研究課題/領域番号 |
22K19423
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分49:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 暢 東京大学, 定量生命科学研究所, 協力研究員 (50396917)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
|
キーワード | 肝臓 / 胆管 / 組織リモデリング / 線維化 / 発癌 |
研究開始時の研究の概要 |
肝臓が慢性的な障害をうけると、組織の線維化が引き起こされ、やがて不可逆的な肝硬変の状態へと至り、さらには肝発癌へと病態が進行しますが、そのメカニズムについては未だに明らかになっていません。本研究計画では、我々自身が最近見出した『障害をうけた肝臓に現れる、胆管組織に由来する特殊な細胞』が線維化の不可逆性や将来的な肝発癌をもたらす可能性について検討し、肝疾患の発症メカニズムを理解することを目指します。
|
研究実績の概要 |
慢性的な障害をうけた肝臓では、組織の線維化を起点として肝硬変、肝発癌へと病態が進行する。線維化はしばしば、病因の除去により障害自体が解消されたのちでも残存し、肝機能の回復不全や将来的な発癌をもたらす悪因となると考えられている。しかし、肝線維化の不可逆性がもたらされるメカニズムや、線維化と発癌とを結びつける要因については不明である。我々は最近、マウスモデルでの解析から、肝臓の障害部位へと増生した胆管組織に由来する特殊な細胞(RemBEC)が障害からの回復期に出現し、コラーゲン線維を産生・蓄積することを示唆するデータを得た。本研究課題では、こうした障害後の肝臓に現れる特殊な胆管細胞が線維化の不可逆性に寄与する可能性や、将来的な肝発癌の起源となりうる可能性について、マウスモデルでの細胞系譜解析や細胞除去実験等の解析手法をもちいることで検証し、肝疾患の病態の解明へと貢献することを目的とする。 2023年度には前年度に引き続き、遺伝的手法によりRemBEC特異的に蛍光レポータータンパク質やジフテリア毒素受容体(DTR)遺伝子を発現させるためのRemBEC特異的マーカー遺伝子の探索を行った。これまで得られていた複数の候補遺伝子を中心に詳細な検討を進めたが、期待するような特異性と発現誘導効率をもたらすものは得られていない。別の方策として、組換えAAVベクターによるマウス肝臓への遺伝子導入系をもちいることで、マーカー遺伝子非依存的にRemBECでの遺伝子発現・改変を誘導する系の構築にも取り組んだ。これらと並行して、肝内胆管の増殖や維持に関連するシグナル伝達経路を特異的に阻害する薬剤をもちいることで、RemBECの出現や動態にどのような影響が認められるかを検討した。こうした薬剤の投与によりRemBECの出現頻度が低下し、これに伴い肝線維化の病態が抑制されることを示唆するデータを得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
RemBEC特異的に発現するマーカー遺伝子の同定に関して、期待された特性を有するものの同定にはいたっておらず、当初の想定通りには進捗していない。一方で、薬剤投与にもとづくRemBEC阻害の系をもちいるという別の方策によりRemBECと肝線維化との関連を示唆するデータを得ることに成功しており、今後の研究の進展により、肝疾患の病態におけるRemBECの寄与を明らかにするという当初の目的を達成可能と考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、組換えAAVベクター等をもちいたマウス肝臓への遺伝子導入系をもちいることで、マーカー遺伝子非依存的にRemBECでの遺伝子発現・改変を誘導する系の構築を試みる。また、すでに胆管の増殖や維持に関わるシグナル伝達経路を阻害する薬剤をもちいることでRemBECと肝線維化との関連を示唆するデータを得られていることから、こうした薬剤投与にもとづくRemBEC阻害の系をもちいた解析に重点的に取り組むことで、RemBECの肝線維化や肝発癌への寄与についての検討を進めていく。
|