研究課題/領域番号 |
22K19538
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分54:生体情報内科学およびその関連分野
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
星居 孝之 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (20464042)
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研究分担者 |
金田 篤志 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (10313024)
武藤 朋也 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (90723560)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | エンハンサー / 白血病 / 腫瘍抑制 / エピジェネティクス |
研究開始時の研究の概要 |
ヒストンH3のK4メチル化は細胞の未分化性維持や活発な増殖に重要であるが、7番染色体片アレル欠損白血病ではMLL3の欠損が報告されている。MLL3はエンハンサー領域に豊富なH3K4のモノメチル化(H3K4me1)の修飾酵素として知られており、MLL3の機能解明は近年注目されているエンハンサー異常を介した疾患発症の分子機構を理解する上で極めて重要である。しかしながら、MLL3蛋白は540kDaに及ぶ巨大な蛋白であり、既存の逆遺伝学的手法での解析は非常に困難である。本研究では新規の逆遺伝学的なアプローチにより、MLL3の機能解析を実施する。
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研究実績の概要 |
ヒストンH3のK4メチル化は細胞の未分化性維持や活発な増殖に重要であり、がんでは修飾酵素であるMLLファミリー分子に変異が認められる。MLL1転座は急性骨髄性白血病の予後不良因子であり、7番染色体片アレル欠損白血病ではMLL3の欠損も報告されている。MLL3はエンハンサー領域に豊富なH3K4のモノメチル化(H3K4me1)の修飾酵素であり、MLL3欠損下ではエンハンサー機能異常の誘導が示唆されるが、その分子機構は明らかではない。本研究では公共データベース解析から、MLL1変異を持つ細胞株でMLL3が腫瘍抑制効果を持つ可能性に着目した。CRISPRを用いた機能性ドメインスクリーニング法によりMLL1変異細胞株でMLL3の機能解析を実施した結果より、弱い効果ではあるが腫瘍抑制作用を持つことが確認された。他のH3K4メチル化酵素はいずれも増殖に必須もしくは機能性を示さないことや、MLL3の抑制だけでは効果が微弱なため、MLL3は他の要因と共役して腫瘍抑制に関与しているものと推察された。またCRISPRを用いたスクリーニング対象を拡張することにより、機能的に腫瘍抑制効果を示すヒストンH3K4メチル化関連分子として、脱メチル化酵素KDM5Cの役割が明らかとなった。これまでKDM5Bの白血病における腫瘍抑制効果が予てより報告されており、KDM5Cについてはその機能は不明であったが、近年他の白血病モデルでも腫瘍抑制効果が報告された。H3K4メチル化の異常も観察されているが、未だ詳細やMLL3との関連性は不明である。KDM5CではH3K4me1の異常を伴うことも報告されており、エンハンサーの機能異常の可能性も含め、MLL3と共にさらなる研究が必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は公共データベースを用いた解析による結果を重視して実験計画を立案していたが、実際に細胞株でMLL3遺伝子を破壊するとその腫瘍抑制効果は限定的であることが明らかとなった。限定的な表現型を基盤としてスクリーニングを実施することは極めて困難であることが予想されるため、MLL3遺伝子を破壊した細胞を用いて腫瘍抑制に関わる機能を検証するとした当初の計画を実施・達成出来ていない。一方でCRISPRタイリングスクリーニング法を用いた解析より、MLL3と同様に腫瘍抑制に関わるH3K4メチル化関連酵素としてKDM5Cの働きを見出した。この点では予想を超える結果が得られているが、KDM5C欠損細胞を樹立した段階であり、こちらも未だ十分なエピゲノム解析が実施出来ていない。MLL3の機能を評価する上では他のMLL1変異細胞や、当初よりスクリーニング後に使用予定であった7番染色体欠損細胞株を用いることも検討している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題ではMLL3の持つ腫瘍抑制機能の全貌を解明することが挑戦的課題であることから、他の細胞株の利用やBase editorを使ったスクリーニングを優先して実施する。スクリーニングに用いるsgRNAライブラリーは既に構築済であることから、速やかな実施が可能である。R4年度の計画の中で、スクリーニング結果の検証を目的として、MLL3遺伝子を標的とする10種類のsgRNAをそれぞれ導入し、異なるsgRNA由来の10種類の異なるMLL3変異細胞株を樹立している。効果は限定的であるが、一部では増殖亢進の効果も認められていることから、こちらの細胞を活用してエピゲノム解析を実施する。
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