研究課題/領域番号 |
22K19444
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分49:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
吉村 昭彦 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (90182815)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 腫瘍免疫 / T細胞 / 免疫記憶 / 疲弊 / 転写因子 / CAR-T |
研究開始時の研究の概要 |
記憶T細胞は慢性炎症や腫瘍環境では持続的な抗原刺激と何らかの環境因子によって疲弊状態(exhaustion)に陥る。結果的に疲弊化はがんにおける免疫チェックポイント療法の感受性を下げることになる。本研究は、メモリーT細胞の最終分化段階である「疲弊」の分子メカニズムを明らかにするとともに、これを解除ないし分化転換(リプログラミング)する方法を開発するものである。具体的には転写因子NR4aを中心に、腫瘍特異的な疲弊化メモリーT細胞を用いて疲弊化に重要な遺伝子を破壊ないし強制発現して、幹細胞性をもつステムセルメモリーT細胞(Tscm)に転換させる方法を開発する。
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研究実績の概要 |
記憶T細胞は慢性炎症や腫瘍環境では持続的な抗原刺激と何らかの環境因子によって疲弊状態(exhaustion)に陥る。結果的に疲弊化はがんにおける免疫チェックポイント療法の感受性を下げることになる。本研究は、メモリーT細胞の最終分化段階である「疲弊」の分子メカニズムを明らかにするとともに、これを解除ないし分化転換(リプログラミング)する方法を開発するものである。具体的には転写因子NR4aを中心に、腫瘍特異的な疲弊化メモリーT細胞を用いて疲弊化に重要な遺伝子を破壊ないし強制発現して、幹細胞性をもつステムセルメモリーT細胞(Tscm)に 転換させる方法を開発する。本年度はCD8特異的NR4a欠損マウスの樹立とヒトNR4a欠損CAR-T細胞の作成方法の確立と抗腫瘍効果の検証、さらにフィーターフリーによる試験管内 Tscm誘導法の確立を行った。特にフィーターフリー Tscmの誘導に関しては、既報にあるOP9由来の主要な分泌タンパク質17種類をそれぞれCAR-T細胞に添加しナイーブ(CCD7+CD45RA+)分画の増加を指標に検索したところCXCL12が最も強くナイーブ分画を誘導することを見出した。また、フィーダー細胞の培養上清中には含まれていないが、Tscm誘導を促進する因子としてIGF-Iを見出した。これらの因子を組み合わせてIL-7+IGF-I+CXCL12+Notch刺激が効率よくTscmを誘導することを見出した。このようにして作成したTscmは特にTCF7, LEF1, EOMES, BCL6, JUNなどのメモリーマーカー遺伝子発現が高く、逆にNR4a2,NR4a3,BATF,IRF4,PRDM1,TOXといった疲弊マーカー遺伝子の発現が低下していた。さらに個体レベルで強い抗腫瘍効果を発揮した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NR4aノックアウトマウスの作成は順調に進んでおり、次年度で解析を完了する予定である。またヒトCAR-T細胞におけるNR4a遺伝子のノックアウト手法も確立し、現在解析を行なっており、次年度で解析を完了する予定である。さらにTscmの作成方法に関して4つのサイトカインのみでTscm誘導に成功したことは画期的で予想以上の進展を言える。
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今後の研究の推進方策 |
NR4aノックアウトマウス、NR4a欠損ヒトCAR-T細胞の解析を進め次年度で完了する予定である。マウスのみならずヒトにおいてもT細胞特異的にNR4aを欠損させることでメモリーT細胞が疲弊化しにくくなり、固形がんに対しても強い抗腫瘍効果が得られることを確認しつつある。しかし、一旦疲弊化したT細胞においてNR4aを欠損させると疲弊前の細胞に「若返る」かは不明である。現在ERT2Creを用いてタモキシフェン誘導性にNR4aを欠損させる系を構築中である。また細かいメモリー細胞種ごとのATAC-seqやChIP-seqを行うことでNR4a欠損がどのような機構で疲弊化の解除に関わるのかを明らかにする。また本研究において我々は一旦活性化されたT細胞であっても、IL-7, IGF-I, CXCL12, Notch刺激条件によってTscm化が可能であることを示した。ナイーブT細胞から直接TSCM細胞を作製する他の報告方法とは異なり、我々のフィーダーフリーシステムは活性化T細胞から作成できることが特徴であり、臨床応用に有利な方法であると考えられる。一方でTscm化の分子機構は不明な点が多い。CXCL12は、造血幹細胞の自己複製に重要な役割を果たすことが示されている。特にCXCL12のどのようなシグナルが重要かは今後明らかにしていきたい。最近c-JUNの過剰発現は、BATF、IRF4などの疲弊化因子を減少させ酸化的リン酸化を亢進させることが報告されている。同様に本方法ではc-JUNの発現量が増加しており、c-JUNが重要な標的遺伝子である可能性を示唆している。このような基礎研究を通じてT細胞疲弊を解除する薬剤の開発につなげたい。
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