研究課題/領域番号 |
22K19485
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分51:ブレインサイエンスおよびその関連分野
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
中村 加枝 関西医科大学, 医学部, 教授 (40454607)
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研究分担者 |
南本 敬史 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 脳機能イメージング研究部, 上席研究員 (50506813)
井上 謙一 京都大学, ヒト行動進化研究センター, 助教 (90455395)
安田 正治 関西医科大学, 医学部, 講師 (90744110)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 背側縫線核 / 扁桃体 / セロトニン / ストレス / 化学遺伝学的操作 / ウイルスベクター / 背測縫線核 |
研究開始時の研究の概要 |
セロトニンがストレス下の情動・行動制御に関与するメカニズムを明らかにする。danger detectorである扁桃体中心核からセロトニン細胞が分布する背側縫線核への投射を化学遺伝学的に経路選択的かつ可逆的に遮断し、情動・行動変化・背側縫線核の神経活動の変化を捉える。2種類のウイルスベクターの画像ガイド注入、二重感染による経路特異的に発現させた人工受容体DREADD(hM4Di)の可視化により遺伝子導入の効率・成功率を高める。低侵襲的かつ高精度な経路選択的操作と、従来の電気生理学的手法との融合により扁桃体→背側縫線核回路がストレスによる行動を変容させるメカニズム解明に挑戦する。
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研究実績の概要 |
本研究はマカクサルの扁桃体中心核→背側縫線核間の信号伝達を経路選択的かつ可逆的に遮断し、情動反応と背側縫線核の神経活動の変化を捉えることを目標としている。セロトニンの機能の中で「ストレス環境下の情動・行動制御」は抗うつ薬の作用機序として重要である。danger detectorである扁桃体から、セロトニン細胞が分布する背側縫線核へ強い解剖学的投射がある。この経路により嫌悪刺激情報がセロトニンを介して環境適応としての認知行動制御を実現している可能性がある。この仮説を検証するため、扁桃体中心核→背側縫線核間の信号伝達を経路選択的かつ可逆的に遮断し、情動反応と背側縫線核の神経活動の変化を捉える。使用頭数が限られたサルの小さい神経核の間の情報伝達を遺伝学的に操作するという技術的な難題を克服すべく、2種類のウイルスベクターを画像ガイド下で注入し、二重感染により経路特異的に発現させた人工受容体DREADD(hM4Di)を生体で可視化することで、遺伝子導入の効率・成功率を高める。作動薬投与による領域間情報伝達の遮断前後で、自律神経反応・行動指標に加え、該当領域操作の非侵襲性を利用し、背側縫線核細胞の電気生理学的性質の変化を解析する。ウイルスベクターはヒト行動進化研究センター井上により作成、ベクター接種は量子科学技術研究開発機構南本により行う計画である。1年目は石井・安田・中村により接種の前に行うサル2頭の行動実験と神経伝達物質作用薬の全身投与の効果の解析を行った。効果により行動課題の調整を行う必要があった。さらに、ベクター接種の過程の許可を大学動物実験委員会にて取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度はマカクサルの行動実験の立ち上げと解析、神経伝達物質制御による変化の概要を把握するため、神経伝達物質の作用薬・拮抗薬の全身投与(筋肉注射)の効果を解析した。 仕事に厳しい締切を設けられると我々は大きなストレスを感じるが、サルも同様に制限時間をストレスと感じることが、我々が開発した制限時間付き連続ボタン選択課題によって明らかになった。さらにこの際のストレスとセロトニンの関係性を調べるためセロトニンの前駆体である5-HTPを全身投与すると、よりせっかちになり選択の効率も低下することがあることが分かった。ただし5-HTP投与は明らかに行動パフォーマンスに変化をもたらすものの、その変化の傾向と効果量については試験ごとに大きなバラつきもあった。これは全身投与という方法による制約とベースラインのセロトニンレベルが日毎に異なるためだと推察される。この点については本研究で開発を目指しているウィルスベクターを用いたDREADDシステムにより解決されると考えている。またセロトニンと協調して働くことが知られるドーパミンの働きについても調べるため、D1RアンタゴニストであるSCH23390とD2RアンタゴニストであるEticloprideの全身投与が行動パフォーマンスに及ぼす影響についても解析した。前者は特に制限時間のプレッシャーが大きい条件で行動開始を遅らせ、一方後者はプレッシャーが小さい条件で行動開始を不必要に早めた。セロトニンとドーパミンは時間ストレス下においも焦らずに・あるいは適切に焦るように行動を制御するために重要であることが新たに分かった。
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今後の研究の推進方策 |
行動解析・薬理実験の結果は行動課題の訓練が完了した個体において繰り返し再現された結果であるが、現在は訓練頭数を2頭に増やしさらに再現性を確認するとともに順次ベクター導入を進めてくところである。現在の実験を通して行動課題を洗練化させた後、ベクター接種へと移行したい。
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