研究課題/領域番号 |
22K19495
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分52:内科学一般およびその関連分野
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
飯島 崇利 東海大学, 医学部, 准教授 (90383702)
|
研究分担者 |
半野 陽子 (飯島 陽子) 東海大学, 医学部, 特定研究員 (50451860)
モハメド ダルウィシュ 東海大学, 医学部, 奨励研究員 (60938934)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
|
キーワード | 自閉スペクトラム症 / 大脳皮質 / 抑制性ニューロンサブタイプ / 細胞移植 / 分化誘導 |
研究開始時の研究の概要 |
大脳皮質抑制性介在ニューロンの形態的、機能的多様性は、脳の高度な機能発現にとって極めて重要である。しかしながら、多様な抑制性ニューロンサブタイプへの分化の仕組みは非常に複雑であり、哺乳類における多様なニューロンサブタイプそれぞれへの分化誘導の確立は今後の大きな課題である。本研究では、第一に神経前駆細胞の単離から特定ニューロンサブタイプへ効率的に分化させる手法を確立すること、第二に、この手法を用いて分化誘導をかけた細胞を、抑制性ニューロンサブタイプの減少を病態とする自閉スペクトラム症 (ASD) モデルの新生仔マウス脳へ移植し、特定ニューロン細胞移植による発達障害の新たな治療戦略の確立を目指す。
|
研究実績の概要 |
我々は、幼若終脳培養神経細胞にASDリスクファクターとして知られるバルプロ酸(VPA) を直接曝露したin vitro ASDモデルを確立し、多角的アプローチによりこのモデルの分子病態について検討を行ってきた (Iijima et al., 2016)。このモデルは実験データの均一性、再現性の点において優れており、他の多くのASD動物モデルで報告されてきた抑制性シナプスの機能低下などの生理学的表現型をin vitroレベルにおいても明確に再現できることを確認してきた。そこで近年、in vitro ASDモデルで有意に変動してくる遺伝子群をエキソンアレイとRNA-seqで網羅的に解析した。その結果、胎生期にVPAもしくは二本鎖RNAウイルス感染を模倣した代表的ASDマウスモデルの成熟脳において VIP陽性CGE由来抑制性ニューロン数が顕著に減少していることを突き止めた。 ASDモデルにおける抑制性機能異常は過去にも多くの報告があるが、特定の抑制性ニューロンのサブタイプの顕著な減少は、ASD研究の報告にない新たな病態である。申請者はこの異常に焦点を当て、CGE由来抑制性ニューロンを補うことで、ASD症状の改善を図ることができないだろうか検討してきた。重要なことに、本年度内因性のCGE由来ニューロンの分化誘導は時期領域特異的なNotchシグナルの操作によって可能であることを上記のASDモデルにおいて見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在このエンリッチしたCGE由来細胞をどのようにin vivoに導入するかをもう少し検討していく必要があり、今後細胞移植を目指すという計画上では、やや遅れをとる懸念も出てきたが、大変重要なことに、移植でなくとも抑制性ニューロンサブタイプをin vivoで分化誘導し、ASDモデルで上記の抑制性ニューロンサブタイプの減少をNotchシグナルの薬理学的操作でレスキューすることが可能であることが判明した。これは今後のASDの新生児医療のシーズ創出につながる可能性があり、現在ASD症状の改善が可能かどうかの検討を新たにスタートさせている。
|
今後の研究の推進方策 |
細胞移植という観点にとらわれず、新たにin vivoでの抑制性ニューロンの増殖分化誘導のアプローチの可能性を検討していくことが実践的なASD治療の確立につながる最善の方策かもしれない。したがって最終年度には移植アプローチに加え、ASDモデルでのVIPニューロン分化障害を薬理学的にレスキューすることによって、社会性行動異常や常同行動などの中核的なASD症状の改善がどれだけ可能なのかを並行して検討していく。
|