研究課題/領域番号 |
22K19436
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分49:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
本田 知之 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (80402676)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | レトロエレメント / ウイルス / 免疫 / 抵抗性 / ウイルス抵抗性 / ウイルス感染 / レトロトランスポゾン |
研究開始時の研究の概要 |
近年、iPS細胞や幹細胞を用いた細胞治療が次々と開発されている。細胞治療では、治療に有効な細胞を作りそれを患者体内に導入する。しかし、拒絶反応対策で投与される免疫抑制剤の存在下では感染症リスクが存在する。もし、免疫抑制剤の影響を受けないウイルス抵抗性の付与方法を開発できれば、細胞治療の有用性を高めることにつながる。申請者は、RNAウイルス由来の遺伝配列がゲノムDNAに取り込まれ、細胞に近縁ウイルスに対する抵抗性を付与する現象を見出してきた。本研究では、宿主ゲノムへのウイルス配列の安全な取り込みを促す細胞を作出し、ウイルス抵抗性を自己学習できる細胞を樹立する。
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研究実績の概要 |
近年、iPS細胞や幹細胞を用いた細胞治療が次々と開発されている。細胞治療では、治療に有効な細胞(ドナー細胞)を作りそれを患者(レシピエント)体内に導入することで、治療効果を発揮する。その際に、貴重なドナー細胞がレシピエントに拒絶されないよう、免疫抑制剤を併用する。免疫抑制剤存在下では、十分な免疫応答が期待できないため、感染症リスクが存在する。貴重なドナー細胞へのウイルス感染や感染による損害を防ぐためには、ワクチンによる免疫賦活化が有効であるが、免疫抑制剤併用下では十分な効果は期待できない。もし、免疫抑制剤の影響を受けないウイルス抵抗性の付与方法を開発することができれば、細胞治療の有用性を高めることにつながると考えられる。本研究では、ゲノムに取り込んだウイルス配列が持つ抗ウイルス活性に着目し、ウイルス配列のゲノムへの取り込み現象を安全にかつ高確率に発生させる「自己学習型ウイルス抵抗性細胞」の作出の技術基盤を検討した。 本年度の研究においては、この現象を触媒するレトロエレメントLINE-1の活性調整に関して、以下に示す結果を得た。 (1)shRNAライブラリーのスクリーニングより、LINE-1の転移活性を増強する宿主因子を見出した。またそれらの分子が関与する宿主経路を人工的に活性化することで、LINE-1の転移活性を増強できることが明らかとなった。 (2)RNAウイルスを制御するエフェクターとして、ウイルスmRNAを標的とする低分子RNAが有効であることを見出した。 このように本年度は、「自己学習型ウイルス抵抗性細胞」の作出について、予定通りの成果を挙げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題全体の研究計画では、2つの小課題を提案していた。 LINE-1の活性制御によるウイルス抵抗性細胞の樹立とウイルス配列取り込みにより生じる抵抗性配列の特性解析である。その結果、レトロエレメントLINE-1の活性を人工的に増強する手法を見出し、RNAウイルスを制御できうる人工RNAからその特性を見出した。 全体として、当初の計画より若干の変更点はあるが、両者についていくつかの鍵となる予備知見を蓄積することができている。以上により、本研究の目的は概ね予定通りのレベルで達成されたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度見出したLINE-1活性調節に関わる基盤情報をもとに、任意の細胞でLINE-1活性を増強させる方法を確立する。また、LINE-1によるウイルス配列の取り込みを任意の遺伝子座に行えるように、挿入部位を指定する技術の開発をおこなう。一方で、本年度見出した取り込んだウイルス配列から産生される抗ウイルス活性RNAの特性候補について、その特性候補を持つ人工RNAを作成し、抗ウイルス活性の有無をスクリーニングする。これらを通じて、最終的に「自己学習型ウイルス抵抗性細胞」の作出につなげる予定である。
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