研究課題/領域番号 |
22K19448
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分50:腫瘍学およびその関連分野
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 孝司 北海道大学, 薬学研究院, 准教授 (20604458)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | 薬物送達学 / ナノ粒子 / がん治療 / 腫瘍血管内皮 / 腫瘍血管破壊 |
研究開始時の研究の概要 |
我々は腫瘍血管内皮細胞における標的遺伝子の発現制御を可能とするsiRNA搭載脂質ナノ粒子とがん免疫を効果的に誘導可能なアジュバント搭載脂質ナノ粒子を併用することで劇的かつ急速ながん治療効果が得られることを見出した。本研究では、この併用療法のがん治療メカニズムを解明し、従来のがん薬物療法の課題を解決する腫瘍血管内皮細胞を標的とした新機軸のナノがん治療法を確立することを目的とする。本研究で得られる成果は、腫瘍血管内皮細胞の破壊を利用した新しいがん治療の研究領域を開拓し、従来のがん治療の概念を変える潜在性を有している。
|
研究実績の概要 |
我々は腫瘍血管内皮細胞(tumor endothelial cell: TEC)における標的遺伝子の発現制御を可能とするsiRNA搭載脂質ナノ粒子とがん免疫を効果的に誘導可能なアジュバント搭載脂質ナノ粒子を併用することで劇的かつ急速ながん治療効果が得られることを見出した。興味深いことに、このがん治療効果はTECの破壊に起因するものである可能性が示唆されたが、既知のメカニズムでは全く説明することができなかった。そこで本研究では、この併用療法のがん治療メカニズムを解明し、従来のがん薬物療法の課題を解決するTECを標的とした新機軸のナノがん治療法を確立することを目的としている。2023年度は、2022年度に取得したRNAシーケンシングの結果の解析を進め、TEC破壊の候補となる分子メカニズムを見出すことに成功した。また、本併用療法の有効性を評価するために、臨床で使用されている免疫チェックポイント阻害剤や血管新生阻害剤に耐性を示す難治性のマウス腫瘍モデルを用いた検証を行った結果、難治性の腫瘍に対しても併用療法は強力な治療効果を示した。さらに、ヒト膵臓がん細胞株、ヒト大腸がん細胞株、ヒト肺がん細胞株などを移植したヌードマウスモデルに対して、併用療法の有効性を評価した。その結果、ヒト腫瘍モデルにおいても腫瘍血管の破壊と強力な抗腫瘍活性を誘導できることが明らかになった。以上のことから、本併用療法が様々ながんに対して有効性を示す可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、RNAシーケンシング解析を行い候補となる分子メカニズムを見出すことができ、ヒト腫瘍を含めた多様な腫瘍モデルに対する併用療法の有効性を評価し、その効果を実証できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
RNAシーケンシング解析の結果から得られた分子メカニズムがTEC破壊や抗腫瘍活性に関与していることを実証する。必要であれば、腫瘍全体もしくは時間変化に対応したRNAシーケンシングデータを取得する。また、併用療法における免疫システムの関与として、自然免疫応答に焦点を当てた解析を実施する。さらに、TECを標的とした新機軸ナノがん治療法として確立するために、併用療法に用いる核酸と脂質ナノ粒子処方の最適化を進めるとともに、転移がんに対する治療実験を行うことで、本併用療法の有用性を検証する。
|