研究課題/領域番号 |
22K19401
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分48:生体の構造と機能およびその関連分野
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
白川 英樹 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (40241070)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | カルシウムシグナリング / 細胞内シグナル伝達 / オプトジェネティクス |
研究開始時の研究の概要 |
種々の細胞機能や細胞応答は二次メッセンジャーと呼ばれる細胞内の小分子によって調節されている。本研究では、主要な二次メッセンジャーの1つであるイノシトール三リン酸(IP3)が関わる細胞機能の研究手法として、細胞内のIP3濃度を光照射で自在に増減させることができる実験系の開発を行う。具体的には、光応答性を付与したIP3産生酵素と分解酵素を作成し、それらを蛍光性IP3センサーとともに細胞に導入したうえで、IP3濃度をモニターしながら照射する光の波長と強度を調節して任意のレベルにクランプする。またこの実験系を用い、ほ乳類卵受精時の細胞内カルシウムイオン応答におけるIP3の役割の詳細を明らかにする。
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研究実績の概要 |
光応答性イノシトール三リン酸(IP3)合成酵素については、ホスホリパーゼCゼータ(PLCz)に光感受性ドメインLOV2に付加したタイプとして、これまでのX-Yドメイン間に挿入したものに加え、EFドメイン内、EF-Xドメイン間、Xドメイン内、Yドメイン内、Y-C2ドメイン間、C2ドメイン内に挿入したものを作成した。このうちY-C2ドメイン間に挿入したもので、青色光照射依存的なIP3産生活性の上昇が示唆された。またこれまでに赤色光依存的活性化を確認していたPhyB/PIF6を付加したタイプのものについて、細胞膜局在化配列を付加することで活性オン・オフの鋭敏化を試みたが、有意な改善は見られなかった。一方、光活性化型IP3分解酵素については、IP3-5-ホスファターゼA(IPP5A)をベースとして用い、タンパク質構造安定性の予測計算に基づいて分割位置を決定した上で、分割型および循環置換型INPP5Aに光感受性二量体化タンパク質pMag/nMagを付加したものを数種類作成したが、これまでのところ光照射依存的なIP3分解活性の有意な変化は確認できていない。 蛍光性IP3センサーについては、I型IP3受容体のIP3結合部位の両端に蛍光タンパク質CFPとYFPを付加した従来のFRET型センサータンパク質に対し、CFPとYFPの二量体形成能を強化または弱化させる変異を導入した結果、IP3濃度変化に伴うFRETシグナル変化率が有意に向上したものが得られ、細胞内の微小なIP3濃度変化も捉えられることを確認した。光応答性IP3産生酵素・分解酵素との同時使用において必要なIP3センサー性能と波長特性を得るため、FRETペアとしてTagGFP2とTagRFPを用い、その一方をIP3結合部位内に挿入した新たなタイプのセンサーについて、タンパク質構造予測に基づく設計を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
光応答性酵素の作成に関しては、IP3合成酵素(PLCz)と分解酵素(IPP5A)のそれぞれについて、光センサータンパク質の連結による光応答性の付与を多くのパターンで試みたが、いずれも目標であるIP3濃度の迅速制御のために必要な鋭敏な光照射依存的活性変化を示すものは得られていない。これは光センサータンパク質のパートナーとの結合の速度や親和性の問題が原因である可能性がある。 蛍光性IP3プローブについては、C/Y-FRET型プローブの検出感度およびシグナル変化率の改善はできたものの、IP3濃度制御に必要なフィードバックのためのセンサーには十分ではなく、また実用的なG/R-FRET型プローブの開発にも至っていない。G/R-FRETペアについては新たな分子設計に基づいたプローブの作成を進めているが、同時にC/Y型において有効性が示された蛍光タンパク質の二量体形成能の検討も必要と考えられる。 細胞内IP3濃度測定・制御のための光学系については、従来型蛍光顕微鏡と励起光・蛍光波長切替装置を用いたシステムの構築をハード/ソフト両面で進めているが、実用に向けた問題点の検討をするには上記分子ツールの開発が不可欠となる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 光応答性IP3産生酵素の作成:分割型または循環置換型PLCzに付加する光センサータンパク質の種類や位置、リピート数について再検討する。また、PLCzを基質を含む膜近傍に局在させるため、複数種の細胞膜局在配列の付加を検討する。 (2) 光応答性IP3分解酵素の作成:切断箇所を変えた複数の分割型または循環置換型INPP5AにpMag/nMagあるいはPhyB/PIF6を付加し光応答性の付与を試みる。 (3) 蛍光性IP3センサーの改良:G/R-FRET型IP3センサーについて、蛍光タンパク質の挿入位置を変えたものや、二量体形成能に影響する変異を加えたものを作成し、それらの性能を検証する。 (4) 光計測・光照射制御光学系の構築:蛍光計測に基づくIP3濃度測定から光照射によるIP3産生・分解速度調節へのフィードバック制御を可能とする光学系について、有効な分子ツールが得られ次第、従来型蛍光顕微鏡ベースのシステムでの問題点を検討して改良するとともに、共焦点レーザー顕顕微鏡ベースのシステムの構築を目指す。
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