研究課題/領域番号 |
22K19455
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分50:腫瘍学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
福島 祐二 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (90583146)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | T細胞機能不全 / 非定型TCR / 活性制御 / がん |
研究開始時の研究の概要 |
加齢、ストレス、腫瘍細胞からの刺激等の影響により陥るT細胞の機能不全(T細胞老化・疲弊)はがんの発生あるいは増悪を助長する。機能不全に抵抗できる多クローン性のT細胞集団は、高いがん抑制効果を発揮しうると考えられるが、作出方法は十分には確立されていない。本研究では、T細胞老化研究から見出されたCD153とT細胞抗原受容体(TCR)を主軸とする活性増強機構を応用し、がん抗原との遭遇に応じて非定型のTCR複合体を作り機能不全耐性を示すT細胞集団の作出を試みる。さらに、このT細胞集団を投与するがん治療戦略が有効かどうかを担がんマウスモデルを用いて検証する。
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研究実績の概要 |
T細胞は生体内に発生したがん細胞を排除する働きを持つ。免疫チェックポイント阻害剤の臨床応用に代表される近年のがん免疫研究の発展により、T細胞に生じる機能不全の克服ががんの抑制に極めて重要であることが分かってきたが、その方途は十分には確立されていない。申請者らはこれまで、特定の免疫老化関連分子がT細胞抗原受容体(TCR)に会合し、下流の活性化シグナル伝達を強く増強することで機能不全改善に寄与しうることを見出してきた。そこで本研究は、がん抗原との遭遇に応じて活性増強力のある免疫老化関連分子をTCRに取り込み、機能不全に抵抗性を示すT細胞の作出法を開発する。さらに、本T細胞集団を用いて担がんマウスの抗腫瘍効果を向上させることを検討し、新たながん治療法創出に資する科学的な基盤を確立することを目指す。 本研究においてはこれまで、抗原刺激に反応して、CD3配列と融合させた任意タンパク質の発現量が高まり、TCRに取り込まれる基盤的な系を作出した。この系を導入したT細胞は刺激中にTCRのdown regulationが抑制され、比較的高いTCRの発現レベルを保持した。任意タンパク質の種類あるいは融合様式によってはTCRへの取り込みが困難であったが、タグを利用した連結により改善しうることも示唆された。また本研究で着目している免疫老化関連分子は、老化マウスの非免疫系臓器に増加するCD8+ T細胞において顕著に発現していることも分かり、in vivoでCD8+ T細胞制御に関与している可能性も新たに示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の分子設計上の問題改善のために時間を要したため、in vivoでの検証実験の開始がやや遅れている。そこで、最近報告されたマウスT細胞に対する遺伝子導入効率が高いアデノ随伴ウイルスベクターの実験系を導入し、in vivoでの検証実験に利用することも検討している。
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今後の研究の推進方策 |
作出した基盤的な系と免疫老化関連分子(あるいはその他の活性化ドメイン)を組合せて活性増強効果をさらにブーストし、in vivoで抗腫瘍効果を評価する予定である。in vivoでの評価については、担がんマウスに加え、T細胞活性に依存した自己免疫病態を呈するマウスモデルを使うことも検討し、効果の再現性を確認する。一方、今回作出した基盤的な系は、TCR抑制性の分子と組合わせた場合には活性減衰効果を発揮すると推定され、自己免疫やGVHDの抑制にも寄与しうる。そこで、研究成果の有用性・応用性を高めるため、当初の計画に加え、この減衰系について検討することも考えたい。
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