研究課題/領域番号 |
22K19539
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分54:生体情報内科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北村 俊雄 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 名誉教授 (20282527)
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研究分担者 |
合山 進 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (80431849)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | パラスペックル / ASXL1 / 炎症 / エピジェネティクス / ストレス応答 |
研究開始時の研究の概要 |
パラスペックルは、染色体近傍に存在し転写やスプライシングに関与し、感染/低酸素などのストレス下で数が増加し、ストレス応答や細胞分化につながることが知られているが、機能面の詳細は不明である。申請者らは、エピジェネティクス因子ASXL1がパラスペックル形成に重要な役割を担っていることを見出した。本研究では、ストレス応答におけるASXL1とパラスペックルが果たす役割を調べ、パラスペックル機能の統合的解明を目指す。
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研究実績の概要 |
申請者らは、エピジェネティクス因子ASXL1が核パラスペックル形成に重要な役割を担っていること、造血器腫瘍で認められる遺伝子変異によって生ずるC末欠失ASXL1が存在すると核パラスペックル消失による遺伝子発現変化を介して造血幹細胞機能が低下することを報告した(Yamamoto et al. Cell Rep, 2021)。本研究ではTRAF6、IRAK1やTAK1の過剰発現によって、ASXL1のC末部位が欠失することを明らかにした(論文リバイス中)。この結果は感染などのストレス下でASXL1のC末が限定分解され遺伝子変異によるC末欠失型と同様の形になり、転写プログラムを変更することによって細胞外からのストレスに応答することを示唆している。今後、野生型ASXL1、変異型ASXL1と核パラスペックルとの関係性を解析することによりパラスペックル形成の生物学的意義を明らかにする。 一方、核パラスペックルの機能を調べる目的で新しい方法論の開発も行っている。例えば特異的なRNAに結合する性質を持つCas13を用いて、パラスペックルを可視化したり、発光させたりする実験系を開発した(未発表データ)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
293T細胞でASXL1を過剰発現した細胞の状態が悪くなるとASXL1のC末部分を失った欠失型が出現することに気がついた。さらにTRAF6、IRAK1あるいはTAK1をASXL1と同時に過剰発現するとASXL1のC末欠失型が増加することも見出した。さらにFLAG-ASXL1を発現させた32D細胞をG-CSFで分化誘導するとASXL1欠失型が出現することも判明した。また、マウスから樹立してFLAG-ASXL1を発現させた骨髄由来マクロファージをLPS/IFNγで刺激するとASXL1が完全に分解してC末欠失型も検出できなくなることも判明した。これらの分解はプロテアソーム阻害剤で若干抑制されるが、他の種々の蛋白質分解酵素阻害剤では阻害されなかった。一方、C末にもtag(HA)を付加した実験はC末部位も細胞内に残存していることが判明した。なおTLR4/5/7刺激ではC末欠失型はあまり出現しなかった。 ASXL1の切断部位を同定するため多くの欠失変異体を作成し、切断部位を大体同定した後にアラニンスキャンを行い、切断部位の同定を試みた。その結果、2箇所に切断部位の可能性があることが判明した。しかしながらその近辺に既知の蛋白質分解酵素の認識配列は認められなかった。また分解されにくいASXL1を作成し、その機能を調べたが今のところはっきりとした差は見出せない。 以上の結果を受けて現在ASXL1の分解酵素を同定するために質量分析でASXL1に結合する蛋白質分解酵素の同定を試みたが現時点まで候補分子は捕まっていない。また、ASXL1の切断部位を質量分析で同定しようとしたが、その辺りの情報が少なく同定できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、ASXL1のC末限定切断は、炎症シグナルが強い時、細胞の状態が悪い時、細胞が分化した時などに起こることが判明した。またLPS/IFNγなど強い炎症シグナル下ではASXL1は限定分解ではなく、完全に分解されることも判明した。今後はストレス応答におけるASXL1の役割を明らかにするため以下の実験を行う。 1.クロスリンカーを使用する質量分析でASXL1に結合する分子を同定し、ASXL1分解酵素の候補遺伝子を探す。2.ASXL1にビオチン化活性を有する分子を融合し、Turbo-IDで近傍に来る分子を同定する。パラスペックル関連分子にも注目する。3.分解抵抗性ASXL1の機能変化を詳細に調べる。4.ASXL1遺伝子のN末とC末にtagをノックインしたマウスを作成して、in vivoにおいて内因性のASXL1のN末部分(C末欠失型)と切れたC末側の断片の局在や機能を調べる。5.分化した32D細胞のlysateを精製ASXL1と附置することによって切断活性を認めているが、切断活性を有する分子の精製を試みる。
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