研究課題
挑戦的研究(萌芽)
記憶T細胞は慢性炎症や腫瘍環境では持続的な抗原刺激と何らかの環境因子によって疲弊状態(exhaustion)に陥る。結果的に疲弊化はがんにおける免疫チェックポイント療法の感受性を下げることになる。本研究は、メモリーT細胞の最終分化段階である「疲弊」の分子メカニズムを明らかにするとともに、これを解除ないし分化転換(リプログラミング)する方法を開発するものである。具体的には転写因子NR4aを中心に、腫瘍特異的な疲弊化メモリーT細胞を用いて疲弊化に重要な遺伝子を破壊ないし強制発現して、幹細胞性をもつステムセルメモリーT細胞(Tscm)に転換させる方法を開発する。
記憶T細胞は腫瘍免疫で中心的な役割を担っているが、腫瘍環境の中でT細胞は疲弊化し十分な抗腫瘍効果を発揮できない。我々はT細胞疲弊の中心的な役割を担う転写因子NR4aファミリーを発見した。本研究では遺伝子改変マウスと単一細胞RNAシークエンシング法を活用してNR4aがT細胞メモリー分化にどのような影響を与えるのか、またNR4aを欠損することで疲弊を解除し若いメモリーT細胞へリプログラム可能かを検証した。その結果NR4aの欠損により疲弊が抑制されるばかりでなくT細胞が若いメモリーに転換する可能性を示すことができた。
これまで不明であったT細胞疲弊の分子機構の一端がNR4aを中心に初めて明らかにされた。さらにNR4aを阻害することで疲弊を解除するだけでなく、若いメモリーT細胞に転換できることを示たことは、T細胞分化の基礎研究のみならず、NR4aが抗腫瘍免疫の強力な標的分子になりうることを示せた意義は大きい。
すべて 2024 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 9件) 図書 (2件) 備考 (2件)
Cell Reports
巻: 43 号: 3 ページ: 113898-113898
10.1016/j.celrep.2024.113898
iScience
巻: 27 号: 1 ページ: 108646-108646
10.1016/j.isci.2023.108646
Clinical & Experimental Allergy
巻: 53 号: 11 ページ: 1147-1161
10.1111/cea.14385
巻: 42 号: 8 ページ: 112940-112940
10.1016/j.celrep.2023.112940
巻: 42 号: 4 ページ: 112302-112302
10.1016/j.celrep.2023.112302
Cancers (Basel)
巻: 15 号: 3 ページ: 905-905
10.3390/cancers15030905
The Journal of Immunology
巻: in press 号: 9 ページ: 2122-2130
10.4049/jimmunol.2100808
J Immunol
巻: 209 号: 11 ページ: 2104-2113
10.4049/jimmunol.2200525
Nature
巻: 611 号: 7935 ページ: 358-364
10.1038/s41586-022-05388-4
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2023/8/17/28-144531/
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2021/10/20/28-83203/