研究課題/領域番号 |
22K19486
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分51:ブレインサイエンスおよびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 (2023) 国立研究開発法人理化学研究所 (2022) |
研究代表者 |
黒田 公美 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (90391945)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 社会行動 / 愛着 / 子育て / Proactive prosociality / 共同子育て / Alloparental care |
研究開始時の研究の概要 |
見返りを期待しない自発的な利他行動(能動的向社会性)は「人間性」の根幹ともいえ、その進化的起源は「共同子育て」と考えられている。本研究では、家族で生活し共同子育てを行う霊長類コモン・マーモセットをモデル動物に用い、能動的向社会性に必要な分子神経基盤の解明に取り組む。具体的には共同子育てに必須の内側視索前野細胞内カルシトニン受容体発現部位cMPOAを細胞レベル・分子レベルの2段階で操作しつつ、能動的向社会性を定量するタスクを行う。これにより、霊長類の利他行動の分子神経基盤の解明の糸口を見出す。
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研究実績の概要 |
当該年度には霊長類マーモセットの向社会行動に関して2報の原著論文を投稿し掲載された。 (1)Calcitonin receptor(Calcr)発現ニューロンが局在する内側視索前野MPOAをGABA-A受容体アゴニストであるMuscimolで阻害すると、年下のきょうだいに対する養育行動(Alloparenting)が激減した。逆に、Calcrの脳内アゴニストAmylinをMPOAに局所投与すると、Alloparentingは増加した。しかし他の家族個体とのかかわりには影響がなかったことから、MPOAのCalcrシグナリングは養育行動に特異的な促進作用を持つことが示唆された。一方、オキシトシン受容体のアンタゴニストを局所投与すると、Alloparentingには変化がなかった一方、他の家族個体との身体的接触が半減した。したがってCalcrとオキシトシン受容体シグナリングはMPOAにおいて相補的な役割を持つことが示された。 (2)マーモセットの子の親や年長のきょうだいに対する「愛着」は人間と同様、選択的であり、かつ各相手個体の寛容性と感受性からなる「子育てスタイル」に応じて愛着行動を適応させることを示した。具体的には、親やきょうだいが子に対し不寛容であるとき、子は不安および回避行動を示し、子のDistress vocalizationに不感受である(なかなか救助しない)場合には子はその相手に対し回避行動を示した。さらに子が家族から離されて養育された場合には、子はこのように柔軟な愛着行動の適応を発達させることができず、誰に対しても回避的で、かつ年齢相応の自立ができないことも明らかとなった。これらの愛着行動の特徴は人間とよく似ており、家族で子育てするマーモセットが人間の親子関係のよいモデルであることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年、本研究の成果を原著論文として2報投稿し採択された。若干当初想定と異なる方向性であるが、現在さらに続報を執筆中であるため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度中に、マーモセット父親の性行動と養育行動に関する続報を1報、子マーモセットと家族との間のVocal communicationに関する論文を1報と、2報を執筆中であり、少なくとも1報は年度内に採択・発表予定である。この論文のAPCのため、残りの予算を使用する予定である。
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