研究課題/領域番号 |
22K19442
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分49:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
坪内 泰志 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30442990)
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研究分担者 |
仁木 満美子 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (20438229)
金子 幸弘 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90469958)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 深海・海洋性放線菌 / アシネトバクター属細菌 / 天然物化学 / オミックス解析 / 抗アシネトバクター活性 / 深海性放線菌 / ゲノム解析 / 精製・構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
Acinetobacter感染症に対して理想的な薬剤を発見するために、①深海・海洋性サンプルを微生物分離源とし、開発した微生物細胞剥離装置、および生息環境-微生物群集構造の相関により構築した深海・海洋性放線菌ライブラリーを抗Acinetobacter活性物質探索資源として活性化合物候補を見出すこと、②深海・海洋性放線菌が抗Acinetobacter活性物質を生産する意義を、構造活性相関解析と作用機序解析の連関データの蓄積・比較に より解き明かすこと、③A. baumannii呼吸器感染および血流感染マウスモデルを用いた基礎病理学的解析を実施すること、とする。
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研究実績の概要 |
令和5年度では昨年度に引き続き、薬剤耐性化が危惧されている「ESKAPE」の一種であるAcinetobacter baumanniiを指示菌として、2株の深海・海洋性放線菌Micromonococcus sp.が生産する抗菌活性物質の特性解析に注力した。当該活性物質がペプチド性分子であることが推察されているため、活性物質の精製においては硫酸アンモニウム沈澱濃縮、親水性クロマトグラフィーの一種であるHILIC系Preparative HPLCシステムを用い、単一ピークとなるまで精製を進めた。同精製化合物については、耐熱性試験、有機溶媒安定性試験、限外濾過分子サイズ推定を実施し、その分子特性情報を得た。活性評価にはA. baumannii ATCC19606、弊学附属病院で分離された多剤耐性A. baumannii OCUAc-19, 0CUAc-20、そして当教室で作製したA. baumannii膜構造変異株を用い、精製各段階での活性の追跡、および比活性算出に用いた。引き続く活性分子の構造解析であるが、FT-IRやLC-MS-QTOFを用いた精密質量分析、核磁気共鳴(NMR)による一次元、二次元NMR測定のデータ取得を進めている。 生産菌ゲノム解析では、long read dataにはONT社MinIONシステム、short read dataにはIllumina社NovaSeqを用いてNGSデータを取得し、得られた各データからopen source codeによるバイオインフォマティクス手法でwhole genome配列を構築することに成功している。コードされている16S rRNA遺伝子を指標とした系統解析結果からはいずれも新種株に相当することが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【活性分子特性解析】においては抗A. baumannii活性物質の精製・構造解析を中心に研究を進めている。活性が認められた深海・海洋性放線菌のうち活性強度を基準として順次分析を進めており、令和5年度では2株の深海・海洋性放線菌に対して、活性物質の精製法検討および、生産菌ゲノム解析を行なった。昨年度の研究成果から当該活性物質がペプチド性分子であることが推察されていたため、硫酸アンモニウム濃縮や陰イオン交換樹脂を用いたクロマトグラフィーを主体とするタンパク質精製に準拠した手法を採用し、精製を進めることで、その単一ピーク化に成功した。ている。現在、質量分析装置をはじめとした各種分析装置を用いてその構造推定を進めている段階である。 【微生物学的解析】においては生産菌の特性解析を進め、資化性や形態学的観察を主とする表現型識別による分類およびキノン同定による化学的分類を完了し、種同定に至った。また次世代シーケンサーを用いた生産菌ゲノム配列解析を進めており、解析対象とした2株の深海・海洋性放線菌に対して完全長ゲノム配列の決定に至った。 【基礎医学的解析】においては随時、弊学で樹立した培養細胞を用いた活性評価を行うとともに、A. baumannii呼吸器感染および血流感染マウスモデルの作製を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
【活性物質特性解析】においては、単一精製に至った抗A. baumannii活性物質の特性解析(構造推定や力価決定)および作用機序解析を中心に研究を進める。当該物質がペプチド性であることを鑑み、フィンガープリンティングMSによりその一次配列を同定し、立体構造を形成する結合様式は一次元・二次元NMRやFT-IRを用いて推定する。作用機序解析においては、第一にカウンター分子の同定を試みるために、抗A. baumannii活性物質をリガンド、A. baumannii細胞破砕液をアナライトとする分子間相互作用解析を採用する。表面プラズモン共鳴が観察された場合、剥離させたアナライトをナノフローMSに流すことによってその化学情報を得る。順調に進んだ場合は、まだ手掛けていない深海・海洋性放線菌株に由来する抗A. baumannii活性物質の精製・構造解析にも取り掛かる。 【微生物学的解析】においては、抗A. baumannii活性物質生産菌のトランスクリプトーム解析を行うことで、その遺伝子発現強度の差異で生合成遺伝子群や生合成経路の同定を試みる。その際は、R5年度に同定した生産菌ゲノムデータを鋳型とし、活性物質生産条件(生産時期等)に焦点を絞り、生産菌の培養時期別で抽出したTotal RNAから解析したNGSデータを同配列にマッピングすることで実施する。 【基礎医学的解析】においては、活性評価に用いた4株のA. baumannii株(ATCC19606, OCUAc-19, 0CUAc-20, 膜構造変異株)を基に、抗菌効果の確認が取れた株により呼吸器感染および血流感染マウスモデルの作成を進める。
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