研究課題/領域番号 |
22K19465
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分50:腫瘍学およびその関連分野
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
野澤 竜介 公益財団法人がん研究会, がん研究所 実験病理部, 研究員 (70868710)
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研究分担者 |
新海 創也 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (60547058)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 転写 / クロマチン構造 / HRAS / がんのイニシエイション / クロマチン / 超解像イメージング解析 / 転写制御のゆらぎ |
研究開始時の研究の概要 |
転写は、プロモーターとエンハンサーが結合と解離を動的に繰り返すことで制御されることがわかってきたが、この「転写制御のゆらぎ」を捉える技術は限られている。本研究では、生細胞内でのプロモーターとエンハンサー領域のクロマチンの集合度やその運動性を、超解像顕微鏡STORMを用いて1分子レベルで観測する技術を開発する。これを用いて、がんのイニシエーションの背景にある転写制御の変化の初期段階を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
がん細胞では、ゲノム全体の転写レベルが変動していることが明らかとなっている。しかしながら、クロマチンの動態を細胞内でとらえる技術が未だ限られているため、がん細胞において転写制御に関わるクロマチンの振る舞いがいかに変化しているのかについては未だよくわかっていない。そこで本研究では、転写制御クロマチンの動態を、超解像顕微鏡STORMを用いて1分子レベルで観測する技術を開発することを目的とした。令和5年度は、以下の2項目を進めた。 1) がん化誘導刺激として恒常活性変異型RASがん遺伝子(HRAS-G12V)を薬剤添加条件的に発現誘導可能な、ヒト正常2倍体細胞を樹立した。HRAS-G12Vの発現を誘導すると、細胞内のp53のタンパク質量が有意に減少したので、この時の細胞の倍加時間を計測したところ、19.1時間から17.2時間へと変化していることが見出された。これらの解析から、HRAS-G12Vの発現によって細胞の増殖性が促進されることを確認できた。 2) HRAS-G12Vの発現によって、ゲノム全体の転写レベルやクロマチン構造の変動を検討するために、Total RNA-seq、および、ATAC-seqを行った。その結果、MAPK関連遺伝子をはじめとした特異的な遺伝子発現の上昇あるいは低下といった変動、およびそれに伴ったクロマチン高次構造の変化を捉えることができた。その上で、定量PCRによって遺伝子発現に変動のあった遺伝子について検証したところ、Total RNA-seqの結果と非常に一致した結果が得られた。また、細胞分裂期において高頻度に染色体分配異常が観察され、間期における転写の変動が分裂期の染色体分配の確度に影響することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト正常2倍体細胞を用いたHRAS-G12Vの発現誘導によって、特定の遺伝子発現の変動とそれに伴うクロマチン構造の変化を確認することができ、計画した実験をほぼ予定通りに実施することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究より、がん化刺激としてのHRAS-G12Vの発現に誘導される、特異的な遺伝子領域の転写やクロマチン構造の変化を、細胞集団を対象にした解析で捉えることができた。今後は、がんのイニシエーションにおける転写制御の変化の理解を目指し、転写制御クロマチンの集合動態に誘導される変化を1細胞内で明らかにしていきたい。
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