研究課題/領域番号 |
22K19392
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
|
研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
北川 裕之 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (40221915)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
|
キーワード | コンドロイチン硫酸 / プロテオグリカン / 加齢性変化 / タウタンパク質 / 未病 / タウオリゴマー / サルコペニア / サテライト細胞 / 疾患糖鎖 / グライコミクス |
研究開始時の研究の概要 |
近年、「未病状態(疾病前状態)」や「前老化状態(加齢性変化)」は健康・医療戦略を考える上で重要な概念になっている。健康と病気、成熟と老化の間は連続しているため、「未病状態」や「前老化状態」のコントロールの仕方で、病気の発症しやすさや老化スピードに個人差が生じる。本研究では、未病状態を生み出す原因として、糖鎖の生合成システムの変化とその異常により合成された疾患関連糖鎖に着目し、細胞が合成する糖鎖の変化と疾患に関連する生体ネットワーク遺伝子の発現変動を組み合わせることで、新たな視点から病気発症の原因解明を目指す。
|
研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)の病理所見として、タウタンパク質のコンフォーメーション変化を経て形成される凝集体による神経原線維変化がある。神経原線維変化が脳の広範囲に拡大することがADの認知機能低下と相関することが知られているが、これは異常タウタンパク質のオリゴマーが凝集核となり細胞間を伝搬することがADの病態を制御すると考えられている。タウオリゴマーの細胞間伝搬には、細胞表面や細胞外に存在するプロテオグリカンに付加したグリコサミノグリカン(GAG)鎖が関与する可能性が示唆されているため、GAGによるタウタンパク質の凝集、およびタウオリゴマーの細胞間伝播の分子機構について調べた。まず、GAG、特にコンドロイチン硫酸に着目し、タウオリゴマーがコンドロイチン硫酸の硫酸化パターン依存的に結合性を示すかどうかについて in vitro のアッセイ系を用いて調べた結果、硫酸化されていないコンドロイチンに対してより高い結合性を示し、4位が硫酸化されたコンドロイチン硫酸あるいはヘパリンにも結合性を示した。コンドロイチン硫酸の硫酸化を遺伝子レベルで制御しタウオリゴマーの細胞内取り込みに与える影響を細胞レベルで調べた結果、マウス神経芽細胞腫由来細胞株(Neuro-2a)において、4位の硫酸化により取り込みは促進し、6位の硫酸化により抑制されることが明らかになった。 以前、タウオパチーモデルマウスにコンドロイチン硫酸に対する抗体(mAb Cat316)を投与すると認知機能の回復が見られ、mAb Cat316によって認識されるコンドロイチン硫酸はコンドロイチンN-アセチルガラクトサミン転移酵素-1(ChGn-1)によって生合成されることを明らかにしている。ChGn-1を発現させたNeuro-2aを用いてタウオリゴマーの細胞内への取り込みを調べた結果、ChGn-1の発現レベルに応じて取り込みが促進された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タウオリゴマーの取り込みにはLRP1が鍵受容体として機能することが報告されているが、今回実験に用いたマウス神経芽細胞腫由来細胞株(Neuro-2a)におけるコンドロイチン硫酸依存的なタウオリゴマーの取り込みにLRP1は関与しない可能性が示唆され、計画変更を行ったため少し進捗が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
コンドロイチン硫酸依存的なタウオリゴマーの取り込みは既存の受容体を介さないことがわかったため、この機構に関わるプロテオグリカンを新たに同定し、コンドロイチン硫酸によるタウオリゴマーの取り込み機構を明らかにする。
|