 金沢医科大学, 総合医学研究所, 助教 (00965139)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 抗がん剤 / mRNA分解経路 / RBM8A / 突然変異 |
研究開始時の研究の概要 |
幸い肺がんなどではEGFRの多数の変異に対応する治療薬や併用プロトコールが続々と開発されている。それでも、なお特異的な標的を目指した化学療法に厳然とした限界がある以上、新しいコンセプトの治療薬シーズの開発は常に必要とされている。そこで、欠損した遺伝疾患の患者が生存できて成人できるY14遺伝子の阻害に着目した。Y14に関するsiRNAの報告は多数あるが、化合物ライブラリーからのスクリーニングに成功すれば、新規の抗がん剤シーズとして有望であることが期待される。
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研究実績の概要 |
腫瘍におけるゲノム中の突然変異の蓄積量は特に肺がんや悪性黒色腫にて高値を示す傾向があり、ネオアンチゲンとして大量に発現することで、免疫チェックポイント阻害薬が奏功しやすくなる。このような免疫療法の標的分子は蓄積した変異由来のタンパク質であるが、ゲノムに変異が蓄積すれば翻訳の鋳型となるmRNAの配列にも多様な変異が蓄積している。特にナンセンス変異を持つmRNAは細胞内でNMD(nonsense mediated mRNA decay)と呼ばれる経路により選択的に分解されるために翻訳に至らず、通常変異型タンパク質はほとんど発現していない。一方で、NMDを薬剤などで人為的に阻害すると多種多様な変異タンパク質を生じることが知られている。このため、腫瘍細胞においてNMDを阻害することは、異常なタンパク質の生成を引き起こし、細胞内恒常性を破綻させると共に、免疫系に捕捉されやすくなり腫瘍細胞の死滅を誘導できる。NMD誘導に関わる細胞内因子は酵母やショウジョウバエを利用した研究から同定が行われており、スプライシング因子とカップルしてキャップ構造の切断を経てmRNAの分解を誘導することが知られている。このため本研究では、特定の変異遺伝子を狙った従来の分子標的薬とは全く別の原理に基づき、ゲノム全体に蓄積した変異を標的とした非特異的な抗がん剤シーズの開発を目指す。NMDの阻害剤、化合物ライブラリーおよびsiRNAライブラリーを利用して、培養している腫瘍細胞への致死効果を効率よく誘導できる系を確立し、より効果的かつ腫瘍細胞選択的な増殖抑制とアポトーシスを誘導させることを試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NMDには多数の因子が関与することが知られており、Upf-1,2,3あるいはSMG-1,5,6,7などと呼ばれてきた。本申請において標的とするY14はMagohと呼ばれる因子とともにNMDに寄与している。これまでに各因子のノックダウンやノックアウト系が多数作製されており、多くの場合には細胞死や胎生致死であることがよく知られている。また、化合物によるNMD阻害の研究は古くから知られているが、多くの場合はシクロヘキシミドのような毒性の強い翻訳の阻害剤や転写阻害剤が使用されており(研究代表者ら、2001年など)、2007年のLejeuneらのグループの報告、Gardnerらの報告(2011年)、Ohnoらの未発表成果(2016年)が知られているものの、いまだに安全性に優れた抗がん剤シーズとしての成果は報告されていない。スプライシング、NMDの阻害剤、化合物ライブラリーおよびsiRNAライブラリーを利用して、培養している腫瘍細胞への致死効果を効率よく誘導できる系を確立する。これまでNMD関連因子を標的としたノックアウトマウスなどは胎生致死で生まれてこないケースが多いことから、その阻害薬はかなり正常細胞に対する毒性が強いことが見込まれてきた。このため、多様な誘導方法を利用することで毒性を回避できる系を見出すためにNMDの阻害剤、化合物ライブラリーおよびsiRNAライブラリーを利用して、培養している腫瘍細胞への致死効果を効率よく誘導できる系を確立して検証を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度検証実験を行なって至適化された細胞処理条件(致死条件)において、細胞内トランスクリプトームにおける変化をシーケンスレベルで明らかにし、狙った通りにNMDが阻害されてNMD標的遺伝子の発現変動が現れていること、さらには変異を持つmRNA量が特異的に増大していること、およびそこから生じているネオアンチゲン分子を細胞ごとに明らかにする。特に細胞致死効果が、培養腫瘍細胞においてどのような機序で細胞致死効果に繋がるのかを処理時間を追って明らかにする。これにより新たな細胞死誘導因子の同定にもつながることが期待される。次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析から明らかになる応答パスウエイとしては、アポトーシス関連因子の変動が予想されるために、これらのパスウエイについてはタンパク質レベルにて解析を実施する。次世代シーケンサーによる解析については、研究代表者が副センター長を務める金沢医科大学病院ゲノム医療センターに次世代シーケンサー装置一式が整備され、専任のバイオインフォマテシャンも常駐しているために速やかに実施できる体制が整っている。培養細胞での実験で最適化された腫瘍細胞の処理条件をインビボで検討する。マウスまたはヒト由来腫瘍細胞をマウスに移植し、上記実験で得られたシーズを投与して腫瘍の縮小により抗腫瘍効果を解析し、免疫系細胞の集積を免疫染色により検証する。さらに、企業との提携を模索し知財化を図るとともに、ライセンスアウト先を探すことになる。
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