研究課題/領域番号 |
22K19508
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分52:内科学一般およびその関連分野
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
石田 靖雅 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (10221756)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | PD-1 / aging / neoantigen / T-cell exhaustion / parabiosis / autoimmunity / 獲得免疫 / 自己と非自己の識別 / 細胞老化 |
研究開始時の研究の概要 |
PD-1 は抗原で刺激された T リンパ球などの細胞表面に発現される分子であり、免疫応答を負に制御する。マウスから PD-1 を除去すると、生後約1年頃から自己免疫病態が出現し始める。しかし、若いマウスに自己免疫病態が出現することはなく、生体では PD-1 がどのような免疫応答を負に制御するのか、明らかではない。申請者は、加齢とともに正常細胞が生み出す変異タンパク質を新しい「自己」として再定義するために、我々動物は進化の過程で PD-1 を獲得した、という仮説を提唱する。本研究の遂行により、我々の免疫系が、老化した正常細胞を「非自己」として誤認識することを回避するための分子機構が明らかになる。
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研究実績の概要 |
(1) 生後 21 月齢の老化 C57BL/6 マウスに、機能阻害型 PD-1 抗体(clone 4H2; Melinda, B.L. et al. Clin. Cancer Res. 15, 1623-1634, 2009. ラットで 作製した抗マウス PD-1 モノクローナル抗体の定常領域を、遺伝子組換えによってマウス IgG1 の Fc + Ckappa部分に置き換えたもの)を投与した。若齢時に定義された「自己」から逸脱し始めた老化細胞に対する免疫応答を PD-1 が抑制しているならば、PD-1 抗体の投与により、老化マウスには何らかの自己免疫病態 が引き起こされる可能性が高いと期待された。それに対し、生後 2~3 月の若齢マウスに同抗体を投与した場合には、自己免疫病態は引き起こされないと考えら れた。実験結果は、予想通りのものであった。 (2) 生後 21 月齢の老化 C57BL/6 マウスと、生後 2~3 月の若齢 PD-1 KO マウスを parabiosis(並体結合)によって連結した。老化マウスがゲノム変異由来 のネオ抗原を多数発現しているならば、若齢マウスに由来する T 細胞が老化マウスの体内でそれらを認識して活性化され、特に PD-1 による抑制が働かない場合には、何らかの免疫異常が引き起こされる可能性が高いと考えられた。それに対し、生後 21 月齢の老化 WT マウスと若齢 WT マウスを parabiosis によって連結した場合には、たとえ老化マウスのネオ抗原を若齢マウスに由来する T 細胞が認識した場合でも、その応答は PD-1 によって抑制されてしまうと考えられ た。実験結果は、予想通りのものであった。 (3) Parabiosis 実験に用いる PD-1 KO マウスの CD45 分子のアロタイプを、交配により、通常の CD45.2 から CD45.1 に変換し、炎症巣に浸潤する(主に)リンパ球が、どちらのマウスに由来するものかを判定できるシステムを樹立した。老化マウスの炎症巣に浸潤するリンパ球は、大部分が PD-1 KO マウスに由来するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 (1) 生後 21 月齢の老化 C57BL/6 マウスに、機能阻害型 PD-1 抗体(clone 4H2)を投与した。若齢時に定義された「自己」から逸脱し始めた老化細胞に対する免疫応答を PD-1 が抑制しているならば、PD-1 抗体の投与により、老化マウスには何らかの自己免疫病態 が引き起こされる可能性が高いと期待された。それに対し、生後 2~3 月の若齢マウスに同抗体を投与した場合には、自己免疫病態は引き起こされないと考えられた。実験結果は、予想通りのものであった。 (2) 生後 21 月齢の老化 C57BL/6 マウスと、生後 2~3 月の若齢 PD-1 KO マウスを parabiosis(並体結合)によって連結した。老化マウスがゲノム変異由来 のネオ抗原を多数発現しているならば、若齢マウスに由来する T 細胞が老化マウスの体内でそれらを認識して活性化され、特に PD-1 による抑制が働かない場合には、何らかの免疫異常が引き起こされる可能性が高いと考えられた。それに対し、生後 21 月齢の老化 WT マウスと若齢 WT マウスを parabiosis によって連結した場合には、たとえ老化マウスのネオ抗原を若齢マウスに由来する T 細胞が認識した場合でも、その応答は PD-1 によって抑制されてしまうと考えられた。実験結果は、予想通りのものであった。 (3) Parabiosis 実験に用いる PD-1 KO マウスの CD45 分子のアロタイプを、交配により、通常の CD45.2 から CD45.1 に変換し、炎症巣に浸潤するリンパ球が、どちらのマウスに由来するものかを判定できるシステムを樹立した。老化マウスの炎症巣に浸潤するリンパ球は、大部分が PD-1 KO マウスに由来するものであった。 これらの研究成果は当初から狙っていたものであるため、研究はおおむね順調に進展していると結論づけることができる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 生後 21 月齢の老化 C57BL/6 マウスに、機能阻害型 PD-1 抗体(clone 4H2)を投与した際、主に肝臓でリンパ球浸潤のフォーカスが多数観察された。今後は、浸潤するリンパ球を免疫組織化学的に解析し、どのようなリンパ球がどのような割合で浸潤しているかを解析する。また、リンパ球以外にも、マクロ ファージなどの浸潤が観察されるかどうかを解析する。 (2) 生後 21 月齢の老化 C57BL/6 マウスと、生後 2~3 月の若齢 PD-1 KO マウスを parabiosis(並体結合)によって連結したところ、老化マウスの主に肝臓 と腎臓で、リンパ球浸潤のフォーカスが多数観察された。今後は、浸潤するリンパ球を免疫組織化学的に解析し、どのようなリンパ球がどのような割合で浸潤しているかを解析する。また、リンパ球以外にも、マクロファージなどの浸潤が観察されるかどうかを解析する。 (3) 当初予定していた臓器移植実験を行う。 (4) 当初予定していたゲノム解析を行い、老化マウスの体細胞に蓄積したゲノム変異の量(頻度)を大まかに解析する。 (5) 若齢マウスに doxorubicin を大量投与することにより細胞老化 cellular senescence を引き起こし、通常の個体老化と比べて、免疫学的な差異を検出できるかどうか解析する(4H2 抗体の投与実験、PD-1 KO マウスを用いた parabiosis 実験)。
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