研究課題/領域番号 |
22K19435
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分49:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
垣内 力 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (60420238)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 亜鉛 / リボソーム / リボソームタンパク質 / 進化実験 / 病原性細菌出現 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、様々な感染環境を再現したカイコ感染モデルを用いて、多種類の病原性細菌を実験的に進化させ、病原性細菌進化の分子基盤を解明することである。地球上には 、動物に感染する病原性細菌が多数存在するが、その病原性機能の進化的成り立ちは未だほとんど明らかにされていない。代表者は現在までに独自に確立した細菌の病原性評価系であるカイコ感染モデルを用いて、細菌の病原性因子を同定することに成功してきた。本研究では、同評価系を用いて、遺伝子変異の蓄積により、様々な種類の細菌の病原性が上昇する過程を捉え、病原性細菌の進化を引き起こす遺伝子変異群と細菌分子群の同定を目指す。
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研究実績の概要 |
地球上には、動物に感染する病原性細菌が多数存在するが、その病原性機能の進化的成り立ちは未だほとんど明らかにされていない。本研究では、遺伝子変異の蓄積により、様々な種類の細菌の病原性が上昇する過程を捉え、病原性細菌の進化を引き起こす遺伝子変異群と細菌分子群の同定を目指す。 本年度は、環境中のストレスに対して耐性化を引き起こす遺伝子変異の中から、病原性上昇を導く遺伝子変異を同定する目的で、金属ストレスに対する耐性化をもたらす遺伝子変異の探索をおこなった。亜鉛は細菌にとって必要不可欠であると同時に過剰量では毒性を示す。また、免疫細胞は侵入した病原性細菌を高濃度亜鉛に暴露することで、殺菌するシステムを有している。そのため細菌は取り込みや排出を調節して細胞内亜鉛濃度を維持している。大腸菌遺伝子欠損株ライブラリを用いて亜鉛耐性株を探索した結果、リボソームタンパク質RpmJの欠損が大腸菌の亜鉛耐性を導くことを見出した。RpmJの欠損株はタンパク質合成阻害剤に対する感受性を示し、翻訳の忠実度が変化していたことから、RpmJの欠損によりリボソーム機能が変化していると考えられた。過剰亜鉛条件下において、RpmJの欠損株の細胞内亜鉛濃度が低下していたことから、RpmJの欠損は細胞内亜鉛濃度の低下によって亜鉛耐性を導くことが示唆された。さらに、RpmJ以外のリボソーム関連因子が亜鉛耐性に関与するか解析したところ、複数種類のリボソームタンパク質やリボソーム成熟因子の欠損株が亜鉛耐性を示すことが明らかとなった。以上の結果は、リボソームの機能異常が大腸菌の亜鉛耐性化を導くことを示唆している。今後は、亜鉛耐性を示した大腸菌遺伝子欠損株について、病原性機能が上昇しているか検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、大腸菌の遺伝子欠損株ライブラリから亜鉛耐性株を探索し、亜鉛耐性を示す複数の遺伝子欠損株を同定することに成功している。リボソーム関連因子の欠損が亜鉛に対する耐性化を引き起こすことは全く報告されておらず、新たな金属ストレス応答機構であると推定される。複数種の亜鉛耐性を導く遺伝子変異を同定できた状況から、本研究計画がおおむね順調に進展していると判断する。 また本研究では、代表者と2名の分担者が大学院生の研究指導を行いながら、研究を推進している。現在の日本では、博士課程進学者の数が減少し、将来的な学術論文の生産性と技術革新力の低下が見込まれており、大学院生の教育と博士課程進学者の支援が喫緊の課題である。本課題に関連して、複数名の大学院生が本年度に学会発表を行い、そのうち1名が学会発表賞(第96回日本細菌学会総会・優秀発表賞)を受賞した。この状況から、人材育成の観点においてもおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
環境ストレスに対する耐性化と病原性の上昇を引き起こす細菌の遺伝子変異について、同定と機能解析を進める予定である。具体的には以下を予定している。 (1) 病原性機能が上昇した細菌変異株の分離 (2) 様々な環境を模擬したカイコ感染モデルの構築
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