研究課題/領域番号 |
22K19404
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分48:生体の構造と機能およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金井 好克 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (60204533)
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研究分担者 |
大垣 隆一 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (20467525)
岡西 広樹 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70792589)
徐 旻恵 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (20910201)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | アミノ酸 / 受容体 / 輸送体 / シグナル情報伝達 |
研究開始時の研究の概要 |
アミノ酸は、シグナル分子として、タンパク質合成をはじめとする様々な細胞機能を制御します。従来の研究では、細胞内のアミノ酸を感知する「細胞内センサー」が報告されてきました。本研究では、これまでに想定されていなかった、細胞外のアミノ酸を感知する「細胞膜センサー」を同定してその分子機能を解明します。これにより、2つの異なるアミノ酸感知システムが、細胞機能の制御を行うという、細胞内シグナル情報伝達の新しい原理が提示されます。また、細胞膜センサーに作用する化合物(薬)の開発は、アミノ酸シグナル系の破綻が関与する糖尿病、癌、肥満、メタボリック症候群などの疾患の治療へと繋がる可能性を有しています。
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研究実績の概要 |
アミノ酸は、シグナル分子としてタンパク質合成をはじめとする様々な細胞機能を制御するが、アミノ酸がシグナル分子として機能するためには、細胞が何らかの機序でアミノ酸濃度をモニターする必要がある。従来の研究では、細胞内のアミノ酸を感知する「細胞内センサー」が報告されてきたが、本研究では、これまでに想定されていなかった、細胞外のアミノ酸を感知する「細胞膜センサー」を同定してその分子機能を解明することを目的とする。これにより、2つの異なるアミノ酸感知システムが、細胞機能の制御を行うという、細胞内シグナル情報伝達の新しい原理が提示される。さらに、細胞膜センサーに作用する薬物の開発は、アミノ酸シグナル系の破綻が関与する糖尿病、がん、肥満、メタボリック症候群などの疾患の治療へと繋げる方向で可能性を探求していく。これまでの同定されている細胞内センサーは、細胞内のアミノ酸に応答してセリン/スレオニンキナーゼ複合体mTORC1へとシグナルを送るものであったが、今回、特定の細胞が、細胞内センサーに加えて、細胞膜上で細胞外のロイシン濃度を感知する細胞膜センサーを有することを見出した。この細胞膜センサーも、細胞内センサーと同様にmTORC1へとシグナルを送ることが明らかになった。さらに、細胞内センサーは活性化せず、細胞膜センサーを介してmTORC1を活性化する特異的アゴニストを見出した。この特異的なアゴニストの発見は、細胞膜センサーの存在に確証を与えるものである。本研究により、細胞膜ロイシンセンサーの分子実体を解明し、そのシグナル情報伝達機構を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞は、アミノ酸量を感知して転写・翻訳を制御するため、アミノ酸自身がシグナル分子として機能しているが、これまでに細胞内アミノ酸濃度を感知してmTORC1へとシグナルを送る細胞内センサーであるロイシンセンサー等が同定されている。今回、細胞外のアミノ酸を感知する「細胞膜センサー」の存在を支持する事実として、ほとんどの細胞株ではロイシンによるmTORC1活性化が細胞へのロイシン取り込みを担うアミノ酸トランスポーターの阻害薬により抑制されるのに対して、特定の細胞では、ロイシンによるmTORC1活性化が細胞へのロイシン取り込みを担うアミノ酸トランスポーターの阻害薬により抑制されないことが明らかになった。これは、その細胞では、ロイシンによるmTORC1活性化は、細胞内センサーによるのではなく、細胞外のアミノ酸を感知する新たな細胞膜センサーが存在し、それが主要な役割を担っていることを示唆している。さらに、今回、細胞膜センサーを介してmTORC1を活性化するアミノ酸誘導体を見出した。このアミノ酸誘導体は、細胞内センサーには認識されず、細胞膜センサーの特異的アゴニストとなる。この特異的アゴニストの発見により、細胞膜センサーの存在にさらに確証が与えられた。この特異的アゴニストを見出した利点を活かして、特異的アゴニストによるアミノ酸シグナルの活性化を評価するモニター細胞の作製を進めている。そのモニター細胞を用いて、細胞膜センサーの分子実体と、そのシグナル情報伝達機構の解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」に記載の細胞膜センサーの特異的アゴニストによるアミノ酸シグナルの活性化を評価するモニター細胞を活用し、以下の検討を継続する。まず、「細胞膜ロイシンセンサーを介するシグナル機構の解明」においては、細胞膜センサーの特異的アゴニストによる細胞内のリン酸化変動の網羅的解析を継続し、細胞膜センサーの刺激によって惹起されるシグナル経路を明らかにする。さらに、機能性タンパク質のリン酸化変動から、起こり得る細胞機能の変化を推察し、実験的に検証する。「細胞膜ロイシンセンサーの実体解明」においては、細胞膜ロイシンセンサーは、細胞膜上での存在量が少ないことが想定されるため、生化学的手法での同定は困難が予想され、分子の機能に依拠した機能発現クローニングによる分子同定を実施する。そのために、検出感度を向上させるため、上記のモニター細胞を用いて、ポジティブスクリーニングが可能なモニター系を構築する。そのモニター系により、細胞膜ロイシンセンサーが発現しているヒト培養細胞株から作製したcDNAライブラリーをスクリーニングし、細胞膜ロイシンセンサーの同定を完了させる。同定に続き、同定された細胞膜センサーの機能解析を実施する。細胞膜センサーの遺伝子ノックダウン・ノックアウトによる発現抑制実験や、遺伝子導入による過剰発現実験などを用いて、得られた分子が求める細胞膜センサーであることを確認すると同時にその機能的意義を明らかにする。
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