研究課題/領域番号 |
22K19419
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分49:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
森川 一也 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90361328)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 黄色ブドウ球菌 / Agr系 / バイオフィルム / 病原性 |
研究開始時の研究の概要 |
黄色ブドウ球菌は、分泌毒素群を生産する「侵襲感染モード」とバイオフィルム等によりヒトの免疫を回避する「慢性感染モード」を巧みに使い分けて体内で長期間生き残り、異所性感染、再発を繰り返す。申請者らは、これら両モードを同時に抑制する作用を熱帯植物抽出液に見出している。本研究では、「抗病原性薬」のプロトタイプを作成し、これに対する細菌の短期の応答と長期の特性変化の有無を明らかにすることを目的とする。本研究は「複数の病原性を抑制する新しい治療薬の提案」という目標のもとで行う基礎研究である。
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研究実績の概要 |
黄色ブドウ球菌は、分泌毒素群を生産する「侵襲感染モード」とバイオフィルム等によりヒトの免疫を回避する「慢性感染モード」を巧みに使い分けて体内で長期間生き残り、異所性感染、再発を繰り返す。申請者らは、これら両モードを同時に抑制する作用を熱帯植物抽出液に初めて見出している。本研究では、「抗・全病原性薬」のプロトタイプを作成し、両モードを抑圧した細菌における短期の応答と長期の特性変化の有無を明らかにすることを目的として実験をすすめた。 当該年度は当該抽出物の効果がAgr系を抑制することをまず蛍光タンパク質レポータを用いた系で検証し、効果を確認した。Agr系は病原因子群のマスターレギュレータであり、本活性が一連の分泌毒素の発現を制御している。一方でAgr系は接着因子群の発現を負に制御するものであり、一般にAgr系が抑制されると接着やバイオフィルム形成が強くなる。この点で、当該抽出物がバイオフィルムも抑制出来るという特徴は興味深く本研究の焦点となっている。当該抽出物の抗バイオフィルム活性についてさらに詳細に検討した結果、効果の程度が株により変化することが明らかとなった。 抽出物の精製に向けて、幾つかの異なる溶剤を試し、最適化を行った。また、HPTLCを用いた分離実験に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精製に向けて基礎的な条件検討を行うことができた。また、抽出物の効果の程度が株によって異なることを明らかにすることができた。精製については抽出物の入手に時間を要し若干開始が遅れたが、全体の研究計画に影響するほどの遅延ではない。
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今後の研究の推進方策 |
まず、抽出物の効果が株によって異なることが今年度明らかとなったため、複数の臨床分離株で抽出物の効果を明らかにする必要が生じた。これを優先して進める。 粗精製、細菌側の応答、等は、当初計画どおりすすめていく。その概要は以下の通りである。 【抗全病原性薬のプロトタイプ作成】 抽出物から有効画分をHPTLC、HPLCとすでに構築済みの活性評価アッセイ系を用いて同定する。複数成分の複合効果である可能性も高い。どの画分を混合すれば全病原性抑制効果を示すかを明らかにし、可能な限り夾雑物を除いた「抗全病原性薬」を作成する。有効成分の同定は本研究には含めない。 【細菌側の応答】 RNAseqによって、経時的、濃度依存的な抗全病原性薬の影響を調べ、細菌側のどのシグナル伝達系や代謝が変化するかを明らかにする。また、抗病原性薬が細菌に何らかのストレスを与えるか、突然変異や遺伝子水平伝達など進化を促す作用はないか、等を明らかにする。 【抗病原性薬に対する「脱抑制進化」の検討】 バイオフィルムの連続形成(慢性感染モード)とマクロファージによる貪食耐性(侵襲感染モード)を選択圧として進化実験を行い、病原性が復帰する頻度を明らかにし、またその原因遺伝子を明らかにする。
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