研究課題/領域番号 |
22K19422
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分49:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀 昌平 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (50392113)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 制御性T細胞 / 細胞分化 / 遺伝子発現制御 / エピゲノム / T細胞受容体 |
研究開始時の研究の概要 |
制御性T細胞は、固有のエピゲノムを備えることで炎症などの細胞外環境からの様々な擾乱に対しても免疫抑制機能を安定的に発現し、様々な病的免疫応答を頑健に制御する。本研究では、制御性T細胞固有のエピゲノムがどのようなメカニズムにより形成されるのか、炎症環境下ではエピゲノムがリプログラムされヘルパーT細胞へ分化転換し得るのか、という2つの研究課題の解明に取り組む。近年、制御性T細胞を用いた免疫疾患の細胞療法が注目され世界的に研究が進んでいる。本研究は制御性T細胞療法への応用と制御性T細胞エピゲノムを操作する化合物を探索する創薬研究への発展が期待され、挑戦的研究として意義がある。
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研究実績の概要 |
1.TCRシグナルによるTET依存的TSDR脱メチル化メカニズムの解明 我々はこれまでに、末梢ナイーブCD4 T細胞をTGF-betaとIL-2存在下でTCR刺激することでFoxp3発現を誘導するin vitro分化系を用い、TCRシグナルがmTORC1とDNA脱メチル化酵素TET2/3を介してTreg固有のエピゲノム(Foxp3遺伝子座のTSDR領域のDNA脱メチル化)を誘導することを見いだしている。本年度、TCR-mTORC1経路がTET2/3発現をタンパク質レベルで増加させることでTSDR脱メチル化を促進することを明らかにした。そして、T細胞特異的Raptor欠損マウスを用いて、TET2/3のタンパク質発現とTSDR脱メチル化がRaptor依存的であることを確認した。さらに、Raptor欠損マウスの末梢Foxp3+CD4+ T細胞ではTSDR脱メチル化の程度が低下していることを示し、mTORC1 (Raptor)依存的なTSDR脱メチル化機構が生体内においても働くことが示唆された。 2.Tregエピゲノムレポーターマウスの作製・解析 Foxp3 TSDR脱メチル化依存的にGFPCre融合タンパク質が発現するBACトランスジェニックマウス(Tregエピゲノムレポーターマウス)の作製を進め、ファウンダーマウスを複数得た。しかしながら、末梢血中のTregにおいて、Foxp3 BAC transgeneの転写レポーター(Thy1.1)の発現は検出されたものの、TSDR脱メチル化依存的に発現するGFPの発現は検出されなかった。脱メチル化TSDR依存的にGFPCreの発現をドライブするSnrpnプロモーターがTregでは作動していないと考えられ、このストラテジーでのレポーターマウスの作製は中断し、Tregでも作動する刷り込み遺伝子のプロモーターを探索することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.TCRシグナルによるTET依存的TSDR脱メチル化メカニズムの解明 強く持続的なTCRシグナルがmTORC1経路依存的にTET2/3発現をタンパクレベルで促進することでTSDR脱メチル化を促進することを明らかにし、これまでの結果をまとめて論文投稿を準備しているところである。また、mTORC1がTET2/3発現を蛋白レベルで増強するメカニズムの解析も進めている。以上、この研究課題については当初の計画以上に進展していると判断している。 2.Tregエピゲノムレポーターマウスの作製・解析 Snrpn-GFPCre-polyAカセットをTSDR直下に、Thy1.1-polyAカセットを開始コドン直下に組み込んだBACトランスジェニックマウスを樹立した。そして、Thy1.1発現が検出されたことからBAC transgeneが働いていることは確認できた。しかしながら、GFP発現を検出することができず、当初デザインしたストラテジーではTSDR脱メチル化をレポートするマウスは作製できないことがわかった。明確な結論が得られたという点ではこのプロジェクトを前進させることができたが、当初の目的を果たすことができず、トランスジェニックマウス作製のデザインから検討しなおす必要が出てきた。 以上、本研究は全体としてはおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
1.TCRシグナルによるTET依存的TSDR脱メチル化メカニズムの解明 In vitroにおけるFoxp3誘導系を用いて、TCR-mTORC1経路がTET2/3発現をタンパクレベルで制御する分子メカニズムを明らかにする。これまでの解析から、mTORC1経路はTET2のタンパク分解には影響を与えず翻訳のレベルで制御することを示唆する知見を得ている。次年度、ポリソームプロファイリング等によりTET2/3タンパクの翻訳に与える影響を検討するとともに、翻訳促進メカニズムを明らかにする。そして、in vitro分化系において全ゲノムレベルでのDNAメチル化解析(EM-seq)を行い、強く持続的なTCRシグナルに依存して脱メチル化される領域を同定する。そして、その領域にエンリッチしている転写因子結合モチーフを検索することにより、TSDRを含む脱メチル化領域にTET2/3をリクルートする転写因子を同定し機能解析を進める。また、in vitro系を用いてこれまで明らかにしたTCR-mTORC1-TET2/3依存的TSDR脱メチル化メカニズムが、生体内におけるTreg分化においても働いているか、T細胞特異的Raptor欠損マウスを用いて詳細に検討を進める。 2.Tregエピゲノムレポーターマウスの作製・解析 SnrpnプロモーターがTregでは作動しないことが考えられたため、Tregでも発現する刷り込み遺伝子を探索する。そして、それら遺伝子のプロモーターをクローニングし、レトロウイルスベクターを用いたレポーターアッセイを行ってTregでも作動するプロモーターを同定する。そして、同定したプロモーターを用いて再度エピゲノムレポーターマウスの作製を進める。
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