研究課題/領域番号 |
22K19426
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分49:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
土屋 晃介 金沢大学, がん進展制御研究所, 准教授 (50437216)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | パイロトーシス / ガスダーミン / 細菌プロテアーゼ / 細菌 / プロテアーゼ |
研究開始時の研究の概要 |
パイロトーシスは、ネクローシス様の形態変化を伴うプログラム細胞死の一種であり、炎症誘導や感染防御に関わる。その誘導にはプロテアーゼによるガスダーミン(GSDM) ファミリー分子の成熟化が必須である。本研究は、細菌・真菌由来プロテアーゼがGSDMを成熟化する可能性に直目している。細菌・真菌プロテアーゼによるGSDM依存的なパイロトーシス誘導は、宿主の感染抵抗性や炎症病態に影響を与えることが想定される。そこで本研究では、GSDM分子を成熟化させる細菌/真菌由来プロテアーゼを探索し、それらによって誘導されるパイロトーシスが感染病態に与える影響を明らかにする。
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研究実績の概要 |
パイロトーシスの誘導には細胞質蛋白であるガスダーミン(GSDM) ファミリー分子の成熟化が必須であり、ヒトでは5種類(GSDMA - GSDME)、マウスでは9種類のGSDMが存在している。完全長GSDMは未熟型であり活性を示さないが、特定のプロテアーゼによって切断されることで成熟化する。現在までにGSDMを成熟化させる宿主プロテアーゼが数種類同定されている。一方、細菌/真菌由来プロテアーゼがGSDMを切断してパイロトーシスを正または負に制御する可能性も考えられる。しかし、これまでにそのような報告例は少ない。本研究では、GSDM分子を成熟化・不活化する細菌/真菌由来プロテアーゼを探索する。さらに、そのようなパイロトーシスの制御が感染病態に与える影響を明らかにする。今年度、前年までに培養細胞でのパイロトーシス誘導活性を指標にしたスクリーニングにおいてヒトGSDMDを活性化することが判明していた緑膿菌由来プロテアーゼであるAprAとMucDについて、リコンビナント蛋白を用いて詳細な解析を行なった。その結果、AprAはヒトGSDMDを直接切断せず、MucDはヒトGSDMDのN末端側ドメインを切断することがわかった。ヒトGSDMDがN末端側ドメイン内で切断されると活性化されずむしろ不活化されてしまうため、AprAとMucDのパイロトーシス誘導活性は直接的なヒトGSDMDの活性化ではなく他の分子が関わる非直接的な機序によるものだと考えられた。いずれにしても、MucDによるヒトGSDMDの不活化およびAprAとMucDによる非直接的なパイロトーシス誘導は興味深い新規知見となる。一方、スクリーニングによりヒトGSDMDを切断する新たな細菌プロテアーゼを発見した。エロモナス属細菌のセリンプロテアーゼ(ASP)がヒトGSDMDを活性化させる位置で切断することを示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年までにヒトGSDMDを活性化することが判明していた緑膿菌由来プロテアーゼのAprAとMucDについて詳細な解析を行い、その機序について概ねの理解が得られた。さらに、同時に進めていたスクリーニングにより新たなGSDMD切断細菌プロテアーゼを発見できた。これらの理由から、本研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
エロモナス属細菌のセリンプロテアーゼ(ASP)がヒトGSDMDを活性化させてパイロトーシスを誘導する可能性をさらに詳細に検討する。エロモナスのASP欠損株を用いて、宿主マクロファージにおいてASP依存的な細胞死の亢進およびGSDMD切断が起こるか調べる。また、GSDMD欠損マクロファージにエロモナスを感染させることで、細胞死がASP依存的なパイロトーシスであるか確認する。さらに、基質となるGSDMファミリー蛋白を簡易に調製できる方法を開発する。我々は、無細胞の転写・翻訳系を用いてリコンビナント蛋白を作製する方法を確立している。これをGSDMファミリー蛋白の調製にも応用する。これにより、夾雑物が少なくより解析に適したGSDMファミリー蛋白を作製できると期待される。また、各蛋白のN末端とC末端にタグを付加し、WBやELISAに利用することでさらに解析効率を上げる。
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