研究課題/領域番号 |
22K19544
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分54:生体情報内科学およびその関連分野
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
宮本 敏浩 金沢大学, 医学系, 教授 (70343324)
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研究分担者 |
菊繁 吉謙 九州大学, 大学病院, 講師 (40619706)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 急性前骨髄球性白血病 / 白血病幹細胞 / PML-RARA |
研究開始時の研究の概要 |
未だ白血病幹細胞の存在が否定的なAPLにおいて、我々が同定した白血病幹細胞機能分子TIM-3を指標として幹細胞集団を細分画することで、APL幹細胞の存在を実証する。さらにAPL特異的PML-RARA遺伝子は染色体転座切断部位により2つに大別されshort typeとlong typeにおいて異なる白血化機構を解明し、より有効な標的治療を開発する。
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研究実績の概要 |
申請者らは癌幹細胞を標的とした治療モデルを白血病において確立すべく、世界に先駆けて白血病幹細胞の特異的表面抗原TIM-3を同定し、その機能として白血病幹細胞の自己複製を制御する機能分子であることを見出した。これまで急性前骨髄球性白血病(APL)のみ白血病幹細胞の存在が証明されていなかったが、TIM-3で幹細胞を細分画すると、APLの中でもTIM-3+細胞が存在する症例を見出した。APLに特徴的なキメラ遺伝子PML::RARAは、転座切断部位によりshort-typeとlong-typeに大別されるが、short-typeのCD34+CD38-幹細胞はTIM-3陽性でPML::RARA融合遺伝子を発現し、異種移植系においてAPLを再構築した。一方、long-type APLではCD34+CD38-幹細胞はTIM-3陰性かつPML::RARAを認めず、マウス移植系でAPLを再構築しなかった。Short-type APLには、自己複製能を有する白血病幹細胞が存在し、short-typeとlong-typeでは、APLの発症機構が全く異なる可能性があり、PML::RARAタンパクの核内・細胞質分布の違い、協働する分子が異なることなどを想定し、本研究を立案した。2022年度はshort-type 14例とlong-type 12例、合計26症例のAPLの臨床検体から幹細胞分画をソートし、short-typeの CD34+CD38-TIM-3+細胞のみPML::RARA融合遺伝子が発現し、マウスに白血病を再現することを確認した。その結果を基に、short-typeとlong-typeとにおいて、同一融合遺伝子であってもゲノム切断部位の相違により異なる白血化機構の機能的解析を展開している。2023年度もその分子基盤を明らかにするべく研究を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度からのコロナ禍で停滞していた臨床検体収集に関して、2022年度から関連施設の協力を得て増加傾向に転じ、継続的に検体の集積を行なうことができるようになった。その結果、本研究は2022年度には稀少疾患APL26例において、融合遺伝子PML::RARAの転座切断部位によりshort typeとlong typeとに大別し、それぞれのAPL幹細胞分画におけるTIM-3の発現、そしてPML::RARA融合遺伝子の存在を確認し、マウス移植実験でshort-type CD34+CD38-TIM-3+分画の幹細胞活性を確認した。加えて、Array Scan Systemを用いた細胞内PML::RARA融合タンパクの局在を定量化したところ、long-typeではPML::RARA融long-typeではPML::RARA融合タンパクが核内に分布するのに対し、short-typeでは核内へ移行せずに細胞質内に分布することを見出した。PML::RARA蛋白が核内で転写リプレッサーとして細胞分化を抑制する従来のAPL発症機構はshort-typeには該当せず、PML::RARAの白血化機構の役割が異なる可能性を示す。そこで、PML::RARAに会合する分子を同定するためChIPシーケンスを行い、long-typeとshort-typeで結合する分子の違いを検討している。以上の経過から予定している本研究課題については概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) short-typeおよびlong-type APLのTIM-3発現解析および異種移植実験を昨年度に引き続き症例数を増やして実施する。APL幹細胞の存在を証明すると同時に、short-type CD34+CD38-TIM-3+分画とlong-type CD34+CD38-分画の幹細胞活性の相違を明らかにする。抗PML抗体を用いてChIPシーケンスを行い、long-typeとshort-typeでPML::RARAが結合する分子の違いを明らかにして、2つの病型独自の白血化機構を解明する。すなわち、同一融合遺伝子であってもゲノム切断部位の相違により異なる白血化機構を解明し、各亜型に対する特異的治療法を開発する。 (2) 昨年度に引き続き、網羅的遺伝子発現解析により、short-typeとlong-type APLで白血病発症関連遺伝子群の発現パターンが異なるか検討する。 (3) 昨年度に引き続き、long-typeとshort-typeとでの、PML::RARAタンパクの核・細胞質に分布パターンの相違を検討する。Short-typeで、PML::RARAの核内移行が抑制されるのは、PML::RARAが核内で転写リプレッサーとして細胞分化を抑制する白血化機構は該当せず、short typeには自己複製能を有するAPL幹細胞が存在し、long-typeとAPL発症機構が異なることを示す。細胞質に存在するshort PML-RARAが、intact allele由来のPMLの機能をdominant negativeに抑制するか、PML bodyが幹細胞性維持に必須の一連のPML complexの機能に着目して研究を進める。 (4) PML-RARAに併存する遺伝子変異を同定し、2つのsubtypeで協調的・排他的にAPL発症に関与する遺伝子変異に違いがないか検討する。
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